105.暴食姫《クイーン・スライム》
エイダたちは迷宮化を解除するべく、ダンジョンのボスに挑んでいた。
ボスの部屋に入ると……。
そこは黒い、広い空間がどこまでも広がっていた。
明らかに建物の中とは思えない広さだ。
だがエイダは知ってる。
ダンジョンのボス部屋は異空間になってるのだと。
「気をつけて。一度入ったら、外から助けてもらうか、ボスを倒さないと、この空間からは脱出できないんだ」
気を引き締める、フレイとミュゼ。
そこへ……何かがべしゃり、と天井が落ちてきた。
「スライム……ですか?」
それは人の頭くらいの大きさの、軟質の球形をしていた。たしかに赤黒いスライムに見えなくもない。
だがそれは、ゼリー状をしていない。肉が固まって、球をなしている。そういう風に見えた。
肉塊はどくんどくん、と脈打ちながら、急激に膨張を開始する。
「気をつけて……あれはただのスライムじゃない! 暴食姫だ!」
暴食姫。それは、スライムの最上位種。古竜すら飲み込む力を持ち、さらにあらゆる物を無限に吸収、進化する力がある。
エイダは魔道具を研究してる。その過程で、多くの魔物とふれあってきた。魔物に関する知識も豊富である。ゆえに、知っていた。
「最悪だ……!」
「……どういうことですか? エイダ様?」
「……暴食姫に、弱点は……ない」