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第5話 レッツ!

『レッツ! 街コンボウリングッ!』


 司会の鈴木さんの掛け声で、すべてのレーンで一斉にボールが投げられた。


 ありささんの投げたボールは思ったより力強く転がってピンの山に向かって行く。ボールがピンにぶつかって、いい音が鳴り響いた。


「惜っし~!」


 あと一本、惜しい! ありささんは悔しがりながら、戻って来て弾むように俺の隣に座った。次は佐々木さんの番だ。


「よし、俺の番か」


 おもむろに十四番のボールを持った。佐々木さんは置いてある布でキュッキュッと拭いてから、きれいなフォームで軽々と十四のボールを投げた。

 緩いカーブを描きながら転がるボールは残ったピンを完璧に捉えて勢いよく弾き飛ばした。


「よっし!」 


 おお、一フレーム目でスペアは順調すぎる立ち上がり! 戻って来て、ありささんと笑顔でハイタッチをする佐々木さん。さすがです! 次はしずかさんの番だ!


「しずかさん、頑張ってください!」


 すかさず俺は声を掛けた。立ち上がってボールを選ぶしずかさん、ありささんと同じ重さのボールを手に取った。けっこう重いボールだけど大丈夫なんだろうか。

 しずかさんはギリギリのところまで歩いて行って、たどたどしくボールを投げた。ゴトンッ……ゴロゴロゴロゴロ……ガタンッ……

 ボールはゆっくりとガーターに吸い込まれた。


「……」


 しょんぼりした様子で戻って来るしずかさんに声を掛ける。


「しずかさん、大丈夫です! 全部俺に任せてください!」


「……はい」

 

 見逃しそうなくらいだったけど、小さく頷いてくれた。こ、これは、今まさにいいところを見せて印象を良くするチャンスが来ているのでは!?


 やる気満々で俺は十三のボールを持ち上げ──て置いた。佐々木さんが十四のボールだったから、俺も十四のボールで投げる。いつもは十三だけど、今日は十四のボールで投げる。おもむろに俺は十四のボールを持ち上げた。軽い、全然軽い! 

 投げる位置に立ち、投球フォームとボールの導線をイメージする。


 よしっ! 勢いをつけてボールを投げ──たら何かコントロール効かなかった──! 

 しずかさんのときとほぼ同じ導線で俺のボールもガーターへと吸い込まれて行った。


「ああー……」


 完全に裏目に出た……ソフトマッチョアピールが……いつも通り十三のボールにしとけばよかった……


「平君ドンマ~イ!」

「力入りすぎてんぞ~!」

「あ、ありがとうざいます……」


 ありささんと佐々木さんに何とか返事をする俺。忘れず一人分空けて、しずかさんの隣に座る。


「……すみません」

「いえ私もガーターなので……次は一本くらい倒したいです」

「の、残ったピンは次こそ俺に任せてください!」


 そうこうしていると、ありささんと佐々木さんペアの二フレーム目が終わっていた。結果はありささんのストライク。今、ありささんと佐々木さんはハイタッチを決めて良い雰囲気。


「今回は俺の出番はなしか~、ありさちゃんやるな~」

「ありがと~! 佐々木さんのフォームってすっごくきれいだよね、ボウリングによく来るの?」


 と、笑顔で楽しそうな二人。



「私の番ですね、行ってきます」

「はい!」  


 しずかさんと俺ペアの二フレーム目だ。しずかさんはすくっと立ち上がり、ボールを持った。

 さっきより思い切って投げたしずかさん。ボールはゆっくり転がって右端のピンを二本倒した。二本だけど振り返って戻って来るしずさんはどこか満足げだった。


「しずかちゃんさっきよりいい感じ~、平君頑張れ~」 

「はい!」


 俺の番が来た。立ち上がって迷わず十三番のボールを持ち上げる。そうそうこれこれ、いつもの重さ。さっきは右のガーターに落ちたから、気持ち左に投げよう。

 俺はしっかりと投球フォームとボールの導線をイメージする。


 よしっ! 勢いをつけて投げ──たら今度はボールが軽すぎて──! ボールは左のガーターへと吸い込まれて行った。


「ああー……!」


 これはひどい……


「平君ドンマイ!」

「平ドンマイ!」

 

 有名な狩りゲーで失敗したときみたいな感じに……

 すごすご戻って、一人分空けてしずかさんの隣に座った。自然と肩が落ちた。


「……」

「……」


 いや黙ってる場合か!?  


「す、すみません、しずかさん! 次はマジで、次は俺マジでピン倒すんでっ!」

 

「……っはい」


 あれ? 今、はいって言う前にちょっと笑ってたような……? 

 ありささんが三フレーム目を投げ終わって、今から佐々木さんが投げるところだ。まだちょっと時間がある、何か話題、話題……!

 

「あの、えーと、ご趣味は何ですか?」

「趣味なんてないです」


 笑っているように見えたのは気のせいでした……


「最近の趣味はお菓子づくりと海外ドラマで~す! ね?」

「あ、ありささん!? 何で言っちゃうんですか!」

「しずかちゃんが楽しそうだったからつい」

「全然楽しくないです!」


「お菓子づくりと海外ドラマ……」

  

 ありささん、貴重な情報をありがとうございます! もう少しでしずかさんの番だから、どんなお菓子作るんですかとか、どんな海外ドラマが好きなんですかとかは後で聞こう。

 今ボウリングどうなってるっけ、と視線を移すと、ちょうど佐々木さんがスペアを取ってガッツポーズを取っているところだった。

 

「よっし!」 


「すご~い」

「さすがです!」  

   

 ありささんに続いて俺も声を掛けた。佐々木さんは戻りつつ、さりげなくありささんとハイタッチ。羨ましいです! 俺もスペア取ってしずかさんとハイタッチをしたいです! 

 はあ、それはそうと、ありささんと佐々木さんチームの点数すごいことなってるな。スペア、ストライク、スペアで何点になるんだ?

  

「しずかちゃんがんば~」  


 ありささんの声援。すでにしずかさんはボールを持って投げる準備万端。振りかぶってゆっくり投げたボールは、ゆっくりゴロゴロゴロと転がって行く。そして、ガラガラとピンが倒れた。倒れたピンの数は六本、思ったより倒れたみたいで、しずかさんはすごく嬉しそうだった。


 俺の番が回って来た。三度目の正直、今度こそピンを倒す! 残ったピンは前の四本。全部倒してスペアなんて欲張ると今日は裏目に出るから、とりあえず一本、一本を倒す! 俺はしっかりと投球フォームとボールの導線をイメージする。


 よし! 制球を意識して投げた──ボールはドン、とレーンに乗って転がって行く。お、これ、いい感じに投げれたんじゃ? ばっちりなとこに行ったんじゃ──?

 

「おおー!」


 来た! スペア来た! 渾身のガッツポーズで振り返る。

   

「平やったな~!」

「おめでと~!」

 

 戻りつつ、佐々木さんとありささんとハイタッチ、この流れで席にひとり座ったしずかさんとも──ダメだ、こっち向いていない──


「!?」


 今しずかさんと目があった、ちらっとこっち見てくれて目があった、一瞬だけども!


「もう~しずかちゃんはほんとツンデレだから」

「全く違います! そうやってからかうのやめてください、ありささんの番ですよ!」

「は~い」


 さっきのはもしかしてデレ、いやツンか……ツンだったら次はデレが来るのか……そんなまさか! 残るハイタッチチャンスはあと四フレームと最終フレーム(五フレーム)の二回か。どうにか、スペアをもう一回取りたい!


 カコーン、とボールとピンがぶつかるいい音がした。


「やった~!」

「ナイス~!」


 ありささん二度目のストライク。その流れで、ありささとハイタッチを積み重ねる佐々木さん。ほんと羨ましいです。そんなことを考えていたら、もう四フレーム目の投球準備に取りかかっているしずかさん。ほんと早いです。


 十本のピンがセットされると、しずかさんはすぐにボールを投げた。ゆっくりとボールはいい感じのところへと向かって転がる。

 ボールがぶつかり、ピンが続々と倒れて行く。


「惜っし~!」


 ありささんの声。倒れたのは九本、残ったのは右端の一本。しずかさん、どんどん調子上げて来てるな。

 俺はおもむろに立ち上がって、ボールを布で拭く。一本、たった一本倒せばいいんだ。ボールを持って投球位置に立つ。たった一本!

  

 よしっ! さっきと同じように制球を意識して投げた──瞬間にわかる! ダメなやつだ……!


 ガタン、とむなしくボールがガーターに落ちる音が響いた。 

 

「くっ……」


 まだだ、まだ終わってない、最終フレームが残ってる。ハイタッチのチャンスはまだある、俺は最後に必ずスペアを取る!



 と、意気込んで最終フレームに臨んだ──


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