10.フェンリル救出、第二の職業とケモミミ娘ゲット
クエストの途中で、手負いのフェンリルが近くにいることが判明。
ほっとけない俺は、フェンリルを助けに向かうのだった。
ミュゼの超聴覚スキルを使い魔物の位置を特定……しようとしたのだが。
「なに? フェンリルの位置が特定できないだと?」
「は、はい。おかしいのです。半径5キロ以内なら、正確な魔物の位置を把握できるのですが……」
ふむ。
スキルの不具合? いや、そう決めつけるのは早計か。
「ならば、他の生き物の悲鳴や怒声は聞こえるか?」
「やってみます……聞こえました! 人間の悲鳴が聞こえます!」
「ふむ。ではそこへ向かおう。ひょっとしたらフェンリルを襲ってる、またはフェンリルに襲われてる人間かもしれん」
先ほどステータスを確認したところ、フェンリルは手負いと書いてあった。
つまり、誰かがフェンリルを襲ってるということだ。
ならば近くに、フェンリル以外の何かがいる可能性が高いと踏んだのだ。
「すごい、名推理ですよ! さすがヒラク様!」
俺はミュゼに案内してもらい、その声がするほうへと向かう。
すると……。
「ひぎいぃい! たあすけてええええええええ!」
「あれは……冒険者ギルドで、愚かにもヒラク様に楯突いた、先輩冒険者では?」
ふむ、受付で俺を馬鹿にした冒険者だな。
彼はほかのメンバーと共に、何かと戦っている……。
「あれが、フェンリルか」
「アオォオオオオオオオオオオオオオン!!!!!」
フェンリル。伝説の獣と言われてる。
体は大きく、3メートルくらいあった。
体全体は青白い炎で包まれており……その目は白く濁っていた。
「……ふむ?」
俺は、実物のフェンリルを目の前にして、違和感を覚えた。
だが、今は考えるのは後だ。
「アオォオオオオオオオオオオオオオン!」
「ひぃ! ま、またあのブレスがくるぞぉお!」
ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
フェンリルの口から吐き出された、青白い炎。
炎は冒険者たちに襲い掛かる。
俺は右手を前に出して魔法を発動させた。
「絶対氷壁」
ガキィイン!
冒険者たちの前に、巨大な氷の壁が出現する。
魔力を100消費する、上級氷魔法だ。
前の俺なら、この魔法を使っただけで、魔力を使い切って気絶してしまったろう。
魔力を伸ばしておいてよかった。
さて、フェンリルの炎は氷の壁に阻まれることになる。
だがどんどんと氷が解けていった。上級魔法で作った防壁を突破しようとするか、さすが伝説の獣。
「今のうちに逃げろ」
「あ、あ、お、おまえ……はずれ野郎……」
先輩冒険者は俺に気づくと、涙と鼻水をたらしながら、俺のほうへとやってくる。
「すまねえ! たすかったぁ!」
「まだ危機は脱してない。何があったのか簡潔に話せ」
彼曰く、モンスター討伐にこの森に入ったところで、フェンリルを発見。
討伐しようとしたところ返り討ちにあった、と。
「おれらが束になっても奴にはかなわなかった。回復ポーションも全部使いきって、万事休すってとこに、あんたらが来たんだ! ありがとう!」
だから、まだ感謝されるには早い。
フェンリルはブレスをやめる。
そして今度は、俺たちめがけてとびかかってきた。
俺は氷の剣を作り、構える。
「アオォオオオン!」
「せやぁ!」
ガキィイイイイイイン!
フェンリルの鋭い爪と、俺の氷の剣とがぶつかり、甲高い音が鳴り響く。
「す、すげえ! あんな素早い引っかき攻撃を、剣で防ぎやがった!」
俺が剣で押し返すと、フェンリルは離れたところへ着地。
……ふむ。
「ど、どうしたのですか? とどめは刺さないのです?」
「ああ。ミュゼ、封魔をあのフェンリルに打ってくれ」
封魔。相手にかけることで、相手の魔法攻撃を封じる魔法だ。
ミュゼがうなずくと、封魔を発動。
フェンリルの周りに魔法陣が浮かび上がる。
これでブレスは封じた。
俺は……氷の魔法を解いて、剣を消し、フェンリルに近づく。
「な!? お、おいあぶねえぞ! 武器を持たずにフェンリルに近づくなんて! 自殺行為だ!」
先輩冒険者が引き留めようとするが、俺は構わず、フェンリルに接近。
両手に何も持ってない俺を見て……。
フェンリルは、警戒を解き、その場にしゃがみ込んだ。
「ど、どういうことなのですか? フェンリルがおとなしくなってます!」
「このフェンリルは、生きる屍だ」
「り、生きる屍?」
「ああ。殺された魔物が、死んでもドロップアイテムにならず、死体がうろつくって事例がある。それが生きる屍。このフェンリルは何らかの原因で、死後、生きる屍となったのだ」
す、と俺はフェンリルのおなかを指さす。
「腹に赤子を、宿した状態でな」
「フェンリルの、赤ちゃんが? 中にいるのですか?」
「ああ。おかしいと思ったのだ。ステータス上では、フェンリルがフィールドにいることになっていた。しかしミュゼは、生きてるフェンリルの存在を感知できなかった」
ならば答えは一つだ。
「ステータスに映っていたのは、フェンリルの赤子。ミュゼがフェンリルを感知できなかったのは、まだ生まれてなかったから。鑑定」
~~~~~
生きる屍・フェンリル(S)
【状態】
・生きる屍の呪い
・妊娠
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母フェンリルを鑑定した結果、やはり妊娠していた。
俺は母フェンリルに問いかける。
「おまえは、腹の中の子を守ろうとしていたのだな」
だから、命を狙ってきた冒険者に、襲い掛かったのだ。
さっき俺と戦った時も、やけに殺気を感じなかった。当然だ、こいつは人殺しがしたいのではなく、子供を狙う悪い輩を追い払いたいだけだったからだ。
「さすがです、ヒラク様。声なき魔物の声を聴き、その真意を理解してあげるだなんて!」
「ふむ……母フェンリルよ。お前を生き返らすことはできん。すでに死んでいるからな。だが、おまえにかかった呪いを解き、成仏させることはできる。そして、その腹の中の子を取り上げることもできる。どうする?」
すると母フェンリルは、俺の前にひざまづいた。
どうやら俺に身をゆだねるようだ。
それはつまり、死を受け入れるということ。
俺に、子をたくすということだ。でなければ、呪いの解除を拒むだろうしな。
「聡明なフェンリルだ」
「どういうことです?」
「生きる屍では、子を産むことはできても、育てることはできん。腐った体では乳は出せぬし、不衛生ゆえ赤子を病気にしてしまうやもしれぬ」
だから、子供を活かすために、自ら死を選んだのだ。
「お前の覚悟は受け取った。あとのことは任せろ」
俺は開錠を使用。
SPを消費し、生きる屍の呪いを解除。さらに、妊娠状態を、出産へと書き換える。
すると母フェンリルの体が輝きだす。
俺の手のなかに光の玉が生まれ、それがどんどんと大きくなっていくと……。
1匹の、赤い毛皮の子供フェンリルが出現した。
無事出産を終えた母フェンリルは満足そうにうなずくと、天へと昇っていった。
『ドロップアイテムを選択してください』
『フェンリルの牙×10(SSS)』
『フェンリルの毛皮×10(SSS)』
『母フェンリルの思い出(?)』
どうやら俺が母フェンリルを討伐した扱いになったようだ。
成仏させただけなんだがな。
「す、すごいです! SSSアイテムがこんなにたくさんドロップするなんて! でも……最後の、母フェンリルの思い出とはなんでしょう?」
「さあな」
俺は母フェンリルの思い出を選択する。
目の前に、小さな青い炎が浮かび上がる。
「え、ええ!? 牙も毛皮も選ばなかったのですか?」
「ああ。これは、この子に必要だと思ってな」
俺は母フェンリルの思い出を、片手で触れて、子供フェンリルの頭の上にそっと乗せる。
すると子供の頭のなかに、思い出が吸い込まれていった。
「これでいい」
「さすが、ヒラク様です! 目さきの利益よりも、母を失った子供のために、アイテムを取らず思い出を残してあげるなんて! なんとお優しいのでしょう!」
当然だ。
俺の持つ力はか弱きもののためにあるんだからな。
『母フェンリルの記憶を、子フェンリルが承継しました』
『条件を満たしました』
『フェンリル(幼体)はフェンリル(成体)へと存在進化します』
すると、かっ! と俺の抱きかかえていた、子フェンリルがさらに輝きだした。
そして光が収まるとそこには……。
「お、女の子!? 人間の……!? なんで!?」
「進化したらしいぞ」
「進化! すごい……伝説の獣を進化させるだなんて! さすがヒラク様です!」
俺の腕の中には、10代の、ちょっと幼い感じの女の子が眠った状態でいる。
赤い髪に、犬耳にしっぽ。一見すると獣人に見えるが、カノジョの持つ美しい体からは、神聖なものさえ感じる。
『条件を満たしました』
『ヒラク・マトーは、第二の職業として【神狼騎士】を獲得しました』
なん……だと……?
第二の、職業?
「これは……」
俺はステータスを開き、職業の欄を確認する。
~~~~~~
【職業】
・開 Lv2
・神狼騎士
~~~~~~
「え、え、えーーーーーーー!? す、すごすぎです! しょ、職業を二つ持ってるひとなんて、前代未聞ですよ!」
「ふむ……そうだな。文献にも、職業を複数持つものは……出てこなかったな」
つまり、だ。
俺は歴史上初、職業を二つ持つ男になった、ということだ。
「すごいすごい! さすがヒラク様です!」
かくして俺は、二つ目の職業をえた、歴史上初の人物となったのだった。
ちなみに、母フェンリルを助けたことで、報恩謝徳が発動し、
・SP 6500
となったのだった。




