四
「イギリス?」
清にイギリスが援助しているという情報が入ってきた。どうも、大量に旧式の武器を売りつけたようだ。
情報をもたらしたのはロシアで、どうも英領インドから、アフガニスタン、新疆伝いで送ったらしく、新疆を落とす前に運び終えたようだ、とロシアの軍人は悔しそうにしていた。
私は、食料の生産元である東南アジアにちょっかいを出されると困るので、東南アジアの警備の人員を増やすことにする。徴兵真っ最中の日本から人員は持って来れないので、東南アジア各地の現地の人を教育して社員になってもらう予定だ。
社内教育で戦い方や経理などを覚えたら、色々使えるんじゃないかな、と暗に独立するとき使えるぞと伝えると、面白いくらいに希望者が集まったので、採算が取れなくなってるプランテーションなんかも買い取って投資し、警備以外にも現地の人の希望者を配置した。
同時にカナダ西部のアラスカ寄りにトナカイ牧場を造り。ここからは流石にロシアに運搬用として売ることは出来ないので、食肉にしてアラスカに売る。
カムチャツカ半島に移民してきたユダヤ人や現地の人を雇い、お隣アラスカでは定番のジャガイモとレタスの農場を展開。あと温泉を見つけたので整備した。
他には、ようやく人員と医薬品などの資材が揃ったので、『日本赤十字社』を設立。早速朝鮮戦線へ派遣した。
そしたら清の朝鮮方面軍が消滅した。
……うん、訳が分からない。
色々分析したところ、清軍は主力となる『本隊』と『志願兵』無理矢理徴兵してきた『民兵』からなるようで、この中で朝鮮戦線で一番数が多かったのは『民兵』だ。
日本赤十字社が朝鮮にやって来た結果、『日本に降伏すれば腹一杯飯が食える』という噂が出回り、『民兵』から脱走する兵が続出。そうなると『本隊』や『志願兵』もこれ以上戦えないことを悟り、清の朝鮮方面軍は自然消滅したらしい。
これにより朝鮮は戦前の領土を回復したものの、私達は何十万と増えた捕虜と清の略奪の結果荒れ果ててしまった朝鮮北西部の民間人をどう食わせようか悩み、食料の輸送が間に合わなくなる恐れが出たことから、朝鮮戦線は膠着することになる。
実質兵站の大部分を担っている『奥州グループ』はというと、食料をどう増産、調達したものかと四苦八苦しており、シャムなどで米を、オホーツク海で魚介を確保し、これらは後の世で不作が起きた時の予行として社内では扱われている。
先の分かり切っている好景気を煽ったり、無駄に投資したりする判断を下すほど、『奥州グループ』の経営陣が愚かで無いことが分かって、私は一安心だ。