ふさわしい生徒
「さて、ルーシャは戻ってるかな。」
教室に入って、ルーシャの席を眺めると、ルーシャの後ろ姿が見えました。
「あ、カーナ、戻ってきたわね。そっちはどうだった?」
「全員誘ってきたよ。当日いけるかわからないけど、とりあえずみんなオッケーだって。あ、1人は手紙だったから返事を聞いてないや。」
「そう。こっちは全員いけるって。」
「了解!楽しみだね、ルーシャのお弁当。」
「楽しみなのは私のお弁当なのね…」
「ふふん、一応友達が増えるのも楽しみだよ。」
「一応なのね…」
ルーシャが呆れた、といった風にため息を付きます。
「おや、君も参加者…というか、主催者なのかい?」
スレイン君が話に加わってきました。
「えぇ、そうよ。貴方は…」
「スレインだ。スレイン・ゼレニウス。一応、僕もリカーナちゃんにピクニックではない何かにお呼ばれしてね。よろしく頼むよ。」
「そう。私はルーシャ・レスト・フェルオス。カーナとは産まれた時からの親友よ。」
ルーシャが誇るような声で挨拶をします。どこか、腰に手をあてている雰囲気です。
「ルーシャちゃん、ね、覚えたよ。それで、ピクニックではない何かは、総勢何人くらいなんだい?」
「そうね、私は3人呼んだわ。カーナは?」
「香奈は7人。だけど、2人はまだ誘ってないよ。あとは、パパとママ、お兄ちゃんお姉ちゃん、魔王さんマルスさん入れて20人くらいかな。」
「そんなにいるのか…しかもほとんどはそっちの身内ときた。そんなんで、僕たち参加者が緊張しないわけがないと思うんだけど?」
「あ、考えてなかった。どうしようルーシャ。」
こういう時の頼れるルーシャ。
「お兄ちゃんお姉ちゃんって、入学祝いでいた人たちのことでしょ?ほとんどが大人なんだから、引率ということで別々にすれば大丈夫よ。きっと。」
「なるほど。それならきっと大丈夫だね。」
うんうん。大人は子供と別々にして、少し離れさせればオッケーってことだね。だけど、スレイン君は異論があるそう。
「いや、僕たちも一応貴族なんだけど?護衛もなしに、別の家の大人に囲まれるんだ。警戒しないわけがない。それに魔物が出るかも知れない。せめて従者を1人つけさせて頂きたいな。」
従者…ティアちゃんは庶民だから、そんなのいないと思うし…あ、お兄ちゃんお姉ちゃん達に頼めばいっか。
「わかった。それも知らせておかないとね。今夜まとめておくから、明日には決まると思うよ。」
「了解したよ。ちなみに、どこに行くんだい?」
「龍霊山だよ?」
「龍霊山!?最近、龍の子供が出たという噂じゃないか。大丈夫なのかい?」
「大丈夫!スレイン君、香奈にルーシャもいるし、メンバーにコーニス君、ティアちゃんもいるよ。」
「戦る気満々じゃないか…まぁいいさ。君もいることだし、その時になったら僕も全力で相手しよう。僕だと時間稼ぎにしかならないが。」
「そうかな?結構いけると思うよ?」
香奈の動きも見れてたんだし。
「まぁ本当に龍の子供がいたら対話してみましょうか。ブレスとかは全て異空間にとばせばいいし、龍の大人がいたら逃げればいいし。そのための従者でしょう?」
「まぁ、そうなんだけどね…」
まだ不服なのか、何か言いたそうなスレイン君は、途中で話を遮られます。
『ゴーン…ゴーン…』
チャイムです。次の時間はなんでしょう。ジュピスお姉ちゃんが入ってきました。
「まだ戻ってきていない人もいますね…予鈴も鳴らすようにアヴに伝えないと…しかし、校舎の至るところに時計があるのも事実。時間のマネージメントも出来ない人に、天龍学園の生徒たる資格は無いですね。さて、授業を始めましょうか。今回は家事です。まずは、洗濯から習いましょうか。」
家事の授業は生徒から批判があります。貴族が多い自分たちに家事は必要ないのでは?という意見です。しかし風龍お姉ちゃんは…
「従者、侍女達の仕事を自分で体験することで、その仕事の大変さを知り、大切にできるようになる。それに、いつか墜ちた時に自炊ができるようになるでしょ?」
という意見です。
「最初は、手で洗わないといけない物、洗濯機で洗える物を知りましょうか。ウールや綿、色落ちしやすい物は手で洗って、絹等は洗濯機で洗います。手で洗うときの注意点は強くやり過ぎないように。繊維がほつれたり切れたり、色が落ちたりするので、気を付けましょう。洗濯機でも注意点があります。色移りです。例えば、紺色の服を白い服と一緒に洗うと紺色の服が色落ちして白い服に移ります。ですので、色移りしやすい物の中で濃い色と薄い色、色移りしないものとで分けてから洗います。それからー」
と、色々とやります。他にもほつれた所を裁縫したり、服を作ったり。中等部にもなると、ドレスを作ったりもしてるそう。
「洗濯については以上です。では実践してみま―」
そこで、教室のドアがガラッと開けられました。ニーナさん達が戻ってきたようです。ニーナさんと取り巻き?の人達は当たり前、とでも言うような顔で堂々と席に戻ります。しかしジュピスお姉ちゃんが黙っていません。
「こんなことで授業を止めるのも馬鹿馬鹿しいですが、一応私の生徒なので聞きます。ニーナさん、どうして遅れたのですか?」
ジュピスお姉ちゃんが丁寧に聞きます。ですがニーナさんは心外そうな顔で答えました。
「理由は…そうね、この授業の必要性を感じないからだわ。」
今、理由を考えたというのがよくわかります。
「家事の授業は使用人の仕事を体験することでその仕事の大変さを感じ、使用人を大切にするという目的があります。それにいつ落ちぶれるかも分からない身で―」
「なんですって?」
ニーナさんがジュピスお姉ちゃんの話を途中で遮って、質問します。ジュピスお姉ちゃんはニーナさんが失礼なことをしたのに対し、冷静に質問に答えました。
「なんですってとは、何がですか?」
「いつ落ちぶれるかも分からないという所よ!お父様の商会が、倒産すると言うの!?」
しかし、ジュピスお姉ちゃんが冷静なのに対してニーナさんは怒りました。でも、あくまでも冷静なジュピスお姉ちゃん。
「倒産するとはいっていませんし、もしもの話です。まぁあえて言うなら礼儀もなっていないご子息の代ではその可能性も跳ね上がる事でしょう、と。」
「っ!それは私の事を言っているの!?」
……冷静ではなく煽っているだけのようでした。そしてさらに続けます。
「時間も守らない。必要だと思わない授業には出ない。それに礼儀もなっていないとしたら、いくら最初の入学試験で優秀な成績を納めていても今後、天龍学園にはふさわしい生徒にはならないと思いますが?そのような生徒は天龍学園には不要です。帰って貰ってもいいですよ?その時点で天龍学園にふさわしくない生徒という評価が下りますけど。貴女の大好きなお父様がどう思うかは天龍学園が責任を負うような事ではないですしね。」
ジュピスお姉ちゃん、思い切り授業を中断しています。しかしこれもなにか考えがあってのことでしょう。例えば…これからの授業をスムーズに進めるためにとか、ニーナさんとその他が真剣に授業を受けるようにとか、危険分子をあらかじめ排除しておくとか…もしかしたら他にも―
「貴女!覚悟しておきなさ―」
「あ、授業進めないと。洗濯についてあらかた学べましたね。では実践してみましょう。こちらに洗濯機があります。この洗濯機に、ここに積んである洗濯物を入れて―」
ニーナさんが顔に無数の血管が…浮かびそうな顔で、ジュピスお姉ちゃんを睨んでいます。ジュピスお姉ちゃんはというと…気にもしていないというか、気付いていない気が。考えがあっての、とか思いましたが、何も考えていなかった様子です。
すいません…予約投稿の日を間違えていて、本文確認のために開くまで気づきませんでした…




