大切な木箱
やばい、リビングに未知の何かが居る
幽霊に似たその感覚
暗闇の中に何かが居るように感じる、あの感覚だ
リビングに明かりは灯っている
それゆえ、恐怖心はそれほどでもない
タルパなら見えるはずだ
俺は意識を集中する
コヨリ…の感じではない
もっと小さな、小動物のような
リビングに明かりが灯った瞬間に、一瞬見えたそれを思い浮かべる
キッチンか
リビングの奥にあるキッチンに何かを感じた
近付こうとした瞬間
ズズッとキッチンから何かの音がする
俺はキッチンに腕を伸ばし明かりを灯す
キッチンの横にある棚、そこに保管されている木箱が動いていた
こえええええええええええええええええええええええ
なんだそれなんだそれなんだそれ!
ネズミ?
え、まさかG…
リビングからダッシュで逃げ出した
ひとまず自分の部屋に入り鍵をかける
ネットに繋ぎ検索
「木箱 動く」
検索結果:トンネル 迷宮 木馬 etc
なんなんだよもうこえいよまじ勘弁してくださいよ
あの部屋に行くにはリビングを通らなければいけない
しかしキッチンには謎の動く箱
親父が絶対触るなとキツく言っていたあの箱が動いてるのだ
まじなんなん、その昔、親父が悪魔を封印した箱とかそんなん?
あんな箱、触るなとか言われる前に興味すらなかったよ!
俺は普段こんなにビビリではない
リビングで感じた感覚が尋常じゃなかったんだ
目を開けた瞬間、野球ボールが目の前に迫ってきたらどうだろう
咄嗟に動ける人なんて少ないはず
ほとんどの場合、目を瞑って縮こまるだろう
それくらいの感覚に襲われたとイメージしてくれ
とりあえずあの箱が何なのか親父に聞こう
俺は親父に通信を送った
「もしもし親父」
「望か、ちゃんと家に着いたか?」
とりあえず無事に帰ってこれたことを伝え、何かが居ると話そうとしたとき
家の中に何かが居るなんて言ったら心配するだろうと思い、箱のことだけ聞いてみた
「親父が大事にしてる箱あるじゃん、あれってなんなのさ」
「箱ってどの箱のことだ?」
あんな箱が何個もあるのかよ
「いやキッチンの棚にあるやつ」
すると親父は
「あー、あれはコーヒー作る機械だ、見ても良いが壊さんでくれよ」
「は?」
通信を繋げたままキッチンに向かう
「親父見えてるかー」
見えてるぞー、と
俺は恐る恐る木箱に近付き親父にモニタリングして見せる
「これなんだけどさ」
俺が言い難そうにしていると、何かを察したのか親父は口調を荒げ
「まさか壊したって言うんじゃないだろうなおい」
「いやいや触ってすらないからね!」
とにかくなぜか勝手にズズっと動いたことを伝えてみる
すると
「おかしいな、それ電動じゃないから動くわけないぞ」
めっちゃ鳥肌立ったしー




