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第2話 ドライブ

一週間後──

 

「さすがに早く着きすぎかー……」

 

 時計を見ると七時四十分。すでに俺は十分くらいコンビニの前で突っ立っている。佐々木さんとの集合時間まで後二十分。まだそこそこある。暇すぎて空を見上げる。


「いい天気だなー……」


 昨日はぽつぽつ雨が降っていたけど、今日は絶好の外出日より。

 いい感じの風が吹いて、俺はきれいに刈り上がった後頭部を触った。一昨日、散髪に行ったら思いがけず仕上がったツーブロック。おまかせでと注文したら散髪屋のおっちゃんが気を利かせて最近のモテヘアーテイストを取り入れてくれたらしい。似合っているとかは置いといて案外気に入っている。若干スースーする感じはまだ慣れない。

 引き続きあれこれ考えながらコンビニの前で待っていると、白のSUVが低いエンジン音を響かせながら駐車場に入って来た。

 あれは……BNW! いかつい大人の男な車から颯爽と降りて来たのはフランクイケメン佐々木さんだった。バン、と扉を閉めると、外したおしゃれなサングラスを頭に乗せ、手を上げた。


「待たせたな、平!」

「おはようございます!」

 

 会社以外で佐々木さんに会うのはこれが初めてだ。車も私服も佐々木さんの印象そのままだな、と思った。そう言えば、動きやすくて清潔感のある服装で来いって指示されたけど、俺の服装はこれで大丈夫だろうか。上から白のポロシャツ、くるぶしが見える丈のベージュのズボン、白のスニーカー、俺のこのコーディネート、ちょっと心配になって来た……


「お、雰囲気変わったな! 気合い入ってていいと思うぞ、その髪型!」

「ありがとうございます!」


 笑顔でツーブロック褒められた。服装のことは触れられなかったからこのコーディネートで問題なさそうだな。


「ちょっとコンビニに寄って行っていいか?」

「あ、はい」


 

 数分後──


「失礼します!」


 コンビニで佐々木さんにおごってもらったコーヒーを片手に、俺は白のBNWに乗り込んだ。


 シートベルトを締めた俺は決心した。よし、聞く!


「佐々木さん、今からどこに行くんですか?」


 結局のところ当日のお楽しみ、とはぐらかされて今日どこに行くのか等々、なぜか俺は何も知らされていない。


「んん? しばらくはドライブだな~」


 佐々木さんはエンジンをかけながら答えた。いやさすがにそろそろ行き先を教えてほしい! 男二人でいったいどこに行くって言うんですか……? よし、違う感じでもう一回聞く!


「着いたら何するんですか?」

「それは着いてからのお楽しみってことで」

「……」

 

 お楽しみ、か……お楽しみ……昨晩はお楽しみでしたね! いやそんなまさか! ないない佐々木さんに限ってそれはない! BNWは重低音を響かせながら、ゆっくりそして力強く走り出した。




 三十分後──


『 hurry up! hurry up! oh yeah! oh yeah! ── ♪ 』

 

 車内に流れるアップテンポな洋楽。俺でも何となく意味がわかる英語の曲でちょっとテンション上がって来る。ハリアップハリアップオーイェーオーイェー! 

 ずいぶん前に市街地を抜け、BNWは山道を軽快に走行中。

 今日どこに行くのか等々、あの後何度か聞いてみたけどやっぱりはぐらかされて終わった。考えてもどうしようもないので俺は佐々木さんを信じて、最高の景色と最高のBGMと最高の車でのドライブをこうして楽しんでいます。

 

「お、ノリノリだな~」

「あ! すみません!」

「別に歌ってていいぞ」


 リラックスしすぎて先輩が運転する車で普通に歌ってた……


「話変わるけど、平のタイプって、この前の歓迎会のときに告ってた女の子みたいな子なんだよな?」

「あ、はい! そうです! めちゃくちゃかわいくなかったですか?」


 かわいかった分、フラれたのがマジで悲しい。通りすがりの人に告白して成功するわけないことくらい理解はしているんだけども。ゴールデンウィークに入っても俺はまだあの失恋のことを引きずっていた。 


「そうだな~あの子もかわいかったけど、俺は隣にいた子の方がかわいかったな」

「は~佐々木さんのタイプはああいう感じなんですね」

「まあな」


 俺が思うイケメンの中のイケメン、佐々木さんはノリの良さそうな活発そうな女性がタイプだった。見た目は芸能人で言うと…………えっと、どんな見た目だったっけ、とにかくかなりかわいかったと思う。


 そんな話をしていると、ぐっとBNWのスピードが遅くなった。佐々木さんがサングラスを外して、ちらりと横目で俺を見た。


「平、もう着くぞ、しっかり肩慣らしとけよ!」

「はい! え、肩?」


 肩って? 肩慣らすって? どう言うことですか? と聞く前に、前方左手に存在感のある建物が見えて来た。でかいボウリングのピンが十本も乗った大きな建物ーーそう、あの建物はラウンドテン! は? ラウンドテン!?


「佐々木さん、今日の予定ってもしかしてボウリングですか?」

「ま、そんなところだな~」

「何だ、ボウリングならボウリングって言って下さいよ~」

「どこに着くかちょっとわくわくしただろ?」

「いやいや山道走り出したときは、どこに連れてかれるんだろうって一瞬かなり不安になりましたからね」

「はは、それはすまん」

  

 笑いながら謝る佐々木さん。謝り方もどことなくイケメンが滲み出ている。今度マネしてみよう。

 今日はボウリングかー……半年ぶりだな。せっかく来たんだし、いっちょ張り切って三百点出しちゃいますか!



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