クレイジーワイバーン
「で、拙者は何をすれば良いのでござる?」
問題はそこなんだが
「サユリ、貴女にワイバーンを倒してほしい」
いや、無理だろ
どう考えてもサユリにワイバーンは倒せない
ゲームの中でなら可能だと思うが、サユリのタルパはオタク能力として認識されたものだ
「だからこれを使う」
セツがサユリに手渡したのは腕時計のような物だった
「これは時計でござるか?」
この時計を使えばサユリはアニメ、ゲーム、漫画等からその力を借りることが出来るらしい
なにそのチートアイテム
「待ってくれセツ、冥界に行くには死ななくちゃならないんだろ?」
俺はサユリを死なせたくない
「何か勘違いしてるようね」
タルパとは人工未知霊体のことで、死ななくても冥界に入れる
あまりにも長く一緒に居すぎたせいで、俺はみんなのことを普通の人間のように思っていた
セツはかなり不思議な存在だが、チコちゃん、サユリ、リュウ、ユウ姉は普通の女の子と変わらない
「わかったでござるよセツ氏、チコりん氏のため、拙者が一肌脱ぐでござる」
「いいのか?」
「望氏のためなら拙者は無敵でござるよ」
また泣きそうになってしまう
「ありがとう」
本当に心からありがとうといった
サユリと一緒に冥界に来た、のだが…
何やら前回来たときと少し様子が違う
雑魚の姿がないのだ
(セツ、なんで雑魚がいないんだ?)
(不明)
セツにもわからないようだな
「拙者、なんだか怖いでござるよ」
おいおい頼むぜサユリ氏、末那識を解放してるといっても、俺は感覚が研ぎ澄まされているだけだ
銀河を燃やしても己の体内に宿る無限エネルギーとやらは実感できていない
「サユリまって」
俺はただならぬ気配を感じ、サユリを静止した
遠くから何か巨大なパワーを感じる
たぶんこの先にワイバーンが居る
気配を消しながら近付いて行くと、ドッカンドッカン音が聞こえてきた
慎重に気配を殺し階段を上る
「うっそだろおい…」
俺とサユリの目に映ったソレは、雑魚を笑いながら血祭りにするワイバーンの姿だった




