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リカーナの学園生活  作者: 中沢 文人
1学期
32/47

父親みたいな日課と程度の能力

「ふわぁぁ…おはよ~」

「おはようカーナ。」

「お…はよ……」

「おはよ、ルーシャ、リリーナさん。」


目が覚めるとルーシャとリリーナさんが香奈のベットに座っていました。おそらく寝顔をみていたのでしょう。暖かい目をむけてきます。自分ではみられない顔を見られてると思うと、ちょっとだけ恥ずかしいですが…


「今日も早いね。」

「当然よ。朝5時に起きて家に届く魔法論文を流し読みしてからコーヒーを一杯。お母さんを連れてきて、カーナを起こしたのが今日ね。」


お父さんか!!と突っ込みたくなるルーシャの朝ですが、これが普通なのです。朝刊を読んで、コーヒー飲んで、会社にいく。そんなお父さんの朝が想像できますよね。


「そんなお母さんが今日は部屋に居なかったから探すのに手間とっちゃったけど。結局ひょっこり出て来て探し損よ。」

「ご……めん…ね?」


うーん、リリーナさん、夜になんかあったのかな?


一瞬で服を着替え、髪型を変えてから立ち上がります。リリーナさんが驚いた顔をして、すぐに羨ましそうな顔しました。おそらく、ルーシャと同じ理由ですね。


これまではパパやママの補助がないと取り込んだ服を着れなかった香奈ですが、最近練習の成果が出てきたようで、1人でも着られるようになりました。その結果が入学式の日に取り込んだ制服です。しかしルーシャには最近まで1人で服を着れなかったというのが恥ずかしくて言えないので、ヒミツなのです。


「それじゃ、ご飯食べにいこっか。」


ルーシャとリリーナさんと共に階段を降りると、すでに食器は並んでいました。今日はサンドイッチのようです。


「おはよう、香奈、ルーシャちゃん、リリー。」

「おはようママ。」

「おはようございます。」

「お…はよ」


ママは服をデザインしている途中だったのか、メガネ(伊達ですが、雰囲気が大事だと言っていました)をかけ、凄い速さのペン回しをしながら紙とにらめっこしていました。


「あ…たらしい……ドレ…ス…?」

「そ。リリーとルーシャちゃん、カーナにね。」

「あ、それなんだけどママ。今度ルーシャと一緒に王城で開かれるアドお兄ちゃんとキュリスお姉ちゃん主催のパーティーにいくから、それ着てくかも?」

「そうなの?いつ?」


そう言えばいつかは聞いていないので、ルーシャに答えてもらうように見つめます。それを察したのか、ルーシャが答えてくれました。


「あさってです。」


うん。え?いや、え?早くないというか急すぎない!?


ママもそう思ったのか、表情を曇らせました。


「ずいぶんと急ね。しっかり者のルーシャちゃんが忘れてたとは思えないけど。」

「はい、招待状が来たのが昨日でしたので。」


なるほど。招待状を出したのはアドお兄ちゃんですね。キュリスお姉ちゃんでしたら1月(ひとつき)前には連絡するはずです。


「アドのやつ…今度また説教してやろうかしら。」


ママはお兄ちゃんより後に生まれたのでアドお兄ちゃんの妹とも言えますが、パパのお嫁さんなので、妹にして母親という複雑な関係となっています。ですのでアドお兄ちゃんはママには頭が上がらないと言っていました。


「リリー、今日どうせ暇でしょ?デザインを今日中に仕上げて明日には完成させたいから、アイディアを出してほしいんだけど。」

「勝手に…ひま…とか……きめつけ…は……よくない」

「でも暇でしょ?」

「……うん」


リリーナさん可愛いなぁとか思っちゃうけど、失礼かな。


そう会話をしながら朝ごはんを食べ、学校に向かったのでした。




「で、視覚情報共有とか意味不明なのを今してるんだっけ?」

「うん。あくまでも視覚だけだから、会話はパパには聞こえてないよ。」

「1時限目はたしか魔法体法の実技だったはず…」


ん?なにか問題があるのかな。


「あ、カーナ。そっちは…ルーシャちゃん、よね?」


と、そこで誰かに話しかけられました。振り向くと、天龍学園の校長先生もとい、キュリスお姉ちゃんがいました。


「あ、はい。そうですが…どうして私の名前を?」


あ、ルーシャは声で分かると思ったのですが。


「あ、覚えてない?入学祝いで居たけど。あぁ、あのときはお互い名乗ってなかったんだっけ。」

「あ、はい。その、お名前をよろしいでしょうか。」

「ルーシャ、キュリスお姉ちゃんだよ。」

「……!?え、えっ…え!?」

「あ、その反応は知ってる側の人ね?事情は知ってるわ。改めまして。私はキュリウス・レスト・プルトゥ。ここでは言えないけど、一応偉い立場にいるわね。」


相手の反応をみて、その内心を知る。さすがキュリスお姉ちゃんです。3000年もの貴族とのやりとりで培ってきた能力は怖いほどですね。


「1ついいかしら。見かけたから声をかけただけだけど、ちょうどいいわ。こんな場所だけど、謝らせてもらいたいの。ごめんなさい。アドの奴が招待状を出し忘れていて、パーティーの連絡が遅れてしまったのは、アドに任せた私が悪いと思ってる。まさか手紙をポストに入れとくこともできないなんてアドを過大評価しすぎてたわ。」


ルーシャが驚愕の顔を浮かべています。それはおそらく、最高位龍が自分を知っていて、しかも謝ってきたとか、王妃様がただの(?)小娘に謝ったとか、その両方だとか、炎龍にして王様のアドお兄ちゃんがその実手紙をポストに入れられない程度の能力だとか。内心複雑でしょう。


「い、いえ…その…大丈夫なのですか?」


あ、珍しくルーシャがあたふたしてる。表面上では落ち着いてるようにみえるけど、香奈にはよく分かる。いつもより上がった口角とか、跳ねてる髪の毛が世話しなく動いてるだとか、ルーシャの利き手の左手の薬指がピクピクと動いてるだとか。表情を頑張って抑えてる時のルーシャは別のところが抑えられてないんだよね。


「えぇ。ここにいるのはただの校長先生。生徒にぶつかっても謝らない先生は先生じゃないもの。だから謝るのも問題ないのよ。」

「は、はぁ。」


ルーシャがあまりの展開に流されています。それを察してかキュリスお姉ちゃんがすこし離れました。その動作の意味を理解したルーシャは


「それでは朝の学活が近いので、失礼します。」

「えぇ、また今度(・・・・)。」


と言い、キュリスお姉ちゃんと別れたのでした。

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