0000 昔語 前編
「澪お爺ちゃん! また昔話してよっ!」
縁側で麦茶を飲む老人の前に、老人の孫なのだろう、まだ小さな少女が元気よく走ってきた。
「もうっ、結愛っ。久しぶり、お父さん」
「お久しぶりです。お義父さん」
「おぉ、莉瑠と俊君か。よく来てくれたな、こんな辺境まで」
隣に座った結愛の頭を撫でながらそう言った。くすぐったそうに笑う孫を見て顔が綻ぶお爺ちゃん。
結愛の父親である俊が、縁側に荷物を置いた。そこそこの大きさの鞄である。相当な重さであろう。
「お爺ちゃんっ、聞かせてよ! いいでしょ? パパ」
「じゃぁ、結愛を頼んでいいですか?」
「もちろん。話すとしようか、少し前の儂の大冒険の話を」
結愛が上目遣いで俊に頼む。笑いながらそう頼まれた。別に断る理由もないので、そのまま思い出を語っていくことにした。
「昔はな、今みたいに安全じゃ無かった。悪魔と呼ばれるバケモノが時々、現れては多くの人を傷付けていた」
「知ってるー! 学校でね、授業で先生が教えてくれたもん」
えへん、と得意気に結愛が胸を張った。まだ小学生、それも低学年なのに知っていることに少し驚きを覚えつつも、また話始める。
「そう。その悪魔達をやっつける為に、戦う人達が現れ始めた。そして、少しずつ少しずつ、悪魔によって傷付けられる人は減っていった」
「それも教えて貰ったんだ。天使様とけいやく? してね、けんき? を出して戦うんでしょ? こんな風に、けんきけんげんっ」
縁側から飛び降りて、お爺ちゃんの前出
で眷器顕現っ! と勢い良く叫んだ。そんな姿を見ながら、少し懐かしく感じた。昔は自分もこんな風にしていたなぁ、と。
「結愛はそこまで知ってるのか。凄い、凄い。じゃぁ、眷器とは何か分かるかな?」
「ううん。知らないっ」
「眷器とは、天使と契約した、あー。友達になった人達が悪魔をやっつける為に天使に借りる武器だよ。この眷器じゃなければ悪魔をやっつけることはできない」
「えっと、じゃぁ眷器を出すことが眷器顕現なの?」
驚いた。なぜ、そのように考え付いたのか。考え付きもしなかった。顕現の意味なんて、知らないだろうに。
それと同時に溌剌としていて、聡明な孫の姿と相棒の姿を重ねてしまった。
「お爺ちゃんも、天使様と契約していたの?」
「そうだよ、していたさ。悪魔とも何度も戦ったよ。それに、天魔大決戦にも出たよ」
天使と人と悪魔による、最後の大きな戦いであった。万の悪魔を殺したが、億の人々が死んでいった。そんな、地獄のような大決戦であった。
「ねぇ、レイお爺ちゃんの天使様も見てみたいなっ」
「いや、もう──




