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魔物と最狂

勇者の豪邸を出て、街を歩いていた。


魔王の住む城はかなり遠いらしい。

この街の外の魔物に襲われている町や村を救いながら向かうという話だ。


それにしてもこの人は本当に勇者なのだろうか。

人々を救おうとする正義感はないし、妖しげな刀を持っているし。

この人に仕えて大丈夫なのか。



「あ、あの、あ、あや様、勇者様のご使命は魔王を倒し、平和を取り戻す事ではないでしょうか?それなのになぜ魔王を倒さなくても良いという考えなのですか?」



「・・・もしかすると君は、勇者である私の中に悪に近いものを感じているのか。」



「い、いえ、そんなことはないですけど・・・。」



「いや、君は正しいよ。どんな正義を振りかざしても争いは悪でしかないのだから。そして私は魔王を倒しこの世を統べようと思う。」



確かにこの人が正義か悪かわからない。

ただ僕はこの人に従うしかない。

そして従いたいのかもしれない。




「街を抜けるぞ。ここからは魔物も出てくる。気を引き締めておけ。」


「は、はい。」


初めて街を出た。

外の世界は建物はなく自然が多い。


少し先に小さな村が見える。

まずはあの村を救うのか、そう思っていた時、

その村の方向から何者かが歩いてきた。


見た目は人型の骸骨で手には刀を持ち、数多くの部下を引き連れていた。

後ろの部下たちは骸骨というよりも、ただの大きな骨の魔物のようだ。

その部隊がこちらに向かってくる。


「貴様ら、何者だ?この村の者か?」

その骸骨男が話しかけてきた。


「いや、私は勇者だ。君達は魔物のようだね。少しばかり先を急いでいるのだが・・・。」



「そうか、貴様あの勇者か。だったらここで殺してやる!行くぞ、我に続け!」

骸骨男と後ろの部隊は一斉に愛夜之介に斬りかかってきた。



愛夜之介は刀を握った。


「・・・その命頂こう。」


一瞬だった。

何が起きたのかは分からない。

刀を抜いたのかすら見えなかった。

ただ、魔物が斬り刻まれていた。


「ク、クソが・・・」

骸骨男と部隊は塵になって消えた。



「・・・さあ、行くぞ。」


愛夜之介は何事も無かったかのように歩き出した。


「あ、はい。」


本当にこの人は格が違う。

僕なんかが召使いとしてやっていけるのか。

考えといい、力といいどこか狂気を感じる。



「私が魔王を倒したら、今度は私が魔王と呼ばれ、新たな勇者が私を殺しに来るのだろうか。」


愛夜之介は眉ひとつ動かさずに言った。



「そ、そんなことないですよ。何であや様が魔王になるんですか。もしそんなことになっても僕が何とかしますよ。」


もし本当にそうなったらどうすればいい。

こんな人を抑えられるわけがない。



「・・・何を言っているのだ。ただの冗談だ。」


全然冗談に聞こえないんですけど。

まあ、そうならないことを願い、村へ向かうのだった。




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