第9話 カップル成立
『あーあー、大変お待たせいたしました、それではカップリングに参りたいと思います! まず本日の街コンボウリングで誕生したカップルの数を発表いたします! なんと、オンリーワン! 一組です! 今回はちょっと少なかったですね~~!』
どよめく会場と俺。司会の鈴木さんはハキハキと淀みなく進行して行く。
『えー、そして、めでたくカップルになられました男性参加者は、ドゥルルルル──』
よく聞く効果音を司会の鈴木さんが自前で……
『佐々木晃一さんで~す! 立ち上がってくださ~い! 女性の皆様から圧倒的な支持を得ていましたね! そして! お相手の女性参加者は、ドゥルルルル──』
わかってた……誕生カップルが一組ってところでうすうす俺はわかってた……
『宮本ありささんで~す! もうとおってもお似合いのお二人ですね~! それではお二人とも前にお越しください! は~い、皆様盛大な拍手~~!』
数名のスタッフが笑顔でクラッカーを鳴らし、主にスタッフが笑顔でパチパチと拍手をする。俺もパチ、パチ、と力なく手を叩く。
『さあさあ、こちらへ!』
そう催促する司会の鈴木さんの横に、佐々木さんとありささんは気恥ずかしそうに並んだ。
『カップル成立のお祝いとして、鈴木幸子のポケットマネーより、ラウンドテンで一日遊べるチケットを贈呈いたしま~す! ぜひお二人で遊びに来てくださ~い!』
チケット受け取る佐々木さんとありささん。また会場が拍手に包まれた。
『あーあー、長丁場でしたが、本日は鈴木幸子にお付き合いいただきましてありがとうございました、これを持ちまして街コンボウリングを締め括らせていただきます! 参加者の皆様、大変お疲れさまでした~! お帰りの際は、お渡ししましたバッジ等を受付でお戻しいただきまして、一本ジュースを受け取ってからお帰りくださ~~い!』
終わった、街コンボウリングと俺の恋が──
そう思った瞬間、体の力が全部抜けて行った。
あ、あれ──
数分後──
「──ら」
「起きろ平!」
「はっ!? はい!? ここは!?」
「ここはラウンドテンのボウリング場だぞ、大丈夫か?」
「は、はい!」
ね、寝てたのか俺……? て言うか今どういう状況だ!? えっと、カップリングで佐々木さんとありささんがカップルになって、それで街コンボウリングがお開きになって、帰るところか!
「あの、佐々木さん、帰りはありささんを送って行くんですよね?」
「ついさっきしずかちゃんと帰ったぞ」
「え!? そうなんですか!」
てっきり二人で帰るものだと。
「おう、しずかちゃんと今からお昼ご飯とケーキバイキングに行くらしい」
「あ、そう言うことですか」
「まあ後輩との約束を大事にするところも、ありさちゃんのいいところだよな」
「……」
今の俺にはノロケに返す余力はなかった(無)。佐々木さんは咳払いをして続けた。
「俺たちも帰るぞ」
「はい」
スタッフたちが後片づけを始めている。ボウリング場にいる参加者は佐々木さんと俺くらいだ。
二階に降りようとエスカレーターに向かって歩いていると、司会の鈴木さんが近づいて来た。と思ったらまた俺の背中をバン、と叩いた。
「痛っ……」
「もう~元気出しなさい、平くん! そんなに落ち込むくらいならあきらめちゃダメよ! 幸子、簡単に好きな子をあきらめるのは感心しないわ。源河さんのカップリングカードは白紙だったんだから、あなたまだまだ頑張れるわよ!?」
「は、はい!?」
勢いに圧倒され思わず俺は頷いた。司会の鈴木さんは、佐々木さんの背中もバン、と叩いた。
「佐々木くんは幸せを人に分けてあげるくらいでちょうどいいと思うわ、幸子はね。だから平くんの恋を手伝ってあげるのよ! 先輩なんでしょう!?」
「は、はい、そうです、善処します」
「わかればいいわ。それはそうとして宮本さんとうまくやるのよ! じゃあ気をつけて帰りなさい、帰るまでが街コンボウリングよ!」
佐々木さんと俺が返事をすると、幸子さんは満足そうに持ち場へと戻って行った。何かめちゃめちゃパワフルなひとだったな。
ぱっと幸子さんが残して行った極秘情報が俺の頭に浮かんだ。
しずかさんのカップリングカードは白紙──
ちょっと元気出た。ありがとう、幸子さん。
「帰るか」
「はい!」
佐々木さんと俺は、受付でジュースを受け取ってラウンドテンを後にした。




