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薩摩からの大増員のお陰で、清とフランスの間で戦争が行われていることにより不安定していた東南アジアの治安は回復し、同時にそろばんをはじける人が増えたことで『奥州グループ』の東南アジア支部は安定化した。
そんな東南アジアの『奥州グループ』の拠点であるサイゴンから、『至急来て欲しい』と電報が届いたので、向かい、現地の所長から話を聞く。
……いやはや、予想外なことに、『奥州グループ』のフランス領インドシナの社員達がお金を出し合って、土地を買って農場を運営したいそうな。
で、それは何でかな?
『…………』
だんまり、ねえ。ってことは、公には言えないことかな? となると、その農場を独立派の資金源にしたい、とか?
『!?』
いや驚かんでも。
『……我らを突き出すか!?』
何でそうなるかなあ。私としてはそんなことどうでも良いの。
『我らの願いを馬鹿にするな!』
いやそうじゃなくて。私としては、ここがフランス領であれ君たちのものであれ、やることは変わらないからね。
『!?』
感情豊かだなあ。
だから、君達が私達に危害を加える気がない限り、興味ないね。……まあ、どんな農場を造りたかったのかの興味はあるけど。
『……予定では、コーヒー園を造るつもりだ』
コーヒー!? いいねえ! 出来たら売ってよ!
『…………』
唖然とせんでも。ま、コーヒー育てるのに必要な情報はあるから、何なら、情報売ってもいいよ?
『……夢物語、と言わないのか?』
何で? 独立は出来るよ? 君達が頑張れば。
『……同情か?』
本気で努力する人を馬鹿に出来る程図太い神経してないよ。
『……良く分からん』
分からないでいいよ。ただ、君は、今のところ私の社員で、守るべき財産だ、ってことは覚えておいて欲しいかな?
『……手を噛むかもしれんぞ?』
それも一興。君達はやりたいようにやりなさい。フランス側には「私がコーヒーを飲みたい、ってぼやいたのを拾われたかな?」って言っておくから。
『……感謝はしないからな』
どうぞどうぞ。でもコーヒーは売ってね?
こうして、インドシナの現地社員達は『奥州グループ』を抜けるものと『奥州グループ』で働いて資金を確保するものに分かれ。幾つもの困難を乗り越えてコーヒー園を造り上げ、それが独立運動の資金となり、ベトナムなどが独立していくのは、まだまだ先の話だ。