マルスさんとの模擬戦
まずはいつもは1.5倍にしてる思考速度を10倍に。マルスさんの動きをしっかりみないと。
「お先、どうぞ。」
マルスさんが先攻を譲ってくれています。では、お言葉に甘えて。
脚に力を入れおもいっきり踏み切ってマルスさんの背後に。左足を軸にして反転し、その勢いで右足で蹴りを。しかしマルスさんは体の向きを変えず、背中に左腕をまわし親指で香奈の爪先を抑えました。
「嘘!?」
「嘘じゃないよ。ほら、速く動かないと。」
マルスさんが中指と親指でわっかを作り、バチン!と弾きました。いわゆるでこぴんですが、威力は香奈を弾くくらい強いです。
「っ!?」
空中で体制を立て直し、マルスさんの追撃に備えます…ですが、追撃は来ませんでした。手加減をしているようです。
「ほら、僕の体の向きを変えてごらん?」
「む。」
正直、むっときました。いいでしょう。思考速度10倍でも判断できないなら100倍に。ちなみに思考速度加速は時魔法とパパ直系の魔法の支援魔法掛け合わせの応用した魔法です。
「本気でいっていいのですよね?」
「えぇ、僕たちはカーナちゃんやルーシャちゃんの限界を引き伸ばすために理事長の父親に呼ばれたのですから。」
理事長の父親ってパパじゃないの!?
「じゃ、遠慮なく。行きます!」
今度は本気で脚に力を入れ、おもいっきり踏み切ります。障壁は魔王さんが貼っているので言葉通り遠慮はいりません。
今度はマルスさんの手前に右足だけで止まり、勢いで上空へ。そのまま前転かかと落とし。これも止められるということはわかっているので、この間に半神半龍の体(目)をフルに使ってマルスさんの隙を。しかし流石初代剣王で、おそらく肉弾戦では世界一なマルスさんに隙はなくうまくいきません。しかし小さなことも重なれば大きくなるというのも戦闘では分かりきったことで、香奈は止まりません。マルスさんに手のひらで止められ、その後、足を捕まれる前に反動で後転宙返り。着地した瞬間に踏み切って地面すれすれで脚を振り切ります。
「っ!?」
ですが、脚を振る前にマルスさんの手前で左足で止まり、反動で右回りまわし蹴り。ですがやっぱりとめられたので、止められた反動を使い今度は左回りまわし蹴りを牽制に後方へ。
「さっき、なんで途中で攻撃を変えたのかな?」
「だって、なんか危ない気がしたから。」
「危険察知能力は上々、と。」
…香奈の実力を計っているのですか。
「あ、あと、なんで蹴りしかしないのかな?」
「蹴りの方が強いのと、痛くならないので。」
「まぁ、合理的だけど、手数が減るのと、蹴るのと一緒に体の向きも変えないといけないからパンチも学んでいくというのが今後の課題かな。ほら、まわし蹴りや勢いを使った蹴りが多いでしょ?授業で拳が痛くならないパンチの方法も学んでいこうか。まだやる?奥の手を隠しているでしょ?」
「隠してはいますが、別にどうしても使いたくないわけじゃないです。」
「じゃ、使ってみようか。その威力も知りたい。」
「わかりました。では。」
『現情報保護&バックアップ…終了。全次元時空世界同一情報収集、完了。最適情報インプット…完了。』
「では、いきますね、マルスさん。」
「…一気に雰囲気が変わりましたね。」
私は早速動きます。まずはいつかと同じように本気で踏み切ってマルスさんの背後へ。左足を軸にして止まり、その反動で反転して蹴りを。
「同じ手順ですか…なっ!?」
さっきと同じように止められることはわかりきっているので反転し、蹴った勢いをそのまま使いマルスさんの左腕を弾いて体を回転。
「まわし蹴りですね。…っ!?」
その回転の勢いで左踵蹴り。というのはフェイクで、防御にまわったマルスさんの右手を左の足を使って踏み台にしマルスさんの正面へ移動して右拳を振りかぶって思いっきり降りろす。マルスさんは弾かれた左腕を即座に戻し、私の右拳を迎撃するように攻撃線上に。ですが、これもフェイントで振り下ろした拳はマルスさんのぎりぎり手前をマルスさんの左腕を巻き込むように通過。必然的に私は空中前転の形になり、踵落としを。マルスさんもとっさに体をずらして回避しようとしますが、巻き込んだ左腕を私は掴んで離していないので、足をずらさないと避けられません。そして足をずらすということは少しでも体の向きが変わると言うこと。しかしまだ勝利は確信してはいけません。マルスさんの気配が一気に変わります。
「あぁ、俺を本気にさせた相手はいつぶりだっけか。」
この状態を私は識っています。マルスさんは頭をずらして踵を回避。しかし頭だけをずらしても胸、腹、と、脚が動かないかぎり、避けきれない部分が。しかしマルスさんはずらした頭をまた前にし、胸をずらして私の踵が胸を通過するとマルスさんはまた胸を前にずらして腹を後ろに。体をウェーブにしてやり過ごしたのですか。しかしその反応速度も知っています。身体中のバネを使い空中で回転。左回りで右フックを。これにはマルスさんにも予想外だったのか、しかし右手を素早く引き戻して迎撃されてしまいました。流石マルス師匠、です。マルスさんは迎撃した右手をそのまま握り、私の手を掴んで投げ飛ばします。でもこのままやられる私ではなく、何年もの組み手の中で編み出した奥義でマルスさん特効の技を使います。
「きゃっ、マルスさんのロリコン!ペドフィリア!変態!セクハラ!」
「っ!?」
いつも紳士なマルスさんはスカッと力が抜け、私は着地。隙は逃さず、トンッとマルスさんの体を押します。とっさのことで、マルスさんは体制を崩しました。
「勝った!」
「いやおかしいでしょう!?」
「おいおいマルス、言い訳か?」
「いや言い訳ですか、これ!?」
「動揺した方が悪いのです。」
「っと、いまの模擬戦の時間は2分な。」
「まだそんなしか経っていないのですね。」
「私はもっと長く感じました。」
思考速度100倍だし。そろそろ戻ろうかな。
「それじゃ、そろそろ戻りますね。ではまた、マルスさん。」
「えぇ、また?」
「ほう、使ったのか。またな。」
ふぅ、香奈はマルスさんに勝てたようです。
「カーナちゃん、今のは?」
「秘密です♪」
「そうですか…やっぱり雰囲気ががらりと変わりましたね。子供から大人へ、大人から子供へ、というところでしょうか。」
そういうマルスさんも変わりっぷりが凄かったのですけどね。
「とまぁ、こんなもんだ。分かったか?」
「先生!」
「あん?」
「何をしていたのか分かりませんでした!」
「そりゃな。今のをしろとは言わないが、まぁ目指せ。」
「人間には無理だと思います!」
それ、香奈達が人間じゃないっていってるんじゃないのかな?
「私にも何をしていたのか分かりませんでしたわ。何かのトリックではないですの?」
「では説明しますと、カーナちゃんは踏み込んで蹴って弾かれて踏み込んで蹴って避けて踏み込んで蹴って蹴るついでに避けて会話。そして踏み込んで蹴りながら移動し、移動しながら蹴って、また蹴りながら移動、そして移動しながら殴ろうとしてわざと外し蹴ろうとしたけど避けられたから体を捻って殴ろうとしたが止められ投げられそうになったけど口撃が通り、隙ができた僕を押して体制を変えたというわけです。」
「意味がわかりません!」
香奈も分からなかったよ…
「さて、授業を進めるから各学科に別れるように。まずは俺らが直々に実力をみてアドバイスをしてやる。それじゃ、動け。」
「「はい!」」
香奈は体法の方に。
「それでは体法の授業を始めます。まずは1列に並んでください。順番に組み手をします。順番は問いません。」
香奈は…
「あ、カーナちゃんは並ばなくて結構ですよ。」
それって仲間外れだよね!?




