スメルノゾム
「痛いですユウお姉様、割れてしまいますう!」
必死にユウ姉の右腕にタップして解放された
「ちょっと、どうしたのよその手は!」
俺の両手は皮が焼け、真っ赤に火傷している
待ってなさいとキッチンに向かうユウ姉
俺は先にセツを冷やしてくれと頼んだ
「いったい何があったの?」」
俺にも何があったのかさっぱりわからないのだ
「脳内で会話してたら、セツがいきなり叫び出したんだけど」
心配になってリビングに来たらセツが倒れてたんだ
セツはいま、濡れたバスタオルに包まれリビングの床に寝ている
冷やしてくれとユウ姉に頼むと
大量のバスタオルを抱え戻ってきた
バスタオルをセツにかぶせ、そこに水をぶっかけたのだ
いまは落ち着いた様子で、とりあえず一安心と言ったところだろう
「やっぱいざというときは、ユウ姉は頼りになるな」
ユウ姉に火傷を手当してもらいながらそんなことを話していると
「私が氷水用意したんですよ」
ユウ姉に対抗意識を燃やしながらセツに水をかけ続けているリュウ
「リュウもチコちゃんもありがとね」
チコちゃんはセツの周りを拭いてくれている
サユリはまだ寝ているのだろうか
自力で立ち上がることもできないほど力を消耗してるサユリが心配になる
「のん坊、わかる範囲だけで良いから説明してくれない?」
ユウ姉が説明を求めてきたのだが、チコちゃんの前で説明できるわけがない
何がきっかけで箍が外れるかわからないのだ
「ごめんユウ姉、いまはちょっと」
「そう」
悲しい目をする
が、すぐにいつものユウ姉に戻って
「じゃあとりあえず着替えちゃいましょうか」
などと怪しい目をするのだ!
俺の体は脂汗でびしょ濡れになったスウェットがセツの熱で蒸発して異臭を放っている
スメルノゾムとは俺のことだ!
ユウ姉が俺を抱き上げ自室に運ぶ
俺の部屋の光景を見たユウ姉から、一瞬、負のオーラを感じたのだが気のせいだろう
ユウ姉が俺のベッドに近付く
ベッドの上には、俺に抱きつかれたことで服が乱れ、汗で濡れたサユリが気持ちよさそうに寝ていた
俺を抱きしめる腕の力が強くなる
バイスを締めるが如く、徐々に強く、強く、強くなって…
「ユウお姉様くるしい、死ぬ、死んでしまいますう!」




