私の大好きなお兄様①
茉莉紗は、自宅のすぐ近くまで来た。
「あ、お兄様のピアノの音色だわ」
心地よい風とともに流暢で軽やかなスタンウェインの音色が流れてくる。
「これはショパンのエチュードの10ね。今度のコンクールでお兄様がお弾きになる曲だわ」
茉莉紗は、鍵を開けて自宅に入る。
茉莉紗が帰ったことが気づいたかピアノの音色が止まった。
「只今、帰りました。啓お兄様は窓を開けてピアノを弾かれておりましたのね」
「ああ、風がとても心地よかったからね」
鷹司啓。
鷹司家の次男で、茉莉紗の兄である。
茉莉紗と同じ高校の2年生である。
やや中性的ではあるが整った顔立ちの美男子である。
クロムハーツの眼鏡の下の瞳は、涼やかで長いまつ毛だ。
少しウェーブ気味の長めの髪はセンターで自然な形に分けている。
啓も学業は優秀で、学年の成績は常にトップ3に入っている。
ピアノはショパンコンクールの本選に進めるほどの腕前。
ピアノの他にもバイオリンやフルートも腕前も高く、ロックやジャズバンドの助っ人に呼ばれることも多い。
最近は、DTMなどを始めるなど多彩な音楽才能をもっている。
その他にも絵画や古典舞踊、茶道、華道、書道などの師範でもある。
芸術以外にも、ITについての知識も豊富で17歳にして最難関のITストラテジストの資格も取得している。
「また、少し失礼させてもらうよ」
「お構いなく」
鷹司啓は再び鍵盤に向かう。
滑らかな指捌き。
非のうちようのない正確なタッチであるが、感情の起伏をその指先に込めたダイナミックな演奏である。
一通りの演奏を終えて茉莉紗のほうへ振り向き優しい笑顔を振り向ける啓。
「茉莉紗。どうだい。僕の演奏は。」
「お兄様、相変わらず、素敵な演奏でした。本番でもそのように弾けるのであればどんなに素晴らしいことかと」
この言葉に啓は一瞬、顔を曇らせた。
「そうだね。それが一番の問題なんだ」
突然、茉莉紗はその美しい瞳に涙を溜める。
「お、お兄様、お可哀そうです。ここではこんな素晴らしい演奏ができるのに。。。」
「茉莉紗、ごめん、お前を悲しませて。」
「いいえ、つらいのはお兄様なのに」
そして茉莉紗は、啓の姿を見つめる。
・・まるで王子様のような気品ある顔立ち
・・彼女が最も大切にしている男性の一人
・・軽やかに、上品に、優雅に鍵盤を奏でるその貴公子は
【裸であった】
正確には裸でない。
鷹司啓は、裸に蝶ネクタイと白手袋という姿でピアノを奏でている。
さよう、鷹司啓は、裸でないとその能力を100%発揮できないのである。
「お兄様、差し出がましいことを申し上げますが、例えば少しづつ服を着てみるとか、まずはシャツとか」
「シャツを着ると腕の動きが制限させるような気がするんだ。鍵盤の演奏にとっては致命的とも言える」
「そうですか。では靴下を穿いてみるのはどうですか?」
「靴下をはくと、なんかペダルが踏みづらい、足にフィットしないんだよ」
「パンツとかどうですか」
「絶対無理!無理無理無理無理無理無理!絶対無理!
だってパンツをとかはくと、なんか蒸れるじゃん!
それに押し付けられた感じすんじゃん。
あとチンポジずれた時の違和感、あの違和感、あれ、男にしかわかんねーし、
あーチンポジずれてるーとか思うと、もうそれでだめ、演奏とかぜってい無理
茉莉紗にはわかんないと思うけど、チンポジずれた時のあれ、あれはないわ」
「お、お兄様!ごめんなさい。ごめんなさい、私、本当に申し訳ないこといいました。忘れてください」
茉莉紗は涙を流して懇願する
「あー、無理無理、茉莉紗がチンポジの話するから、もう僕の頭の中ではチンポジずれたイメージしかないわ
もう、チンポジずれたイメージが離れられないわ。。あーあ、あーあ
僕だって、蝶ネクタイと手袋つけてみて努力しようと思っていたのに、あーあー、茉莉紗のチンポジのせいで」
「お、お兄様!ごめんさない、私も今脱ぎます、全部脱ぎます」
「いや、お前はいいから。お前は別に脱がなくていいから、お前の裸とか見たくねえし」
「おい、啓!、いい加減にしろよ、茉莉紗が泣いているだろう」
「快お兄様!」
そこには啓と茉莉紗の兄である、鷹司快が立っていた。
もちろん、裸である。