おしまい
連続投稿
1890(明治二十三)年。私は『奥州グループ』の会長を引退した。しばらくは『名誉会長』として次代の教育を続けるけれど、『奥州グループ』経営から一歩引いて次代に私の夢を託すことにした。
国内では憲法が制定されて二年経ち、初の総選挙が行われ。海外では清は滅亡して中華民国となってから三年経ち、混乱が続いている。最近だとボーア戦争にイギリスが大敗し、南アフリカからイギリスは追い出された。世界は変わっていく。
この先、世界はどうなるのか検討も付かない。けれど、私では既に役不足だし、次代が育ってきている以上無理に頑張らなくても良いだろう。
誰も飢えない世界が来るのか、来ないのか、後は託そう。
中途半端なところで終わった言い訳を。
~ここから言い訳~
という訳でこの作品は終わってしまいましたが、原因を単純に言うと、作者の妄想力不足です。
解説していきます。
『獅子殺し戦争』によって、この時期、世界中で繰り広げられていた『グレート・ゲーム』、南下して不凍港を獲得したいロシアと、ロシアの南下を抑えようとするイギリスとの間で繰り広げられていた戦争や政治闘争が、史実と異なりロシアの圧倒的優勢で終わりつつあります。何ならイギリスの勢力圏だったカナダも親ロシアになりつつあります。こうして史実より弱体化しているイギリスの出方が分からないのがひとつ。
また、作中では『獅子殺し戦争』で大陸における鉄道利権を獲得したアメリカが、それで納得するのか、納得するか納得しないかの両者でも、この後どの位中華に進出するのか分からないのがひとつ。
『獅子殺し戦争』により不凍港と火種を得たロシアは、面倒な土地であるバルカン半島への圧力を比較的弱めるであろうことは予測出来ますが、そうなった時オーストリア・ハンガリーとオスマントルコが史実よりもバルカン半島へ進出するのは明らかですが、その二者間で戦争なり紛争なりが発生したときのロシアの動きが読めないのがひとつ。
これら三つの要素を作者が読み切れないのが大きな要因で、この先を書けませんでした。
他に、作者の匙加減次第でどうにでもなる要素ですが。
新疆というイスラム教の勢力圏を手にしたロシアの、宗教に関する動き。
『奥州グループ』が煽っている東南アジアの独立の動き。
主人公の死期。
『奥州グループ』以外の世界の企業との関係。
これらの要素も絡まっています。
この作品を書いてみて分かったことは、歴史は様々な出来事が複雑に絡み合って出来ている、ということです。ベトナムを巡る清仏の闘争とロシアとヨーロッパ諸国間で行われたクリミア戦争が日清戦争に繫がっていたり、スペイン無敵艦隊の壊滅が東南アジアの植民地化に関わっていたり。変わっていく統治者達が各々に様々な宗教を利用して現地の人々を支配しようとした結果ミンダナオ島は現在まで紛争状態だったり。これらを上手く纏めないと歴史小説は書けないことが分かっただけでも大収穫でした。
そんな数多の歴史小説作家さんに敬意を表して、この作品の締めとしたいと思います。




