01.ハズレを引いて、実家を追放される
短編版(https://ncode.syosetu.com/n8337ii/)を連載用に手直ししたものです。
短編の続きは、4話からとなってます。
「これより【鑑定の儀】を執り行う。呼ばれたものは前に出よ」
王都に存在する教会。
祭壇の前にたつのは、白いひげを蓄えた老神父。
彼の前には俺と同じく、今年で15歳になる子供たちが集められていた。
鑑定の儀に参加するためだ。
鑑定の儀。15歳になると、王国民ならだれもがこの儀式を受け、そして天より【職業スキル】を授かる。
職業スキルとは、誰もが一つは授かる特殊な能力のようなもの。
たとえば、剣士の職業を得ると、その日から剣を自由自在に扱えるようになる。
魔法使いの職業なら訓練せずとも魔法が使用可能となるし、騎士なら体が頑丈になる。
それゆえ、この儀式で授かる職業スキルの結果が、人生に大きな影響を与える。
俺……【ヒラク・マトー】は、剣の名門マトー家に生まれた長男だ。
マトー家は代々、この鑑定の儀で【剣聖】の職業スキルを授かってきた家系である。
「いよいよだな、ヒラク。お前には期待してるぞ」
「はい、父上……」
俺の隣には禿頭の男が立ってる。
【トザース・マトー】。俺の父であり、現マトー家の当主だ。
「なんだ緊張してるのか? なに、問題はない。なにせおまえはわたしの息子! 必ずや剣聖を引き当てるだろう。100%、確実に!」
「……この世に100%確実なものなんて、ありはしませんよ、父上」
父は剣聖のスキルを所有しており、当然、その息子にもそのスキルが発現するものだと、公言しまくってる。
だが、スキルは遺伝されるものではないのだ。
「……ちっ、ヒラクばっかり、期待されやがって……むかつくんだよ」
俺の左隣には、俺よりちょっと背の低い少年が立っている。
彼は、【ジメル・マトー】。
双子の弟だ。ただ、俺のほうが先に産婆に取り上げてもらった関係で、俺のほうが兄、ジメルが弟となった。
「ジメル。父上はおまえにも期待してる」
「うるせえよ、ヒラク! ちょっと先に取り上げられただけで兄貴面すんじゃねえよ! カスが!」
このように弟との仲はあまりよくない。
父が俺に過剰な期待を寄せることで、ジメルの自尊心を傷つけていたからだ。
完全に俺のせいではないが、間接的に、俺という存在がジメルを傷つけていた。
申し訳ない、という気持ちがある。
「次、マトー家の長男。ヒラク・マトー。前へ」
いよいよ俺の番になった。
俺は祭壇の前へと移動する。父は大丈夫とはいうが、この世に確実なんてものは存在しないと思う。
スキルに関する文献を漁ってみたことあるが、職業スキルが遺伝される確率は、確かに高いかもしれないけど、しかし100%ではないのだ。
……もしも剣聖を引けなかったら?
父からの期待は失望へと変わる。
……ダメだったら……いや、もう恐れてても結果は変わらないのだ。
俺は今日まで、勉学や剣の稽古にまじめに打ち込んできた。
きっと天地創造の女神さまは、俺のことを評価して、俺にスキルを与えてくれるはず。
「さぁ、ヒラク・マトー。この水晶に手を乗せるのだ。さすれば、ここにそなたの授かった職業スキルが表示されるだろう」
「はい、わかりました」
結果はもう決まってる。そうわかってても、知るのが怖くて、触れるのに躊躇してしまう。
ええい、ままよ。
俺は水晶玉に触れる。
すると、玉が七色に輝く。
「おおお! なんと美しい光! きっと素晴らしいスキルをさずかったに違いない! さすが我が息子、ヒラク・マトー!」
別に光が七色だからすごいというわけではない。
まあ確かに、同じように鑑定を受けた子供たちのときは、こんな色で水晶玉が輝いてなかったけども。
ほどなくして、光が収まる。
老神父は結果を読み上げる。
「ヒラク・マトー。職業スキルは……ひ、【開】?」
「…………は? 【開】……?」
な、なんだそれは……?
聞いたことがない。俺は家にあった、スキル図鑑を読んだことがある。
【開】なんてスキル、載ってなかったぞ……?
それは老神父も同様らしく、困惑してる様子だ。
「な、なんじゃ【開】とは?」
「おい聞いたことあるか?」「な、ない……」
「まさか、はずれスキルか……?」
どくん! と心臓が体に悪い跳ね方をした。
はずれスキル。スキルにも、発揮する能力によって、優劣というものが存在するのだ。
……【開】。それが、どんな効果なのかは、不明だ。
名前から察するに、何かを開く力なのか?
「ぎゃは! ぎゃははははは! 聞きましたか父上ぇ! ヒラクのやつ、はずれを引きましたよぉおおおお!」
振り返ると、弟のジメルが勝ち誇った笑みを浮かべていた。
……俺が剣聖を引けなかったことがそんなにうれしいのか? いや、うれしいんだろう。
「【開】って! あれですよぉ? ドアとか窓を開くだけのクズ能力に決まってらぁ!」
「剣聖の息子が? 開だけの力を……」「なんとも……それは……」
ジメルは喜び、周りの人たちも俺がはずれをひいたと思ってるらしい。
「ま、待ってください。まだ、ドアや窓を開くだけのスキルとは決まって……」
「うるさい! だまれ!」
「父上……」
父が怒りで顔を真っ赤にしながら、俺の胸ぐらをつかんできた。
「この出来損ないめ! わたしがおまえに期待してやってたのに! その期待を裏切りよって! ゴミ! カス! 死ね! 死ね!」
「す、すみませ……」
そのときだ。
おおお! と歓声が周りから上がる。
なんだ?
祭壇の前には、弟のジメルがいる。
「す、すごいですぞジメル・マトー。あなたの職業は大剣聖! 剣聖の、上位互換スキルでございます!」
ジメルが剣聖のさらに上を行くスキルを引いた。
父はそれがうれしかったのか、満面の笑みを浮かべると、俺を投げ捨てて、弟のほうへとかけよっていく。
「素晴らしいぞジメルぅ! おまえのおかげで家のメンツは保たれた! 本当によくやったぞ!」
「ありがとうございます、父上!」
父がジメルの頭をなでる。
弟は俺を見て嘲る。
「ところで父上ぇ、そこのはずれのクズは、どうしますかぁ?」
ああ、ついに来たかこのときが。
【開】を引いた瞬間、俺は自分の運命を悟っていた。職業が人生を決める世界だ。
はずれの職業を引いた俺に待ってるのは……。
「ヒラク。おまえはもうこの家には不要な人間だ。出ていけ。二度とわたしたちの前に姿を見せるな。このはずれスキル持ちのごみめが!」
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