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誓いと代償

幾度となく戦いは繰り返された。

その度に悪は敗れたが、悪の華は散っても再び咲き誇った。

悪の根源である魔王を倒し続けても悪は復活する。

それは魔族だけではなく、人の心、そして正義を誇る勇者でさえ戦いの中に悪を作り出していたからである。

悪は不死鳥の如く生まれ変わり、やがて神の領域に達した。


そして、その魔王は生まれた。

神とも呼べる力をその体に宿して。




魔王が復活した。

そんな噂が街を駆け巡っている頃、僕は旅の支度をしていた。

僕の家は代々、勇者に仕える召使いをやっている。

召使いは戦闘よりも勇者の身の回りの世話がメインだ。

勿論、戦闘訓練もしているのでそれなりには戦える。

幼い頃からの訓練の成果を発揮できる時がついに来たのだ。

平和が続くことに越したことはないが、時代は繰り返す。

その為に沢山の訓練を積んできたのだ。



そして勇者のもとへ向かう。

今の勇者は、歴代最強の勇者らしいが身勝手さも歴代最高らしい。

不安と期待で胸を膨らませながら歩いた。


勇者は街で1番大きな豪邸に住んでいる。

その豪邸の前には大きな門があり、門番が2人立っている。


「召使いのヒロトと申します。勇者様をお迎えに上がりました。」


門番は言葉を発することなく静かに門を開けた。


中へ入ると執事が出迎えた。


「お待ちしておりました。ヒロト様。こちらへどうぞ。」


案内されたのは応接間らしいがそれにしては豪華で広すぎる気がする。

勇者は中央のソファーに座り、紅茶を嗜んでいた。

如何にもエリートという感じだ。


「はじめまして、勇者様。召使いのヒロトと申します。魔王討伐の旅のお手伝いをさせていただきたく参上仕りました。」


すると勇者はこちらに目を向け、ゆっくりと言葉を発した。


「魔王については話は聞いている。しかし、この街は私の力で外部からの如何なる力も受けない。故に魔王を討伐する必要はない。用がそれだけなら帰って良いぞ。」


そう言うと勇者は再び紅茶に手を伸ばした。


「待ってください、勇者様。それでは、外の世界はどうなさるのですか。きっと困っている方々が大勢いるはずです。勇者様のお力で世界に平和を取り戻してください。」


僕は召使いではあるが、勇者に仕えるからには世界を救う使命もあるような気がする。


勇者は紅茶を飲み終え、足を組み顔を上げた。


「そうか。それでは聞くが、魔王を殺すことが平和か?それは君の自己満足に過ぎない。君の言う平和が訪れたとしても人々は新たな支配を求める。今と何も変わることはない。」


「し、しかし魔物達によって苦しんでいる人はたくさんいます。魔王を倒せるのは勇者様しかいないんです。どうか人々を、私達を助けてください。」


「・・・わかった、いいだろう。ただし条件がある。」


そう言うと勇者は雪のように白い日本刀のような刀を持ってきた。


「これは勇者が代々受け継いでいる伝説の刀だ。魔物を封じる力を持っている。これまでの魔物もこれを使って封じてきた。封じると言っても魔力を消し去るだけなのだが。しかし、封じた魔物の力を刀に纏うことができる。それに必要なものは“誓い”と“肉体の一部”だ。君がそれを私に捧げるのならば魔王討伐を引き受けよう。」



全く意味が分からない。確かに勇者様に命を預けてはいるが、こんな形で身を削られるとは思わなかった。

だが、背に腹は代えられない。

世の為、人の為にこの身を捧げよう。


「分かりました。この身を捧げます。」


「・・・そうか。では、誓え。己の身体の一部を捧げ禁断の力を私に与えることを。」


「・・・誓います。私の身体を捧げ勇者様のお力とならんことを。」


すると勇者はその白い刀を鞘から抜き、僕の心臓の位置に突き刺した。

痛みは感じない。

体が焼けるように熱い。


「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


ここで死ぬのかもしれないと思った。


だがすぐに体から熱はなくなった。

体にあったすべての熱が。


そして、さっきまで白かった刀は不気味なほど黒く染まっていた。

その刀を鞘に仕舞い勇者は言った。


「・・・では魔王討伐に出掛けるとしよう。行くぞ、ヒロト。私は勇者愛夜之介(あやのすけ)だ。好きに呼ぶがいい。遅れるなよ。」


「・・・は、はい。」


どこか違和感を感じる体を動かして勇者の後を追う。


「それと・・・」


愛夜之介が口を開く。


「さっきの儀式で君の体の全てを貰ってしまったらしい。まあ、別に大したことではないが。」


いや、大したことなんですけど!

近くにあった姿見を見て言葉を失った。

特に変わったところは無かったが、眼だけが真っ黒になっていた。

これではどちらが魔物なのか分からない。


まあ、勇者がその気になったのなら僕の体くらい安いもんだ。

うん、きっとそうだ。



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