第4話 鈴木幸子
数十分後──
受付を済ませた佐々木さんと俺は、続々と参加者が集まって来る中、街コンボウリングが開催されるのを突っ立って待っている。マジで緊張して来る……
受付を済ませた女性は先に三階に上がって待つことになっているみたいで、ありささんもしずかさんも、この階にはもういない。
「まだもう少しあるか」
佐々木さんが腕時計を見て言った。おしゃれな数字が並んだ、いくらなのか俺には全く見当がつかない高級そうな腕時計。確かフランク……フランク何だったっけ。
「何か緊張して来たな~」
「あ、俺もです! 佐々木さんも緊張するんですね」
「まあそりゃあな」
「意外です。あ、佐々木さん、その時計って──」
話しをしていると、
『あーあー、聞こえますでしょうか? あーあー、大丈夫そうですね! えー、街コンボウリングにご参加の男性の皆様、お忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます! 本日、司会を務めさせていただきます鈴木幸子、でございます!』
と、聞こえて来た。
『私事ですが先日、めでたく五十三歳の誕生日を最愛のダーリンと迎えることができました。まだまだ青春まっさかりのアラフィフでごさいます! えー、私事はこのくらいにして本題に入りたいと思います、申し訳ありませんが、開始時刻を予定より前倒しさせていただきます、今から街コンボウリング会場に移動していただきますので、ご参加の男性の皆様は、今すぐエスカレーター前にお集まりくださ~~い!』
エスカレーターの方を見るとマイクを持った司会の女性、鈴木幸子さん(五十三歳)がいつの間にか立っていた。
「行くか!」
「はい!」
気合いを入れる。ここまで来たらやるしかない。
あっと言う間に、参加男性全員がエスカレーター前に集まった。佐々木さんと俺を合わせて全員で十六人。この男たちと今日、しずかさんをかけて戦うことになるのか……ざっと見ただけだけど、ウチの佐々木に敵うひとは誰もいない、そう俺も! は!?
「よし!」
弱気な自分に気合いを入れ直す。もし佐々木さんが恋敵になったとしても俺は頑張る! それに佐々木さんは、しずかさんよりありささんがタイプって言ってたから恋敵になるわけない、大丈夫……大丈夫ですよね?
「……平、急に気合い入れたり、不安げな顔で俺を見つめたり、大丈夫か?」
「は!? すみません、大丈夫です!」
「頼むぞ、相棒」
「はい!」
『あーあー、人数の確認ができましたので、それでは会場に向かいたいと思います、私について来てくださ~い』
司会の鈴木さんの誘導で、俺たちはぞろぞろとエスカレーターに乗り、決戦の地へと向かった。
十分後──
『あーあー、皆様、長らくお待たせいたしました、今より街コンボウリングを開催いたします! それでは男性の皆様、先ほど受付でお渡しいたしましたバッジの番号と同じレーン前に移動して待機してください、まだ女性の皆様に声を掛けちゃダメですよ~!』
ついに街コンボウリングが始まる! ありささんとしずかさんは一レーンにいる、と言うことは……!
「俺たちの最初の相手はさっきの子たちだな」
佐々木さんと俺が受付でもらったバッジの番号は一だった。たぶん受付を済ませた順番だ。
一ゲーム目で、ありさんとしずかさんとボウリングができることになって俄然気合いが入った。
「はい! しずかさんは俺が射止めます!」
テンション上がりすぎてそこそこ大きい声で恥ずかしい心の声をもろ出してしまった……
「おうわかったわかった」
苦笑する佐々木さんと俺は一レーンへ向かった。
『あーあー、男性の皆様の移動が終わったようですね、では! 次の説明に入りたいと思います! まず各レーン内で挨拶と自己紹介、それから男女でペアを組んでいただきまして、どちらのペアが先に投げるかまで決めていただきます。決まり次第着席してください。不明な点がございましたら、近くのスタッフもしくは、鈴木幸子にご質問ください。それでは男性の皆様、いざ! 女性の皆様のもとへ~~!』
司会の鈴木さんが手を高らかに上げた。レーン前でスタンバっていた男性参加者たちが一斉に動き出した。佐々木さんと俺も動く。
「どうも~、一ゲーム目で会うなんて奇遇ですね」
「ほんと奇遇ですね~」
話を切り出した佐々木さんに、ありささんが楽しそうに返す。
「早速、俺たちから自己紹介しますね。俺は佐々木晃一って言います、よろしくお願いします」
自己紹介が始まった。次は俺の番だ。
「俺は平紀頼です!」
「私は宮本ありさです、よろしくお願いしま~す」
「……源河しずかです、よろしくお願いします」
ニッコリ笑顔のありささんと対照的な表情のしずかさん。つい忘れそうになるけど、射止めるとか以前に俺の印象をどうにかしないといけないんだった……!
そんなことを考えていたら、いつの間にか佐々木さんとありささんが背を向けて何か話し合っていた。
くるっとありささんが振り返って言った。
「しずかちゃん、平君、グーとパーで男女のペア決めるよ~」
結果は──
「や、八百長です! やり直しが必要だと思います!」
必死の抵抗を見せるしずかさん、と俺が、ありささんと佐々木さんがペアになることになった。しずかさんにはちょっと申し訳ないけど、ありがとうございます、ありささん、佐々木さん!
「まあまあ、ハーフゲームなんてすぐ終わっちゃうから、わかった、帰りにケーキバイキングに寄ろ? ね?」
「……し、仕方ないですね」
ケーキバイキングにも弱かったー! 心配!
どちらのペアが先に投げるかは、ジャンケンでありささんと佐々木さんのペアに決まった。いろいろ決まったので着席する。投げる順番的に俺はしずかさんの隣だ。どきどきしながら声を掛ける。
「お隣、失礼します!」
「……どうぞ」
すごく嫌そうな雰囲気を感じて、俺は一人分くらい空けて隣に座った。大丈夫、印象が不審者の現状、このくらいの反応は想定内だ……!
「今日はよろしくお願いします!」
「……よろしくお願いします」
程なくして司会の鈴木さんのあーあーが聞こえて来た。
『あーあー、全てのレーンの準備が整ったようですね、本日の街コンボウリングでは、女性、男性の順番で投げていただきます。では、先に投げるペアの女性の皆様、ボールをお持ちください!』
ありささんは元気良く立ち上がって、ボールを持ってレーンに立った。
『それでは行きますよ~~~~~!』




