11.娘に名付けて進化させる
母フェンリルから、子供を託された。
そのあと、俺は子フェンリルを連れて、ウォズの街へと戻ってきた。
泊まってるホテルの一室にて。
「ぐぬぬ……」
「どうした、ミュゼ?」
ベッドサイドに座る、俺とミュゼ。
彼女はベッドで仰向けになってる、子フェンリル(人間のような見た目)を見て言う。
「この子……なかなか可愛い見た目をしております……」
「? まあ、愛らしい見た目はしてるな」
改めて子フェンリルを見やる。
年齢は10代前半くらいだろう。
小柄で、しかし長いふわふわとした赤髪をしてる。
頭からは犬の耳、お尻からは尻尾が生えていた。
「幼い見た目……しかし大きな胸……これがロリ巨乳というやつですか……ぐぬぬライバル」
「ふむ? 訳がわからないな」
俺は子フェンリルが目ざめるまでの間、自分のステータスを、改めて眺める。
~~~~~~
ヒラク・マトー(15)
体力 2500/2500
魔力 132/132
SP 6500
【職業】
開 Lv2
神狼騎士
【スキル】
・ステータス操作(SSS)
・アイテムボックス(SSS)
・最上級・鑑定(SSS)
・最上級・氷属性魔法(SSS)
・最上級・剣術(SSS)←new!
・開錠(SSS)
・鷹の目(SSS)
・報恩謝徳(UN)
・攻撃反射(SSS)←new!
・不動要塞(SSS)←new!
・背面攻撃(SSS)←new!
~~~~~~
「随分、ステータスが変わりましたね」
俺はミュゼと情報を共有する。
いざとなったときに、慌てないための措置だ。
それに俺とミュゼとは奴隷契約を結んでいるため、情報が漏洩される心配もないので、共有しても問題ない。
「第二の職業を獲得した影響だろうな」
「なるほど……職業が増えると、新しいスキルをえたり、体力が増えたりするのですね」
元々俺の体力はMAX値が100だった。
しかし現在は2500もある。
「魔力が増えてないですね。神狼騎士が、魔法系の職業スキル……じゃあなくて、職業ではないからでしょうか」
「そうだな。これが例えば賢者を得ていたら魔力が増えてただろう」
体力2500がどれくらいなのかというと、魔法職のミュゼの体力が40。
ミュゼの約60倍もの体力があるってことだ。
「もう凄すぎすぎますね。体力おばけです!」
次にスキルについて。
・最上級・剣術(SSS)←new!
・攻撃反射(SSS)←new!
・不動要塞(SSS)←new!
・背面攻撃(SSS)←new!
新しく増えたのはこの4つだ。
■最上級・剣術
→剣士系職業が使用できる最高レベルの剣術。
■攻撃反射
→物理攻撃、魔法攻撃、あらゆる攻撃を倍にしてはじき返す。
■不動要塞
→その場から動けなくなる代わりに一切のダメージが入らなくなる※例外あり
■背面攻撃
→敵の背後に一瞬で回り込み、攻撃を与えることができる
「ヒラク様……この最上級・剣術の記述ですが……もしかして剣聖並の剣術ってことじゃあないでしょうか?」
「おそらくな」
「! つまり……ヒラク様は、マトー家で要求されるレベルの、剣術を身に付けたってこと……ですよね……」
ふむ?
ミュゼがなにやら、落ち込んでいる?
一体何に……?
いや、待て。俺の家は、剣聖の一家だ。
家を追い出されたのは、剣聖の職業を引けなかったから。
しかし今の俺は、剣聖と同等(※恐らく)の剣術が使える。
だから俺が、マトー家に戻るのではないか。
そう、危惧しているわけだ。
「ヒラク様と、もっと旅していたかったのですが……仕方ないですね」
「ふむ。心配するな。最上級・剣術を手に入れたとて、俺はもうマトー家に戻る気はさらさらないし、あの家に未練など一切無い」
「! ほ、ほんとですかっ?」
「ああ。これからもよろしくな、ミュゼ」
ぱあああ……! とミュゼが笑顔になる。
・SP6500→6550
また報恩謝徳が発動したようだ。
ん? ミュゼを喜ばせて上昇する、SPの量が増えたな。第二の職業の影響か。
「ん……」
「ふむ。起きたか、子フェンリルよ」
随分と長々、更新されたステータスを眺めていたら、子フェンリルが目を覚ました。
「ここは……?」
「ウォズという港町だ。俺がおまえをここに連れてきた。今からおまえが置かれてる状況を説明する」
森の中で母フェンリルに出会ったこと。
母から、子フェンリルと、記憶を託されたこと。
それらを簡潔に説明した。
「俺はおまえを育てる義務が発生した。突然のことで困惑してることだろうが、慣れてくれ」
「は、はいっ! あ、あの……状況は理解しました。母を手助けして下さり、ありがとーございました!」
「ふむ……気にするな。ノブレス・オブリージュだ」
「のぶ……じゅ?」
「高貴なるものの勤めのことだ」
力を持って生まれたものは、持たないもののために力を振るう。それが当然の義務だ。
「なるほど……父上さま、そのお考え、とてもかっこいいですっ!」
「ふむ……? 父上……?」
「あ、あ、その……ごめんなさい! いや……でした?」
「ふむ、構わんぞ。続柄で言えば、俺はおまえの養父ってことになるからな」
「じゃ、じゃあ……! 今日から父上さまのことを、父上さまとお呼びいたしますねっ! ちちうえさま~!」
ぴょんっ、と俺に飛びついてきた。 そして、子犬のように、頬ずりしてくる。
「ぐぬぬ……ずるいです。ヒラク様にあのように甘えるなんて……! 私でもしたことないのに……! これが子供の特権かっ!」
「あの、あなたは誰ですの?」
「私はヒラク様の右腕! No.1奴隷の、ミュゼ・アネモスギーヴ!」
「なるほど! こんにちは、ミュゼ」
「んなっ!? ため口ですって!?」
ふむ……。
まあ子フェンリルと俺は義理の親子である。
ミュゼは俺の奴隷(所有物)なのだから、その子供にも所有する権利がある。
パワーバランス的には、ミュゼよりこの子の方が上になるのか……?
「ぐぬ……ま、まあいいでしょう。よろしくです、ええと……」
そのとき、ミュゼが小首をかしげながら言う。
「ヒラク様。この子の名前はいかがなさりますか?」
「ふむ、名前か。そう言えば決めていなかったな」
少し気になって、俺は子フェンリルに鑑定を行う。
~~~~~~
未記入(0)
【職業/スキル】
フェンリル(成体)(S)
【状態】
人化(未熟)
~~~~~~
名前が無い状態だと、こうなるのか。
ふむ……。
子として育てていく以上、俺が名付けるべきだろうな。
俺は少し考えて、子フェンリルの赤い髪を見やる。
「そうだな……その炎のような赤い髪の毛から、フレイ。おまえはフレイだ」
そのときだった。
『スキル開錠が発動しました』
『名前の変更が行われました(※自動成功)』
開錠を使った……?
いや、使ってないぞ。
ただ、名前をつけただけなのだが……。
『条件を達成しました』
『フェンリル(成体)は、炎神フェンリル(SSS)へと存在進化します』
『条件を達成しました』
『ヒラク・マトーは炎神フェンリルと従魔契約を結びました』
『条件を達成しました』
『ヒラク・マトーは、スキル【従魔召喚】を獲得しました。スキル【リジェネ】を獲得しました。スキル【魔力共有】を獲得しました』
『フレイは、スキル【人化(自由自在)】、スキル【空歩】、スキル【瞬間移動】を獲得しました』
ふむ、一気に色んなことが、起きているようだ。
「フレイよ」
「はい、なんでしょう父上さまっ!」
「おまえはどうやら、またも存在進化し、炎神フェンリルになったそうだ」
「またですかー!? どうやって……?」
「どうやら【開】が、魔物の名前をつける(開錠使用して)ことで、存在を進化させるようだ」
「そ、それってつまり……父上さまだけが、名前をつけることで、配下の魔物に新たなる力を分け与えられるってことですかー? すっごーい! かっこいーですー!」
開錠は、【開】から派生したスキルだ。
つまりフレイが言うとおり、この名前をつけることで強くするシステムは、俺でしか発動できないようだ。
「なんだか力がもりもりわいて参りました! うー……はぁ!」
カッ……! とフレイが光り輝くと、巨大な赤い狼へと変化した。
『もどーれ!』
ぼふんっ、という音とともに、フレイがまた人間の子供の姿へと戻った。
「すごいです、ヒラク様。通常、人化スキルを手に入れたとしても、熟練度を上げないと、自在に獣になったり人間になったりできないと聞きます」
「でも、ふれいは一発でできるようになりました! これも父上さまに、名前をもらったえーきょーかと! ありがとー父上さま~!」
人間姿で抱きついて、子犬のように甘えるフレイ。
ぐぬぬ、とミュゼが悔しそうに見やる。
「ずるい……ずるいです! フレイばかり! 私だってヒラク様に名前をもらいたかった……!」
「そんなにミュゼは進化したいのー?」
「進化とか関係なく! ヒラク様に名前を、この体に刻んで欲しかったのです!」
「ふれい、ミュゼの言ってることムズカシくてわからないなぁ」
きゃあきゃあ、と楽しそうに会話してる二人。
ふむ、仲良くやっていけそうで何よりだ。
こうして俺は、子フェンリルにフレイという名前をつけ、そして彼女をさらに進化させたのだった。




