覚醒ともうひとつの狂気
とある小さな村に到着した。
その村は、アルコの村という。
「この村も魔物に支配されているんですかね?」
村人は困った様子もなく、せっせと働いている。
商人や鍛冶屋などもあるごく普通の村のようだ。
「おそらくそうだろう。どこかに魔物がいて何か良からぬことでもしているのだろう。」
愛夜之介は辺りを見渡しながら言った。
「あれあれー、お客さんかい?珍しいねぇー。」
そう言った男は村人にしてはかなり変わっていた。
全身黒い服を着て、赤髪でオールバックにしている。
「なんだ、さっき仲間の気配が消えたと思ったらお前らか?めんどくさいことしやがってよ。」
その男は頭を掻きながら近づいてくる。
「仲間、ということは君も魔物なのかい?どう見ても人間のようだけど。」
愛夜之介はいつもの調子で聞いた。
「ああ、一応名前もある。レダヴィーっていうんだ。よろしくな。そんで、あんたらはナニモンだよ。ただの人間には見えないけど。」
「私は勇者。早速で悪いが君達の目的を聞きたい。それと、なぜ人間のような体をしているのか。」
「はぁ?んなことわかんねぇよ。生まれた時からこの姿なんだよ。あぁ、目的なら教えてもいいぜ。この村の最強の戦士を探しに来た。それと・・・」
レダヴィーは腰につけている鞘から2本の短剣を抜くとこちらに向かって構えた。
「それと、あんたらを殺す。部下の仇と魔王様の為だ。」
「・・・そうか、案外魔物はせっかちなのだな。では、こちらの少年がお相手しよう。さあ、ヒロト、君の力を見せてくれ。」
「あ、は、はい。」
僕も頼ってばかりはいられない。
修行の成果みせてやる!
「へー、この子が相手か。人間の目じゃねぇな。ホントになにもんよ。まあいいや、まずは1人目か。」
レダヴィーは驚くほどのスピードで向かってきた。
慌てて腰の刀を抜き、間一髪攻撃を防いだ。
「なんだ、戦いは初めてか?腰が引けてんぜ。」
レダヴィーは片手でも力が強い。
負けじと刀を押し返し、隙をついて斬りかかった。
しかし、僕の刀を片方の刀で受け止め、もう一方の刀を腹に突き刺された。
「そんなんで俺に勝てっかよ。・・・まずは1人目だな。」
くそ、強すぎる。刀が腹を貫いたのが分かった。
あれ、なぜだろう。痛みを感じない。
そういえば、僕の体ってあげちゃったんだっけ?
じゃあ、ある意味不死身ってことか。
だったらコイツに勝てるかもしれない。
いや、勝つんだ、コイツを殺すんだ。
「俺に勝てるか、だって?あぁ、殺してやるよ。」
どういうわけか力が漲ってくるような感覚があった。
そして刀を上から振り下ろした。
レダヴィーは攻撃を防ごうとしたが、刀ごと切り裂いた。
「なんなんだよ、コイツ急に強くなりやがった。殺してやるだと、上等だよ!」
レダヴィーはボロボロの体で向かってくる。
殺す。それが僕の使命。
マモノヲコロス
「悪の花よ、ここに散れ」
向かってくるレダヴィーの胸の中心に刀を突き刺した。
「・・・チッ、クソが。わりぃ、魔王様。わりい、仇取れなかった・・・」
レダヴィーは花びらになって消えていった。
「・・・勝った、のか。本当に、勝ったんだ。」
どうしてだろう、勝ったのに、魔物を倒したのに
こんなに気持ちが晴れないのは。
まるで自分が魔物にでもなったような気分だった。
「なんか、寂しそうな顔してたな。」
「ヒロト、これは戦いだ。勝たなければ殺される。どんなに残酷だとしても君の正義を貫くんだ。」
愛夜之介はいつになく優しく言った。
「それと、もっと自分を知ることだ。そうすれば君はもっと大きな力を手にできるはずだ。最も、君がそれを望めばだけどね。」
「・・・はい、もっと強くなりたいです。強くなってあや様のお力に・・・。」
「そうか、期待しているよ。それではこの村の最強の戦士とやらを探しに行こうか。」




