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第8話 メインイベント

 二時間半後── 


 コテン、コテン、コテンとそっとピンが倒れた。


「きゃあ~これでもう最後なのに三本しか倒れなかったあ~!」

「お、お疲れさまでした!」


 俺の最終ゲームのペアの女性(伊藤さん)が最終フレームの最後の投球を終え、きゃぴきゃぴして言った。

 これでやっと全部のゲームが終わった……十五分の休憩挟んでもハーフゲームでも八ゲームはマジでしんどかった、おなかへった……

 俺はへろへろと、佐々木さんの隣に座る佐々木さんのペアの女性(佐藤さん)の隣に座った。


「佐々木さんの好きな食べものって何ですかあ?」

「ハンバーグかな」

「かわいい~!」

「え、俺がかわいい?」

「とってもお!」


 佐藤さんに佐々木さんはタジタジだ。街コンボウリング後半になっても女性たちは元気いっぱいですごいなと思ってたけど、佐々木さんのイケメン効果でやる気が出ているだけかもしれないことに今更俺は気づいた…… 


「平君は何が好きなのお?」

「え!? 俺ですか?」


 隣に腰を下ろした伊藤さんに質問されて驚いた。佐々木さんじゃなくて俺でいいんですか。


「うん、佐々木さんじゃなくて平君の好きな食べものが聞きたい」

「は、はい! えっと、俺の好きな食べものはですね……」


 何か照れるな、全然好きな食べものが出てこない。焼き肉──は、しずかさんの好きな食べものか、俺も好きだけども。

 ふと、射抜かれるような視線を感じて顔を向けた。通路を歩いて行くしずかさんと一瞬だけ目があった気がした。何でこんなところにしずかさんが!? ありささんとしずかさんたちは反対側の一レーンにいるはずだけど──あ、そうかトイレに行った帰りか。それにしても、しずかさんだいぶ険しい顔してたな……


「平さん?」

「あ、はい、好きな食べ物は焼き肉です!」

「焼き肉っぽ~い!」

「え!? あ、はは、え、そうですか!」 

「うん、私も大好きなんだ!」


 そんな会話を伊藤さんとしていると、司会の鈴木さんのあーあー、が聞こえて来たので体を向けた。


『あーあー、皆様お楽しみのところ失礼します、全てのゲームが終わりましたので、これより街コンボウリングのメインイベント! カップリングに移りたいと思います! スタッフさんお願いしま~す!』


 司会の鈴木さんの号令で、二名のスタッフが紙とペンを参加者に渡し始めた。 


『えー、早速、カップリングの説明に参りたいと思います! 参加者の皆様は、街コンボウリングを通して、カップルになりたいとお思いになられた参加男性もしくは参加女性を頭に思い浮かべてください、お一人ですよ! ん~はいっ! 思い浮かべましたね~~! その方のお名前とご自身のお名前を、このカップリングカードにご記入いただき、鈴木幸子のところまでお持ちいただきまして、この箱にお入れくださ~~い!』


 カップリングボックスと書かれたカラフルな箱が司会の鈴木さんによって高らかに掲げられた。


『集計が終わり次第、カップリングの結果発表に参りま~す!』


 どうぞ、と声を掛けられて、俺はスタッフから紙とペンを受け取った。佐々木さんと俺は、伊藤さんと佐藤さんと挨拶を済ませて、空いているレーンでカップリングカードを記入することにした。


 一ゲーム目が終わってからが本当に長かったけど、ついにこのときが来た、しずかさんから返事をもらえるときが。しずかさんとボウリングをした一ゲーム目の思い出がスライド写真みたいに思い浮かんでは消えて行く──


「……」


 ──お、おかしい、いい返事をもらえる要素が全く見あたらなかった。カップリングカードにしずかさんの名前を記入したばかりだと言うのに……


「よ~し、出しに行くか~」 


 半分に折ったカップリングカードを持って立ち上がる佐々木さん。そうだ、あのとき聞けなかったことを聞くのは今しかない!


「佐々木さん!」

「何だ?」

「その、一ゲーム目が終わったあと、しずかさんと俺がいい感じだって言ってましたけど、どの辺がですか……?」 

「そうだな……」


 俺は考える佐々木さんをじっと待つ。


「平からボウリングに誘われたときのしずかちゃんが一瞬嬉しそうだったところだな、頭下げてたから見えてなかったか」

「それは本当ですか!?」

「ああ。普通に平とボウリングするしずかちゃんが楽しそうだったってのもある」

「全然わからなかったです!」

「ボウリングに必死すぎたな」


 確かにボウリング(邪念)に必死だった自覚がある。何だか思ってたよりいい返事をもらえそうな気がして来た……! 街コンボウリングでモテモテの佐々木さんが言うなら間違いない。

  

「よし行くぞ」

「俺、佐々木さんについて行きます!」

「現金なやつだな~」

「はい!」


 話しながら、カップリングボックスの前まで来た。


「じゃあ俺から」


 佐々木さんがカップリングカードを投函する前に、ありささんとアイコンタクトしているのを俺は目撃した、カップル誕生を確信した。

 俺も佐々木さんに続けとカップリングカードを投函する前に、ちらっとしずかさんを見た。全く別の方向を向いてたけど大丈夫、佐々木さんから聞いた情報から推測すれば、いい返事をもらえる可能性はまだある……いやどうかあってください、と祈るようにカップリングカードを投函した。 


 無事投函し終わったので、戻ろうとしたとき、司会の鈴木さんが、


「ナイスボウリングッ!」


 バン、と俺の背中を叩いた。不意を突かれてマジでびびった。何だナイスボウリングって……言われたの俺だけだったけども……


 しばらくそのことについて考えていたけど答えは出ず、気づけばカップリングカードを出しに行く参加者はいなくなり、いよいよ集計が始まった。さっきまでガヤガヤしていたボウリング会場が妙に静かになって緊張して来る。佐々木さんも緊張しているように見える。



 あとはもう集計を待つだけ── 


 運命のカップリング結果は──



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