チコちゃんの秘伝
みんなにフルボッコにされたのは言うまでもないのだが
チコちゃんがかばってくれたお陰で、なんとか致命傷で済んだ
話し合いの結果、いつも俺がみんなにされてた赤ちゃん抱っこではなく、お姫様抱っこなら許可すると言われた
そんなわけで俺はチコちゃんをお姫様抱っこしている
「高いですね」
廊下を歩いているとチコちゃんが中庭を眺めながらそんなことをいう
チコちゃんはロリータだ、身長はたぶん140センチくらいしかない
俺もそんなに身長が高いほうではないが170あるかないかだろう
まだ成長期は残しているがね!
高校卒業するころには180くらいまで育ちたいものだな
AIに管理された世界で肉体はあまり重要視されないのだが、サユリに負けたくないだけだ
さて、ついにキッチンまで来てしまった
(セツ、大丈夫だよな?)
最終確認だ、カオリを信じていないわけではない
(大丈夫、問題ない)
俺は先の件でセツを信じてあげられなかったのを後悔している
今ならセツの言うことはなんでも信じるだろう
キッチンに立つ俺とチコちゃんの様子を、リビングでみんなが見守っている
「望さん、わたしにコーヒーを淹れてください」
約束です!
瞳をリンリンさせながらチコちゃんが迫ってきた!
「もちろん良いよ」
気合を入れてコーヒーを作るとしよう
末那識を解放してるいまの俺には、一ミクロン足りとも隙きはない
意識を集中させ、五感をフルに使い、阿頼耶識を表面化させた完璧な一杯のコーヒーを作り上げた
それを一口飲んでチコちゃんがいう
「上出来ですが、まだまだですね」
嘘だろ?
バリスタの前では、俺の阿頼耶識コーヒーですら敵わないとでも言うのか!
「な、何か、間違っているのかな?」
恐る恐るチコちゃんに聞く
「わたしが作るのを良く見ててください」
チコちゃんがコーヒーを作ってくれるようだ
末那識を解放し、意識を集中させ、五感全体を使い観察する
フィルターに粉を入れて平にならす
粉の中心に線を引くようにお湯をゆっくり入れる
「縁に注がないように、粉が浮かないように注ぐのがコツです」
サーバーにコーヒーが落ちない極限まで、お湯を浸透させた粉を30秒ほど置きなじませる
浸透した粉の中心に円を書くようにお湯をゆっくり注ぐ
ジャスト45秒でサーバーにポタポタとコーヒーが落ち始める
コーヒーが落ち始めたら外側にもお湯を注いでいく
「ここで絶対に、フィルターにお湯をかけてはいけません」
雑味が下に落ちてしまいます
なるほど!粉の外側もフィルターの役目を持たせるのか!
しばらくすると粉フィルターが陥落し、フィルターの下から徐々にコーヒーが浸透してきた
「中心からクリーミーな泡が出て来るのが理想です」
クリーミーな泡がふっくらと中心に膨らんだころを見計らい、お湯の量を徐々に増やしていく
「ここで濃さを調整するので、早く入れすぎると雑味が落ちてしまいます」
一杯分のコーヒーを抽出し、すばやくドリッパーを外せばチコちゃん秘伝のコーヒーの完成である




