魔法の授業2
作者のサブタイトルのネーミングセンスが…
「次に回復と支援魔法だが、使える奴はいるか?」
「私、得意です!」
「ほう、ならやってみろ。何ができる?」
「回復魔法と、筋力増強です。ちょっとだけですが、認識速度上昇もできます。」
「ほう、大したもんだ。そんじゃまずは回復魔法の使い方を説明する。回復魔法とは傷を負った部分の細胞を排除、消毒、そして傷口付近の細胞の活性化に加え複製、傷口を塞ぐということをやっている。だが欠損の回復は難しいと知っているな?一般常識だ。」
「はい。」
「そんじゃまずは実験だ。」
「実験ですか?なにで…」
『サッ』
いきなり魔王さんは風魔法で自分の腕を切りました。筋1本だけじゃなく、何本も。ちなみに血は垂れないように浮かせてあります。
「ひゃ!?」
「なにこれくらいでびびってんだ。回復魔法の使い手じゃこんなもん軽傷だろう?回復してみろ。」
「は、はい。」
魔王さんの傷口が塞がていきます。
「んじゃ、この塞がった傷口の細胞とその周りの細胞を見ていくぞ。」
また魔王さんが腕を切ります。痛くないのでしょうか。
「はい!」
「ん?なんだリカーナ。」
「痛くはないのですか?」
「痛覚遮断という神経系に働く魔法を常時使っているから問題ない。」
「そ、そうですか。すみません、話を遮ってしまって。」
神経にも直接働かせる魔法もあるのですね。
「とまぁこんな風に細胞の大きさは傷口の周りと傷を覆った細胞の方が何もしていない細胞よりも小さい。」
どこからあの顕微鏡と映写機は出て来たのでしょうか。
「だから欠損は治りにくい訳だな。そんじゃ実験してみようか。」
「「「え?」」」
嫌な予感が…
魔王さんが腕を切りました。血は宙に浮かせています。が、勢いよく噴出しているので浮く血の量は増えています。
「きゃああ!」
「だからこんくらい重症でもないだろう?」
明らかに重症としか言いようがないのですが…
「この欠損を回復魔法で治そうとしてみろ。」
「せ、先生の腕が…なおらなかったら…」
「ぐずぐずしてりゃ本当に治んなくなるぞ。」
「は、はい!」
目にわかるように肩から腕が延びてきますが…それでも数センチメートル。
「ご、ごめんなさい!私が動揺したばかりに!」
「あぁ、気にすんな。腕なんて戻せば戻る。」
「…え?嘘!?腕が元に戻ってる!」
腕なんて時を戻せば元に戻る、ですね。宙に浮かせていた血溜まりも無くなっています。時を戻すことによって体の中に入ったようですね。
「こうやって欠損すら戻せる方法もある。今のは時魔法だが、適性がなけりゃ使えないだろうし、時間が経つごとに難易度はあがる。国の近衛魔法騎士長でも10分が限界だろう。」
「それを、ただの教師風情が…」
本当です。ただの教師に時魔法で欠損を直すとか無理です。
「そんじゃ、ちょうどいいから時魔法について勉強するぞ。」
「は、はーい」
皆恐る恐るです。
「時魔法は食材の保存等によく使われる魔法だが、その実、実戦に使われると厄介だ。相手が一瞬で詰め寄ってきたと思ったらこっちの攻撃は当たらない。ギルダス帝国の剣聖も時魔法で自身の剣と避ける時の動きのスピードを変え、剣聖と呼ばれている。まぁ実力もあるがな。」
それでも3秒の差を作るのがせいぜいでしょうか。
「次は支援魔法だな。まずは筋力増強を自分にしてみようか。」
「はい。」
女子生徒は言われて筋力増強魔法を使っています。
「できました。」
「それじゃ、このブロックを割ってみろ。はい、これタオルな。」
「あ、はい。」
勢いよく構えて…
「ヤッ!」
バン!と勢いよくブロックが割れました。
「筋力増強魔法はこんな一般の女子(?)でも分厚いブロックを割れるくらいにまでなる。まぁ武術関係もあると思うから、もういっかい筋力増強魔法無しでやってみるか。」
「わかりました。」
魔王さんが魔法を使ったという事象だけを時魔法で戻して筋力増強魔法を使う前の状態にしました。
「エイッ!」
コン!とタオル補正されたブロックに勢いよくぶつかった音がしました。
「い、いたい…」
「その痛みも部分的に時魔法を使えばすぐに治る。まぁこれは高等技術だから無理せずできるよう励んでくれ。次は認識速度上昇魔法だったか。」
「あ、はい。」
「それじゃ実験をするぞ。まぁ実験しづらいから、俺を使ってやるが。」
「了解です。どうすればいいでしょうか。」
「まずは弓使える奴いるか?」
「あ、はい!」
ヴォンド君が勢いよく手を上げます。
「よし、そんじゃまぁこれを使ってくれ。」
魔王さんが空気中のいろいろな成分から弓をつくりました。
「…空間魔法…それも虚空から物を取り出す次元魔法まで…」
周りの人たちはあれが大地魔法だとはわからなかったみたいです。
「それは矢の代わりに魔法で作った氷を射ち出す弓だ。殺傷能力を無くすため、目標に当たる寸前で矢に組み込まれた術式が炎魔法を使い一気に水になる訓練用の弓でもある。」
「な、なるほど。」
ヴォンド君が弦を引き、氷の矢を放ちました。そして氷の矢は一瞬で水となり、魔王さんに当たりました。絶対わざとです。
「とまぁ魔法に特化した俺は物理攻撃に弱いが、認識速度上昇をすれば…」
物理攻撃に弱いなんて嘘です。ウォンド君はもう一度弦を引き、魔王さんに向けて射出。魔王さんは放たれた矢を目視してから首を傾けて避けました。
「矢なんか目視して避けれるようになるほどだ。近接戦闘が得意な奴はすこしでも覚えるといいが、支援魔法があった場合に馴れてしまうと痛い目を見ることになるぞ。」
支援魔法なんか使わなくても目視でよけれるよね魔王さん…
2018 2/8 「生物にはかけられないというのは基本だ」のセリフを修正しました。