そのタオルの下には
風呂場で頭を洗いながら泣いた
なぜだ、タルパは従者に敵意を向けないんじゃなかったのか?
リュウは俺が近付いても何も言わなかった
むしろ俺が差し出した卵焼きを美味しそうに食べていた
汚いと思っている相手から差し出された物を美味しそうに食べるわけがない
つまりリュウは俺を汚いと思ってないはず
親父のタルパだからか?
可能性はそれしかない
落ち込んでいると風呂の扉が開いた
「さきほどは言い過ぎました」
チコちゃんが入ってきた!
咄嗟に前を隠す
「あだだだ大丈夫、気にしてないから!」
鏡に映るチコちゃんの生足
見てはいけない!
チコちゃんはお詫びに背中を流すという
なんのご褒美ですか!
いやいや流石にそれはやばいですヨ
俺は頭から洗うタイプだ
まだ体を洗っていない俺は、湯船にダイブすることもできない
背後に迫るチコちゃんの気配
「大丈夫です、まかせてください」
何が大丈夫でまかせろというのか
背中に伝わるスポンジの感触
びっくりして目を開けてしまった
鏡に映ったのは、体にタオルを巻いたチコちゃんの可愛い姿
咄嗟に立ち上がってしまう
「あっ」
チコちゃんの声に振り向くとそこには
タオルがはだけ、青いワンピース水着姿のチコちゃんが尻もちをついていた
「水着…だと」
思わず呟く
チコちゃんは起き上がり俺を椅子に座らせる
ふぅ
やれやれ、水着なら安心だ
ってそんなわけあるかーい!
俺の雄叫びは家の外まで響いていた
どうしてこうなった!
俺はチコちゃんに体を洗ってもらい、今は湯船に浸かっている
隣にはチコちゃん
場の空気に耐えきれずチコちゃんに話しかける
「俺汚くてごめんね、これからはちゃんと毎日風呂に入るからさ」
するとチコちゃんは笑って
「いえ、大丈夫です」
ただ、キッチンは清潔な場所なのでなるべく綺麗にしてください
なるほど承知しました
チコちゃんに叱られてしまった
チコちゃんにとってキッチンは聖域なのかもしれない
「しかし何故こんなことを?」
「昔見たアニメでこうすると男の人は喜ぶと言っていたので」
どこでそんな知識を手に入れたんだこの子は
親父だな!
俺は直感した
あの変態ロリコン親父め!
親父のせいで俺はいま、大変嬉しい状況におかれていますよ!
そういえば水着はどうしたのか?
うちには女性用の水着なんてないぞ
学校の物とは形の違う水着に興味が湧く
しかしそれを聞くのは変態じゃないか
コヨリは風呂に入るとき以外いつも同じ、くノ一の服だった
風呂では裸だったのだが
タルパにはまだまだ俺の知らない謎があるようだ
そういえばコヨリが着替える所を見たことがないな
いかん、これ以上コヨリのことを考えたら俺のあれがあれしてしまう
チコちゃんが先に上がる
それを追うように俺も湯船から上がった
脱衣所で体を拭きながらチコちゃんを観察する
別に裸が見たいわけではない
タルパの着替えの謎を解明したいだけだ
それにしても
「見事なまでのまな板」
「まな板?」
しまった!声に出ていた!?
次の瞬間、水着姿のチコちゃんが一瞬でいつもの服に戻ったのだ
まじ一瞬、1フレーム足りとも肌は見えなかった
すごいぞタルパ!
俺はタルパ七不思議の二つ目を手に入れた




