親父の遺書
さて、どうしたものか
部屋を出てからしばらく状況を整理していた
親父が秘密にしていた部屋
そこにあったのはレトロな機械とメイド抱きまくら
ちょっとした博物館レベルの品がそこに存在していた
まさか俺の親父がオタクだったなんて…
オタクというのはその昔
日本がアニメ先進国だったころに栄えていた文化
中国がその勢力を増し、日本のアニメ文化は衰退していた
中国で爆発的な人気になり、日本のアニメ文化は中国に吸収されてしまう
その状況を危惧した政府は、日本アニメを保護しようとしたが、時すでに遅し
日本のアニメ文化は崩壊してしまった
現代、世界のアニメや漫画の8割は中国が占めている
残り2割は日本とアメリカが辛うじて維持しているという感じなのだ
日本の危機管理能力の無さには呆れるしかない
今ではロボット産業だけが世界に誇れる技術となっていた
しかし、これも時間の問題だろう
まあ、そんな事情はおいといてだ
今は俺の命がかかっているのである
そう、飯を確保しなければならないのだよ!
落ち着きを取り戻し、もう一度部屋の扉を開けた
やはり一番目につくのはメイド抱きまくら
冷静に部屋を見渡すと、その広さは12畳くらいだろうか
縦に長い部屋の奥には、これまたレトロなモニターが存在している
左右の棚には多数の書籍や、現代では存在しない古いディスクが綺麗に整理されていた
すべてナノチップ一枚にデータ化して収めれば管理も楽だろうと思ったのは言うまでもない
ひとまず部屋の一番奥にあるソファに座る
目の前のテーブルには手紙が置かれていた
「いまどき、紙の手紙とは珍しい」
良く見ると親父が俺に宛てた遺書のような物だった
内容はこうだ
親愛なる息子へ
お前がこれを読んでいるということは、お父さんはもうこの世にはいないだろう
この部屋を見て驚いてる姿が目に浮かぶよ
「すまん、驚くだろうが、親父まだ生きてるよ!」
これらの品は、お父さんとその有志たちが必死に守った証の品だ
お父さんが若いころ、これらのアイテムは、すべてデータ化されてしまった
国はデータ化することで制限を設けた
その結果、これらの知識を得るために高い代償を支払うことになる
日本政府はこれらのオタク文化を悪だと決めつけていたのだ
アニメ業界は劣悪な環境に置かれ、優秀な人材は海外に流れてしまった
歴史の教科書に載っている綺麗事ばかりではないのだよ
そこでお前に頼みがある
これらの品を、お前が受け継いで守ってくれないだろうか?
お前の性格は理解しているつもりだ、いきなりこんなことを言われてもお前は拒否するだろう
だがお前に拒否権はない!
お前の体にはすでにオタクの血が流れている
これらの品を傷つけることは、お前の死を意味すると思え!
お父さんはお前の中にある、オタクの血を信じているよ
オタクを、そして世界を守れるのはお前だけだ
PS.この手紙は読み終えたあと爆発します
ちょっまてよ!
俺はダッシュで部屋から逃げ出した