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僕は茶道部部長に弄ばれる  作者: 夜狩仁志
第一章 春、出逢いと始まりの季節
14/229

第14話 写真とともに

前回のあらすじ 

 春山くん「そういえば、自分の写ってる写真って、残ってたっけ?」

 僕は家に着くと、真っ先に本棚を調べた。

 中学の時の卒業アルバムは、確かこの辺だったと……


 しばらくして、新品同様のずっしりと重さのある卒業アルバムを発掘した。

 小学校と中学校と出てきたが、過去の自分を振り返るも、あまり写真が残っていない。

 集合写真と個人の写真。それくらい。


 自分の人生、なんて薄っぺらいんだ。

 卒業アルバムの方が重くて厚みがある。


 そう考えると何か、さみしい気持ちになった。

 生きた証というか存在していた証明がないというか。

 一生に一度の大切な時期に、何も残ってはいないとは……


 もっと、子どものころの写真はないのだろうか。

 他人にどうやって僕のことを説明すればいいんだ。


 部長に聞かれたらどうする? 

 どんな子どもだったの?

 小さいころ、なにしてたの?

 

 何にも答えられない。

 情けないなー 



 そんな時、スマホが鳴った。

 

 ピロン


 どうやら部長のメールのようだ。



 ピロン


 また来た。



 ピロンピロンピロンピロン……


 どんだけ送るんだよ、部長。


 確認してみると、結構な数の写真が送られてきていた。


『おつかれさま 今日の動画だよ』


 明らかに今日のだけではない量が受信されている。

 それを一つ一つ確認していく。


 これは今日にやつね。動画と写真と。

 あー これは、さっきの帰りの時の写真。


 これは、この前、買い物行った時の? 喫茶店で?


 これはいつのだ?


 あっ、これ濃茶飲んだ時の動画? 

 このアングルだと……遠野先輩が撮っていたのか!

 なんか裏でスマホいじりながら、こそこそしていたかと思えば。


 ……知らないうちに、どんだけ盗撮してたんだよ。


 しかし、まあ……

 これだけ自分中心の写真とか動画があると、まるでその世界だと、僕が主人公のような気がしてくる。

 まあ当然といえば当然だろう。僕のことを撮っているのだから。


 むしろ主人公してるのは部長の方だよな。

 きれいだしで、かわいいし。


 ……正直、僕自身の写真より、部長の写真一枚が欲しいかな。


 あっ、そういえば帰りに撮った写真。部長に送らないと。


『おつかれさまです 今日もありがとうございました』っと。



 ピロン


 ん? また部長から?


 見ると、一つの動画が。

 黄色いクマのぬいぐるみ? が正面に写っている。

 

 この動画はいったい…… このぬいぐるみには、見覚えがない。

 

 とりあえず僕は再生してみる。


『お茶のいただき方です。お客さん役はクマさんです。先ずは他のお客様にご挨拶。お先に』


 これは……

 部長がこのぬいぐるみを動かしているのだろうか、お茶の飲み方を説明してくれている。


『次に亭主にご挨拶。お点前頂戴いたします次にお茶碗をもって……』


 そのぬいぐるみの動作とがあまりにも可愛くて、またそれを部長がやっているかと思うと面白くて、つい顔が緩んでしまう。


 これ、いつ撮ったのだろう? 


 僕はすぐに返信する。

『可愛いお客さんですね。今度、僕のお点前に招待します』


 

 ピロン


『お点前頂戴いたします』

 の文とともに、クマさんのアップの写真が。



 部長……


 僕はベットの上に転がり、送られてきた写真を、また一つずつ見ていく。


 一期一会か……

 

 あの正座して足が痺れた日も、

 濃茶を飲んだ時も、

 子どもの日とかいう変な日も、

 二度と戻ってこない思い出となった貴重な日々。

 

 でも写真となって、いつまでも手元にあり続けてくれる。


 その時その場に、僕が存在していたという事実。


 僕は嬉しくも、むずかゆい感覚になり、

 そのまま布団の中に潜り込んでしまった。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。



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