バッグ・クロージャーによろしく
電車でいつも一緒になる女の子が、すごく可愛い。
僕が通う高校の制服ではなく、近くの女子校のものだろう。
いつもに比べて人は少なく、女の子の真正面に座ることが出来た。
その女の子は、いつも友達らしき人と電話で話していて、その声がとても可愛い。
しかし、今日は聞き慣れないカタカナ系の言葉が何度も出てきていた。
『バッグ・クロージャーが好きなんだよね』
『カッコよすぎだよね。バッグ・クロージャーって』
野球選手か何かかなと思ったが、確定は出来なかった。
『役に立つし、フォルムがいいからずっと眺めていられるんだよね』
彼氏や、好きな人も想像したが、あまりしっくり来なかった。
僕はたった今、決意をした。
バッグ・クロージャーを調べ、バッグ・クロージャーの全てを知り、バッグ・クロージャーを通して、あの女の子と仲良くなろうと。
早速、スマホで『バッグ・クロージャー』を検索すると、食パンの袋を止めるときに使う輪っかのアレが、画像として出てきた。
僕はバッグ・クロージャーと共に、女の子にぶつかっていくと決めた。