後天性の神と邪神リリーナ・クルス・レン・リュ・フォード=ダークロンド・マスターオブワルプルギスと告白
「そういえば魔王さん、なんで家を留守にしてたの?それも家族を置いて。」
「あぁ、それはな―」
「カーナちゃん、それはね、私が悪いの。」
「え?」
どういうことだろう。
「そういえばあのときは話さなかったな。ルーシャ、お前は自分の力を完全に制御できていると思うか?」
「いえ、全然制御できていないと思う。」
「え?ルーシャが?」
「そうだ。こいつは完全に制御できていないどころかまだ20%も使いこなせてないだろうな。」
え、100%使いこなせたらなにそれやばいじゃん。力を落としてるいまの香奈と同じなんだから、香奈と本気で手合わせできちゃうじゃん。正直人間とは思えないけど…
「当然だが子どもは両親から半分ずつ力を受け継ぐ。カーナも覚えがあるだろう?ルーシャの力の半分は俺の力、もう半分はリリーの力が受け継がれた物だ。そして俺の力は強大だ。俺のこの力は後天性のものだが、ルーシャ、お前のは完璧な先天性のもの…つまり天才ということになる。が、力はより強大な物に集まろうとするのは自然、つまり完璧に制御できている俺の力にお前の力が加わろうとする。そうするとどうなるかは分かるだろう?」
「私が崩壊するわ。」
「そうだ。だからお前が自分の力を定着させるまで俺は離れていたんだが…」
「説明するの忘れてた。」
「ということだ。」
「えー」
「………」
リリーナさん、少しドジなところがあるなぁとか思ってましたが…
「だ、だって聞いてこなかったんだもん!まさかお父さんが行方不明って自己完結してるとは思わないじゃん!」
「…それはもういいわ、お母さんだし。」
「ルーシャちゃん……いま凄くグサッときた。」
「でも1つ疑問があるわ。お父さんの力を半分だけ受け継いでる私だけど、所詮半分よね?感覚だけど、半分以上はあると思うのだけど…」
「あぁ、説明不足だったか。力が受け継がれるのは半分だが、遺伝子的には完全な情報が組み合わさったのが子どもだ。条件が揃えば親よりも性能がいい体をもった子どもが出来るのは普通だろう?なぁヴァーン、身に覚えがあるだろ。」
「そうだな。」
「?」
香奈のことかな?
「え、それじゃ私、お父さんよりも強くなれるかもしれないってこと?」
「出来るかどうかといえば出来るが、現実的には無理だな。生きてる時間が違う。」
「やっぱりそうよね…親の意地ね。」
「それもあるな。ちなみに、お前は受け継がれたのが俺の力だけだと思っているだろう?」
依然として魔王さんはハンバーグを運ぶ手を止めていませんが、しかしテーブルマナーはきちんと守られていて、口のなかに食べ物が入っている状態では話していませんが、それでスムーズに話をできているのは年期か食欲かに別れますね。
「え、お母さんには何の力も…」
「ほらリリー、親の威厳を見せつける時だぞ。」
「う、うん。ルーシャちゃん、ルーシャちゃんはお兄ちゃんの力を制御できる素体がただの人間だと思う?」
「…ということは?」
「私、後天性の…」
「後天性の?」
「邪神なのでした~」
「…え?えぇぇぇ!?」
この声はパパです。香奈も驚いていますが、パパほどの驚きではないです。目をひんむいて口をあんぐり。ルーシャはよくわかっていないのか、小首をかしげて頭上にはてなをうかべています。比喩ではなく。ママは落ち着いているようにみえますが、動揺しているのがよくわかり、目がすごく泳いでいます。
「な、なんだ!?俺はこの次元で邪神を発生させた覚えはないぞ!?」
それはその通りで、全ての負は邪龍、サタンお姉ちゃんに還元されるからです。
「うん、私が邪神になったのも偶然。本当にたまたま出会っちゃっただけだから…」
「それはまぁ過ぎた話だからいいとして、ヴァーンにはいつ邪神―邪神リリーナ・クルス・レン・リュ ・フォード=ダークロンド・マスターオブワルプルギスが発生したのか―」
「どうでもいいけど名前ながっ!よく覚えてんな。」
「まぁリリーの本名と邪神になった原因の名前をくっつけたわけだからな。で、いつ発生…いや、継承したのかというと―」
「継承できんの!?」
「少し黙っとけ話が進まねぇ!」
「すんません…」
あ、食べ終わっちゃった。ルーシャも食べ終わったのか、目が合いました。
「どうするルーシャ?」
「部屋に行きましょうか。」
「そうだね。」
「「ごちそうさまでした。」」
ルーシャはあまり興味がないのか、食事中の会話だと思って聞いていたようですが、食べ終わったら必要ないと、香奈の部屋に行く前にママにお辞儀をしてスッと向かいます。しかし魔王さんとパパの話は続くようです。
「いいの?」
なにがどういいのかわからない言葉ですが、そんな曖昧な言葉でもルーシャは分かってくれます。
「えぇ。自分の出自を聞くのは面白いけれど、ああいうのは聞いてもどうしようもないから興味ないの。自身の力の根源をきいたほうがそれを糧にもっと魔法が上手くなれるから、って最初はきいていたんだけど。邪神の娘にしたって私が邪神なわけじゃないし、お母さんも悪さをしてるわけじゃないし、ね。」
「ふーん、やっぱり強いね、ルーシャは。」
「そんなことないわ。カーナはお母さんが邪神って聞いて、私が邪神の娘だと聞いてどう思った?」
「そんなの分かりきったことだよ。答えは、ルーシャはルーシャ、だからね。」
「そうね。」
内心ではすっごく嬉しく、そして安心している香奈ですが。邪神の娘、ということは香奈と同じくらいの潜在能力があるということです。いつか時がきて香奈が半神半龍だと告白したとき、ルーシャも香奈みたいにそっかと思ってくれると思います。
…いまチャンスなんじゃない?
「ねぇルーシャ。」
「なに?カーナ。」
部屋に入り、一緒にベッドに座ります。
「ルーシャって、神のことどう思う?」
「そうね……お母さんが邪神っていうことはたぶん、嘘をついてないって思うけれど、それでも人格があり、笑って泣いて怒って、あまり人と変わらないんじゃないかと思うわ。」
「そっか。じゃぁ言ってもいいかな。」
「えぇ、聞いてあげるわ。」
こういうところがいいのです。
「香奈ね、神なの。」
「そう。」
「でね、最高位龍なの。」
「それは凄いわね。」
「驚かないんだね。」
「むしろ嬉しいくらいだわ。あと、カーナの力に納得もした。ラピスさん…いえ、お父さんもお母さんも、ヴァーンと呼んでいたから、ヴァーンさんね。ヴァーンさんもただの2代目勇者じゃないと思っていたけれど、神で最高位龍なのね?ということはシャルナさんも…入学式が終わったあとの最高位龍が全員いるというのは…正直冗談だと思っていたのだけど。」
香奈の体法、時魔法に疑問をもっていたのですね。それに、最高位龍種が全員いるというのは冗談だと思っていたのですか…
「ううん、ママは神じゃないけど、パパが神でパパとママも最高位龍っていうのは合ってる。詳しくはまた今度話すとして、香奈の龍格と神格はクォルドヴァーン、人格はリカーナ、性格はブラックウィステリアだよ。パパの神格と龍格はアルスヴァーン、人格はラピスラズリ、性格はブラックウィステリア。ママのは龍格だけで、クォルド、人格はシャルナ、性格はブラックウィステリア。」
「なるほどね。だからヴァーン、か。…アルスヴァーン、アルス…ヴァーン…アルスって、たしか授業にでてきた原初龍の名前だったわよね?龍教がそうだと言っているって。」
「そう。原初龍とも言われてるし、終焉龍とも言われてるね。」
「ということは…カーナが時に関して異常なのは、原初龍と…そうね、時龍との子供だと考えるのが妥当なところよね。だとするとシャルナさんは時龍?」
「うん、凄いよルーシャ。やっぱり頭がいい。」
「カーナほどではないわ。カーナはアルヴテリアのほとんどの言語を自在に操れるけど、私は完璧なのはせいぜい28しかできないもの。カーナはもはや動物とまで話せるでしょう?ボッポとムックと、異常に分かり合ってるっぽいし。」
これだから天才は…自分の異常さを分かっていないのです。香奈はほとんどというより完全に反則で、自動翻訳があるのでできているだけです。文にしたって書こうとしていることを自動的に同じ文法にして最適化したものですし。6歳で28ヶ国語を完璧に操れる人がいますか?読むだけならルーシャ、50以上の言語をマスターしています。でないと魔法の論文が読めないとかなんとか。いや翻訳したのを読めば…と言ったのですが、少しでも解釈や翻訳の違いがあるとそれだけで理論が破綻する論文が大半だから、部分的にも面白そうな論文があったらその言語をまず習得すると言っています。もう自分で理論を建てていった方がいいんじゃないですかね。魔法のためだけに50以上の言語をマスターするなんて、中毒です。
ちなみにボッポとムックはうちのペットです。すごく可愛いのです。




