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版籍奉還からの廃藩置県に四民平等、二官六省など、改革は進んで行く。私の知っている歴史より一年以上は早い気がするのは気のせい? まあいいや。
テンサイから採れた砂糖の山に薩摩から視察に来た人と震えつつ、その利益で十勝平野の開拓地を整備していると、ロシアやイギリスから奥州屋の『農園』に視察団がやって来た。
いや普通逆じゃない? と思いつつ案内して回る。彼らからすると、普通に農業をしているだけで大砲や船が買える程の利益を叩き出すのが信じられなかったそうな。
奥州各地の自慢の炭焼き用に整備した里山やワイナリー、広大な田園にカキの養殖場などを紹介して回り、その給料形態を説明していると、ひげもじゃの老人から質問が飛んで来た。
『この『保険積立』というのは何か?』
それは不作や災害時の給料を確保するための資金だね。社員が病気や怪我になった時の見舞金としても使ってるよ。
『それは実際に社員に支払われたことは?』
あるよ? 『試験農園』から寒さに強い『奥州一号』の稲が出るまではしょっちゅう不作になってたし、果樹園なんかは軌道に乗るまで何度も使ったね。最近だと、十勝の開拓地で収穫が上手く行かなかった所があるから、そこに出したね。
『何故このような制度を? これでは利益が減るだろう?』
確かに『お金』という意味での利益は減るけど、『人』という最大の資産は維持出来るからね。
『人? 彼らは労働者ではないか?』
あーこのひと多分マルクス主義者だ。『資本論』で似たようなフレーズ読んだ覚えがある。
確かに労働者だけれど、何年も働いた労働者は作業の効率が良いのよね。速く稲を刈れたり、作物の病気に気付いたり。そうなると、それは単なる『労働者』ではなく、『職人』や『専門家』になるのよ。
『……つまり、君は個々人の労働力は等価で無い、と?』
うわあ来た頭がいい人特有の理論の飛躍。私は『人』という資産に投資してる、ってことを伝えたかったのに。
それは否定しないよ。確かに、一人一人が持つ労働力は質も量も方向性も違っている。でも、それこそが『商売』を生み出しているとも言えると思うのよね。
『……なるほど』
これで理解出来るんかい。本当頭いいなあ。
『……君は静かなる革命の闘士のようだ。今度も手紙のやり取りをしよう』
アリガトウゴザイマス。
……というか静かなる革命の闘士って何? 中二病? それとも社会主義者認定?
多分そのフレーズ『資本論』とは違う気ががが