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リカーナの学園生活  作者: 中沢 文人
1学期
36/47

回収の速いフラグと地獄の始まりと実力の一端

「ごっめ~ん!待った?」

「ルーシャ?どうしたの?」

「冷静に返さないでよもう。」


ルーシャでも冗談は言うのですね。一瞬誰かと思いました。


「こんにちはカーナちゃん。」

「あ、マルスさんこんにちは。」


マルスさんが実技教室に入ってきました。遅れて、魔王さんも入ってきます。


「早ぇな。」


魔王さんの言葉が荒々しくなってます。機嫌が悪いのでしょうか。


「香奈はほら、あれがあるから。」

「あぁ、あれか。」

「あれね。ほんと羨ましいわ。」

「あれ?」


マルスさんがなんのこと?という顔で質問してきます。


「うん。まだこれと言った名前を決めてないけど、こういうことなの。」


と、香奈は制服に速着替えをします。それを見たマルスさんは、納得した顔で頷きました。


「へぇ~そんなことができるのですか。」

「うん。龍種なら全員できるよ。原理はわかんないけど、服を吸収、情報化していつでも着れるようにしてるんだよ。」

「便利ですね。っと、他の人が入ってきましたね。この話は終わりで。準備をしましょうか。」


マルスさんが実技教室の倉庫の鍵を開け、体法魔偶(ていほうまぐ)を取り出しました。魔王さんも続いて的を取り出します。これだけで、今日何をするのかが想像できますね。マルスさんは体法魔偶の頭頂部を開け、中身を操作します。


「さてと、強さを最高にして、と。お願いします。」

「あいよ。」


つ、強さを最高!?処供物流派師範でも苦労するほどの強さで、さらに魔王さんの保護魔法!!?


「ちょ、マルスさん達、なにしようとしてるの?」

「なにって、授業ですよ?」

「あ、はい。って、いやいやいやいや。普通、体法魔偶の強さMAXって、危険度4の魔物を1つだけで倒せるくらいなんだよ!?」

「はい、知ってますが?」

「え?」


香奈とルーシャ、おそらくスレインくんはギリギリでしょうが抜きにして、他の人達にとってはベテラン騎士が6人くらいで相手をする魔物を1つだけで瞬殺できるような強さの体法魔偶を相手に…


「マルスさんたちは地獄を作りたいんだね…」

「大丈夫ですよ。すぐに慣れますって。」


騎士6人分の戦闘を1つでこなす体法魔偶は騎士10人分の戦闘力を持つと言ってもいいです。そしてこの体法魔偶を倒せるということは騎士10人分以上は確実の戦闘力を持つ生徒が72人全員のクラスになるということで…小国なら簡単に落とせる戦力を作るつもりですかね。ルーシャがおかしかったのはこれの予兆だったのでしょうか。しかし魔王さんはただの的を用意しているだけなので、そんなに厳しくならなそうですね。


「よしよし、浮遊術式、転移術式、反撃術式の刻印完了と。」


ですよね~……


「よし、全員いるようだな。これからは体法と魔法に別れて成績順に並ぶようにしろ。そんくらいできねぇとAクラスの意味がねぇぞ?―返事もねぇのか?」

「「「「はい!」」」」

「返事もねぇこと聞いてはいったぁいい度胸だ。たっぷりしごいてやるから覚悟しておけよ。」


え。


「それじゃ、始めましょうか。体法は成績順から3列になって並んでください。大丈夫です。死なない(・・・・)ようにしますから。」


いろいろとひどいですが、覚悟を決めないといけませんね。


魔王さん達魔法組は教室を線で半分に区切ってある、反対側に移動します。その線には武器、魔法を重力魔法と分解魔法で無効化する効果があります。武器と魔法が反対側に飛んでいかないようにしているのですね。ちなみに、以前コーニスくんをやけどさせたルーシャの魔法はこれを越えており、嫌がらせのような魔法でも結構凄かったのです。


「それではここに並んで、1人ずつ前へ。」


香奈、スレインくん、眠たげな顔のレギアスちゃんが前に出ます。そして、それぞれ構えを取りました。


「勝利条件は頭部に触れることです。では、始め!」


最初に飛び込んでいったのはレギアスちゃん。早く終わらせたかったのでしょう。しかし、上手くいかずに軽くいなされて地面に。しかし元勇者の感覚か、受け身をとってバックステップで距離を取りました。次に飛び込んでいったスレインくんは、レギアスちゃんを見て体法魔偶の強さが尋常じゃないと悟り、右フックを繰り出しながらも素早く全宙し、キックを放ちます。体法魔偶には迎撃術式が組み込まれているのでフェイントは効くのですが、流石に強さ最高の体法魔偶は引っ掛かりません。フェイントのはずの右フックを右手でつかみ、近づく脚は左手で掴みました。そのまま軽く放られるスレインくんもレギアスちゃんのように綺麗な受け身を取ります。いつまでも見ている訳にもいかず、香奈も体法魔偶に低く飛び込みます。脚を鎌のように振り、体法魔偶の脚を狙って体勢を崩そうとしますが、ローリングジャンプで回避されました。しかし、ローリングジャンプではありませんがジャンプで回避されると予想していたので手を使い下から蹴り上げます。ここでローリングジャンプで回避をした理由が分かりました。体法魔偶は迫る香奈の脚を回転している勢いで弾いたのです。弾かれた香奈はバク転で距離を取り、レギアスちゃん、スレインくん達と並びます。


「手強いね…」

「面倒くさいだけだろう。」

「香奈としてはレギアスちゃんが参加してるのが意外だなぁ。」


こういうことはやらないと思っていたのですが。思えば入学式でも大きな声で返事をしていましたし、昨日の授業も参加していたと思います。


「成績は出るんだろう?きちんと取ってないと、見せた時に面倒だからな。」


見せるのは、友達でしょうか?精霊は自然発生するもので、成績を見せなければならない親はいないはずです。なら同じ精霊の友達に見せるか、面倒見がいい団長が保護者的役割をしているかですね。ちなみに、精霊は普通5~10の団体で行動していて、その団体のなかには必ず司令塔となる団長がいます。


「ちっ、面倒くさい。疲れるから嫌なんだよ体動かすのは。だがもっと面倒なのはアイツに詰め寄られることだから、適当にやるぞ。」

「僕も、体法男子首席として女の子ばっかりに負けてられないからね。」


と、2人の顔つきが変わります。レギアスちゃんは眠たげな顔から歪んだ笑みに。スレインくんは飄々(ひょうひょう)とした雰囲気が消え、鋭く冷たくなっています。


「あ、そういえば言ってませんでしたね。」


ここでマルスさんが一言。


「自身が持つ権限はいくらでも使って構いませんが、体法魔偶を壊す(・・)くらいの威力にとどめてくださいね。以上です。続けてください。」


マルスさんはこう言いますが、権限は自分の切り札、出自、そして弱点になるもの。そうそう見せられる物ではないのです。が、2人は。


「へぇ、先生お墨付きか。なら遠慮する必要はないな。」

「たしか校則第3条に書かれてるけど、指定された権限以外を使うと3週間の停学になるか、授業で指定された権限以外を使うと1週間の停学に加えて評価が1段階下がるんだよね。」


天龍学園は4段階評価を採用していて、科目ごとにA、B、Cで表されます。評価Cは全体の50%、評価Bは80%、評価Aは95%、評価Sは95%より上の成績を取らないといけないのです。ここ天龍学園の生徒は評価Bを取ることが普通であり、評価Sを取ることは名誉なことなのです。各科目以外にも総合評価というものがあり、その総合評価でCを取ると天龍学園の生徒の半人以前と見なされ、軽蔑されてしまうのです。


「まずは僕から行かせてもらおうかな。」


スレインくんはそう言い、体法魔偶に飛び込んで行きます。迎撃する体法魔偶の右手をスレインくんは右手の掌底突きで迎え、権限を使います。


「浸透波」


とだけ口にだし、体法魔偶の手とスレインくんの手が触れた瞬間、体法魔偶の右手が弾かれ、動きが鈍くなります。その隙にスレインくんは体法魔偶の頭を触り、試合は終わりになりました。


「へぇ、どうあっても壊せないということを最初の一回で理解して、衝撃が浸透する権限を使ったわけですね。その練度も並みじゃない。通常は触れたところに良くて衝撃が響く程度ですが、スレインくんのは衝撃を必要な分…5秒に調整して持続させているほどですね。流石です。」


と、マルスさんの解説を効く前にレギアスちゃんが権限を使います。


「ラグナ、オルタス、顕現せよ。」


1つは神々しく金色の鞘に入った剣。もう1つは禍々しく赤黒い鞘に入った剣が虚空から現れます。おそらくそれらはいつかの世界で使った、勇者時代の聖剣、魔王時代の魔剣ではないでしょうか。


「木偶の坊ごとき、抜くまでもない。」


おそらく、オルタスと呼ばれる禍々しい剣で最初に体法魔偶に触れ、ラグナと呼ばれる神々しい剣で体法魔偶の胴体を木っ端微塵に切り…え、切ったのですか!?

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