第7話:転生錬金術師は実技試験を受ける
魔力試験用の部屋を出て、リリミアが待っているギルドの酒場まで戻ってきた。
俺の姿に気がつくと、すぐに駆け寄ってきた。
「あっ、シンヤお疲れ様でした!」
「待っててくれてありがとな」
「あの、それで……どうでしたか?」
「合格だったよ」
「そうですか……! ひとまず良かったです」
どうやら、リリミアは俺が試験を突破できるかどうか心配だったようだ。
目の前でカールを倒す姿を見ていたはずだが……確かに、それと魔力量はあまり関係ないのかもな。
「チッ、受かりやがったか」
エルビオはあまり面白くない知らせだったのか、俺を睨み、舌打ちしていた。
こういうところに人の性格って出るよな。
俺は人の幸せを喜べる人間でありたい。
「それですぐに次の試験なんだが、これはリリミアも見学できるみたいなんだ。もし良かったら、一緒に来てくれないか?」
リリミアとは出会って間もないといえばそうなのだが、異世界で唯一の気軽に話せる関係値。
リリミアが一緒にいてくれれば、試験の緊張も少し和らぎそうな気がする。
「もちろんご一緒しますね! 応援します!」
「助かるよ、ありがとう」
こうして、俺とリリミアは受付嬢に連れられ、冒険者ギルドの施設からは少し離れたギルド所有の試験場に移動したのだった。
◇
ギルド所有の試験場までは、十五分ほどで到着した。
魔物こそいないが、擬似的な狩り場のような雰囲気を受ける。
かなり広い場所に、草木が繁っている。
丘陵のような感じだ。
異世界らしさのへったくれもないが、ゴルフ場のような感じを想像すればわかりやすいかもしれない。
「それでは、試験の説明をしますね」
「頼む」
「向こうに、カカシが立っているのは見えますか?」
「ああ、わかる」
約二十メートル先に、畑に刺さっていそうな感じのカカシが立っているのが見える。
異世界でもカカシは『へのへのもへじ』のようなヘンテコな顔をしているのが気になるのだが、まあこれは触れなくてもいいか。
「このカカシに攻撃を加えることで、攻撃の威力を見るのが今回の実技試験の内容です」
「なるほど」
「攻撃手段は打撃でも魔法でも、なんでも構いません。試しに私が魔法でカカシを攻撃してみますね」
そう言って、受付嬢は二十メートル離れたカカシに手のひらを向けた。
手のひらに青白い魔力球が出現し、発射。
カカシに向けてヒューっと飛んでいき——
プシュン。
失礼ながらかなりお粗末な魔法に見えたが、受付嬢は冒険者ではないので仕方ない。
カカシに衝突するや否や、魔力試験のときに水晶からMP量のウィンドウが出現したのと同様に、今回もウィンドウが出てきた。
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威力:144
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「私の魔法の威力は144ですが、合格点は120点なのでこれはギリギリ合格できる範囲です。あまり強くはありません」
「なるほど、こういう感じなんだな」
受付嬢の説明通り見るからに弱そうだったが、これでもギリギリ冒険者になれるということに驚きを禁じ得ない。
「リリミアはこれ、どのくらいのスコアだったんだ?」
「私は……200くらいだったと思います!」
あれ……? 確かに受付嬢よりは強いのだが、想像していたよりは低いという感じだな。
「リリミアさんの時は鈍器を使われていましたね」
「ですです! 私、一応鍛冶師ですしね」
自作の武器を使っていたということか。
でも、リリミアが武器を持っているところを見たことがない気がするのだが……。
「その武器ってどこかに保管してるのか?」
「あー、シンヤにはまだ説明してませんでしたね」
リリミアは右手を横に伸ばした。
すると手の辺りの空間が歪み、シルバーの鈍器が出てきたのだった。
「これはアイテムスロットといいます。狩り場で回収した素材を収納しておくのに結構便利なんですよ! 重たいので私はいつもここに入れてます」
そういえば、ステータスをみた時にそんなものもあったな。
確か、『アイテムスロットLv.∞』なんて名前だったっけ。
「こんな感じか」
スキルを使ってみると、俺もリリミアと同じように異空間を開けることができた。
とはいえ入れるものも取り出すものもないので、本当にただ試しただけに終わったが。
「そうです! ちょっとコツがいるんですけど、シンヤは本当にセンスがいいですね!」
「そうなのか? ありがとう」
一般的には少しだけ取得が難しいものなのか。
ということは、他のスキルも俺はSPを使うだけで簡単に習得できたが、普通だとこうはならないのかもしれないな。
「リリミア、ちょっとその鈍器を貸してもらってもいいか?」
「え? いいですけど……慣れない武器を使うのはあまりお勧めはできませんが……」
「多分大丈夫だよ。壊さないようには注意するよ」
「いえそんな心配はしていませんが……」
大事な試験なのに、慣れない武器を使うことでスコアが伸びないんじゃないかと心配しているのだろう。
でも、この感じなら大丈夫な気がする。
さっきの魔力試験でもぶっちぎりのスコアだったし、話によれば強いと言われるカールをどうにかできたのだから、多少のハンデがあっても問題なく試験くらいはクリアできるはずだ。
受付嬢のあの攻撃よりは、高い威力を出せそうだしな……。
「そこまで言うなら……どうぞ使ってください」
「ありがとう」
武器の準備もできたので、そろそろ始めるとしようか。
「打撃の場合は近づいても良いのか?」
「ええ、構いませんよ。……というか、近づかずにどうやって攻撃するつもりだったんですか⁉︎」
そりゃあ空気の圧力で斬撃を出すとかそんな感じでやればいいんじゃないだろうか?
まあ、説明するのも少し面倒くさいので、ここはスルーだ。
カカシの前に立ち、俺は鈍器を握る手に力を込める。
「シンヤ、頑張ってくださいー!」
「ありがとう」
リリミアの優しい応援のおかげで、ちゃんと実力を出せそうだ。
この鈍器はほどよく重く、同時に扱いやすい。
良い武器を貸してもらえて良かった。
カカシに向かって、横なぎに振る——
ドガッシャ————ン‼︎
思ったよりもカカシは硬そうな音を出したものの、バラバラになって壊れてしまった。
「え、これって壊れるものなのか?」
俺が呆然としていると……。
「な、なななななな⁉︎」
受付嬢は、さっきの魔力試験と同じようにめちゃくちゃ驚いてアワアワとしているのだった。
同時に、スコアが表示される。
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威力:99999+
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またこれか。




