初の実技授業
「カーナ、更衣室にいきましょ?」
「あ、うん。でも更衣室ってどこだっけ。」
「こっちよ。」
「はーい。」
流石ルーシャ。よく覚えてます。
「そういえばカーナ、聞いたわよ。お父さんのこと。」
「あ、うん。」
「私、魔王様の娘なのね…子孫って聞いた時よりも、胸が高ぶっているわ。」
「そう。どう?お父さんが魔王さんって。」
「あまり実感がわかなかったけど、家でも魔法について勉強ができるって、いいことね。それに、ラピスさんが勇者、ということも聞いたわよ。」
「そうなの。高位種族になっちゃったパパは、寿命がなくなっちゃったそうで…」
最高位龍種のことは言っていないのですね。
「魔王様…お父さんも、不老ってきいたわ。時魔法で細胞の老化を防いでるついでに若返らせてるから、老衰はないって。」
「そうなんだよね~香菜の方もパパが高位だから、香菜もあんまり老いないってきいたよ。」
「それは羨ましいわ。」
「ルーシャも細胞の老化を遅くすれば?」
「ううん、育ち盛りだから、逆効果になるってお父さんがいってたの。だから18歳くらいで遅くするか、若がえさせるわ。それまでに、特訓をしないと。記憶も戻さないように、細胞を若がえさせる練習。」
「そうだね~あ、ここ?」
「えぇ、ここよ。皆もこっちに向かってくるでしょう?」
「そうだね。入ろっか。」
中には下駄箱と同じような刻印が刻んであるロッカーがたくさんあります。
「ロッカーを漁る輩も出てくるから、毎年毎年ロッカーを変えているそうよ。流石、世界最高峰の学園ね。」
「そだねー。何円かかってるか…」
「えん?」
「う、ううん。ウェイズ。」
「そうね。これだけの精度の刻印は安くないどころか高いわ。それを12人1列が6つで1クラスが4つの合計288個。財閥や貴族等からの寄付金で賄っているようね。」
「1財閥でどれくらいの寄付金が来てるんだろう…」
「私の家は5000000ウェイズくらいしたそうよ。」
「へぇ~……!?」
1ウェイズが日本円で100円くらいだから…5億!?凄いなぁ。
※実はブラックウィステリア家もフェルオス家に負けず劣らず寄付していたりします。
「それはそうと、私達のロッカーはすぐ近くのはずよ。試験での成績順、今の席順になっているはずだから。」
「あ、じゃぁここだね。」
あ、他のA組生徒も入ってきました。
「あら、成り上がりが1番のようですわ。この授業で、貴方達の実力が知れるというもの。せいぜい小細工でも考えていればいいのですわ。」
えぇ~。さっき、もじもじしてたじゃん。もしかして、魔王さんと勇者の子孫?っておもってたんじゃないの?開き直っちゃったのかな。
「カーナ、どうする?全力でやる?」
「ううん。香菜達が全力でやっても理解できないとおもう。」
※なかなかに辛辣であった。
「そう…でも、魔王様…お父さん相手に手を抜くなんて出来ないでしょ?」
「そうだね…うーん、難しいなぁ。いっか。首席だってことを思い知ってもらおっか。」
「そうね。」
よし、着替えよう!体操服は、特殊な素材でできています。素材にはトーム(巨大ワームのこと)の素材を使っていて、動きやすいことはもちろん、耐水防塵や汗も乾きやすくしたりします。それに加え、耐熱(+-どっちも)もあるのでちょっとした戦闘服にもなります。
「じゃ、実技教室にいきましょうか。」
「うん。」
実技教室に入ると、魔王さんとマルスさんがいました。
「お、来ましたね。」
「おう、待ってたぜ。今日は全力で来るのか?」
「うん。そうしようかとおもうよ。クラスで裏口入学!とか成り上がり!とか言われてるから。」
「ほう、実力を示すってわけか。いいぜ。ルーシャも昨日みたいに本気でこいよ?」
「当然。」
…昨日みたいに?1回手合わせでもしたのかな。
「お、入ってきた入ってきた。そんじゃ、実技授業を始めるぞ。担当は入学式でも言った通り、ディオスとマルスだ。質問はあるか?」
「はい!魔法の授業と体法の授業、先にどっちからやるのですか?」
「いい質問だ。どっちから、という質問についてだが、正解はどっちも、だ。魔法学科と体法学科に別れて体法学科は先に体法から、魔法学科は先に魔法からだ。それじゃ、別れろ。」
「はい。」
ルーシャとは離れて授業かな。
「それじゃ、まずは手本を見せる。ルーシャ、リカーナ、出てこい。」
あ、手本を本気でやれってことかな?
「「はい。」」
「それじゃ、まずはルーシャから。ルーシャ、指先から炎を出してくれ。」
「わかりました。」
といって、ルーシャは無詠唱で炎を出します。
「とまぁこんな風に、無詠唱で魔法が使えるってんのが今年の目標だ。」
えっ、無詠唱なんてハードル高すぎ!!香菜はできるけど、常人にはハードル高いよ!
「はい!無詠唱は、どうやっているのですか?」
「無詠唱は、頭ん中で詠唱してるのがほとんどだ。だが、それじゃ発動が遅れる。だから魔法をひたすら使って魔法を使う感覚を覚えるしかない。そして覚えた感覚で、力加減と現象、軌道を作る。」
「それでは練習時に魔力切れが起こります!」
「大丈夫だ。俺が時魔法で魔法器官を戻してやるから問題ない。」
「えっ。」
えっ、それって地獄の始まりなんじゃ…
「他に質問はあるか?」
「はい!体法は何をするのでしょうか。」
「あぁ、それについては今から魔法も体法も模擬戦をするからみてろ。んじゃ、ルーシャ、位置につけ。」
「わかりました。」
どうなるのかな…
「では、用意!始め!!」
マルスさんの合図で魔王さんとルーシャの模擬戦が始まりました。まずルーシャが牽制の火焔弾をうち、魔王さんが避けれる全方位に少し打ち出すのを遅れさせた小さい火炎弾を撃ちました。魔王さんは牽制の火焔弾を火炎弾で撃ち落とし、そのままルーシャの方へ。しかしルーシャもそれを予想していたのか、火焔弾の後ろにもう1つ火炎弾を撃っていました。それを魔王さんは空間魔法で異次元へ。魔王さんがルーシャに追撃をしようとしたらルーシャはもうそこには居なく、運動力魔法+重力魔法で天井へ。天井から大量の水を魔王さんに撃ちました。魔王さんは転移魔法で上空へ転移。しかし予測していたのか、予知していたのか。そこに火焔弾を撃ったルーシャ。それを手で打ち落とす魔王さん。しかし下には大量の水、そこに焔を当てたら水蒸気爆発が…激しい爆音とともに、視界いっぱいに広がる水蒸気。水蒸気で視界が悪くなっても模擬戦(?)は続いています。水蒸気が晴れると…
「…降参。」
「っとまぁこんなもんだ。中等部までに、これくらいまでとは言わないが、無詠唱でできるように。」
「…」
「あん?反応薄くないか?」
いや、たぶん何をしていたのか分からなかったんだとおもう…
「あの…何をしていたのか…」
「あぁ、そういうことか。火を撃って撃って水かけて火撃ったら視界が悪くなったもんで空間魔法で相手がどこにいるか確認して転移して首を取っただけだ。」
「は、ハッタリよ!ただの教師に転移なんてできるわけないわ!」
あ、ニーナさんだ。
「お前がそう思うんならそうなんだろう。じゃ、せいぜいハッタリだと思い込んでサボってりゃいいさ。」
「ふ、ふん!いいわ。いつかそのハッタリを暴いて差し上げます。」
「それいっちゃうと魔法がハッタリになるんだけどな…ということで魔法の模擬戦は以上だ。次は体法の模擬戦をリカーナにやってもらう。マルス、リカーナ。」
「はーい。」
「よろしくお願いします。リカーナちゃん。」
「よろしくお願いします。」
「それじゃ、よーい、始め!」
まずは、格上の相手だから牽制ついでに隙を…ないよね。だったら実力を…ってマルスさんが本気出しちゃいけないか。なら特効しかないよね~。