0008 その後……
0001-08 その後……
アモンが去ってから、数分もしない内に対悪魔研究機関から契約者がやって来た、らしい。アモンが去った後に、気絶してしまったらしい。全て、ベリアルが教えてくれたことである。
ちなみに、今は学校の保健室に寝かされていた。
「レイ、お疲れ様」
「守れなかった……」
後悔の念だけが、押し寄せてくる。もう少し上手く動けていたら、とか。あの時、ベリアルを目で探さなければ、だとか。考えれば考えるほどに、悪い部分だけが溢れてくる。
「確かに。レイは、守れなかったよ。だけどね、それと同時に守った命もあるんだよ」
起き上がることのできないレイの頬をゆっくりと撫でながらベリアルが話す。その顔は慈愛に満ちたものであった。
「あの時、一歩を踏み出した勇気がなかったら。ボクが来る前に、もっと沢山の人達が殺されていたはず。それを救ったのは、間違いなくレイ。キミなんだ」
「そっか……でも、納得できない」
「分かってる。時間をかけてゆっくりと納得して行けばいいさ。レイならできるよ。ボクが認めた男なんだから」
少し笑って、そう話してくれた。悔しいが涙が溢れてきた。だが、目を拭っている最中に詳しい説明がベリアルによりなされた。
「今のレイの状況を、詳しく説明するよ。打撲、擦過傷は数えきれず。両腕は疲労骨折。そして、一週間寝続けていたよ。まぁ、怪我は聖癒乃杖で治したけど」
「まじで?」
「うん。まじ」
驚いたように顔を見合わせた。そんなに経っているとは思わなかったのだろう。そんな時、控えめに扉がノックされた。
「天津君に会いたいって人達を連れてきたのだけど、入って良いかな?」
「はい。どうぞ」
何度か世話になったことの有る、保健室の看護教諭の里山先生の声が扉の奥からした。別に会いたくない人なんて居ないので、許可をだす。
「初めまして、日丘 弥生の妹の湊です」
「初めまして。俺は天津 澪です」
会ったこともない人だった。同じ学年の生徒だろうか? だがなんとなく、生徒会長と面影が似ていた。
「どうして、姉を助けてくれなかったのか。なんて、言う資格は私にはありません。私には力が無いですし、あったとしても姉や貴方のように一歩を踏み出すことは出来ないですから」
姉を助けてくれなかったのか。やはり、生徒会長の妹だった。言葉を言い終わるよりも先に涙が溢れている。まだ完全には受け止めきれていないのだろう。
「私、生徒会長になったんです。姉の意思を継ぎたくて。同じ景色を見てみたくて。だから、生徒会長として私は貴方にお礼を言います。生徒を守ってくれてありがとう、と」
「すまない。俺がもっと強かったら、お前の姉ちゃんを守れたのにっ。俺が弱いばっかりに、死なせてしまった」
「貴方は、強い人です。これは私の願いです。姉を殺した悪魔を、貴方の手で下してください。それでは」
それだけ伝えると、そのまま戻っていった。隣でベリアルがキミも十分、強い子だよ、呟くのが忘れられなかった。
そして、入れ違いになるように今度は違う人が入ってきた。
「天津 澪君だね。私は山月 恵那。対悪魔研究機関の者だ」
対悪魔研究機関。
それは、悪魔関係においての研究及び悪魔討伐を専門に行っている機関である。他にも悪魔によって身内を無くした者に対しての支援も行っている。
「俺がそうです」
「単刀直入に言おう。君には対悪魔研究機関に所属してもらう。唯一、あのアモンと言う悪魔と戦闘し生き残った契約者だから。それに、君の眷器についても知りたいし」
山月の目が、拒否権は無いと言っていた。だが、その高圧的な態度にベリアルが不満を漏らした。
「断ると言ったらどうなるのさ?」
「君はいったい何者だい? 彼とはどういう関係なのかな?」
ベリアルをすっと見ている。その目は睨み付けるかのような鋭いものであった。
「ボクはベリアル。レイと契約した堕天使だよ」
「堕天使? 何を冗談を。堕天使など存在しない」
一笑するように切り捨てた。堕天使はこの世に存在しないと、堕天使に向かって言い放った。
「まぁ、いい。その時は力ずくでも所属させるだけだ」
「俺は、入りますよ」
ゆっくりと決断した。その言葉を聞いた山月もベリアルも互いに睨み合うのをやめた。
「敵について、多く知ればそれだけ悪魔へ復讐できるから。ベリアルもいいだろ?」
「レイが良いなら、ボクは良いよ」
「では、明後日。君の家に迎えを寄越すよ」
「よろしくお願いします」
そう言い残して、山月も帰っていった。里山先生がレイの荷物を全て持ってきてくれた。なら、もう家に帰るとしよう。
「ベリアル、帰ろうか。俺達の家に」
「そうだね。うん!」
ゆっくりと夕日の差す中を歩いて帰った。ちなみに、帰りがけに里山先生から学校はあと一週間は臨時休校だと聞いた。




