コヨリ
こんにちは
私はコヨリ、よろしくね、あなたのお名前は?
んー、聞こえてないのかな
そこに映るのは、この家に引っ越してきたばかりのコヨリの姿
俺はそれに胸が締め付けられ目が離せなくなる
ねえ、どうしてずっとそこに居るの?
んー、のぞむの話しを聞いてくれる?
のぞむは新しい学校でも一番なのよ、勉強もスポーツも
でも毎日、友達に殴られるの、片親のくせに生意気だって
のぞむは毎日やられっぱなし、だから私は言ったの
男の子なら戦わないとって、でも誰よりも優しいから
のぞむは怪我をさせたらお金かかるからって我慢してるのよ
おかしいでしょ、自分のほうが腕の骨折れたり、肋骨折れたりしてるのにね
お金かかるからって我慢して隠して、折れた手でお茶碗持ってご飯食べて
私はのぞむの折れた手を支えてあげるの
のぞむは怒ると強いのよ
カナエが泥だらけで泣いて帰ってきて、のぞむがお風呂に入れてあげて
学校に行ったらクラスのみんながのぞむを見て笑うの
お前の妹くっさいなーって
のぞむが怒って全員やっつけたんだけどね、かっこよかったのよ
何人くらい病院に送ったのかなー
そのあと病院に行った子の親が家に来て、のぞむのパパを怒るの、責任取れ、慰謝料払えって
のぞむは部屋で泣きながら私に言うの、カナエに手を出したのはあいつらだって
私はそんなのぞむに、のぞむは悪くないよって優しく頭をなでるだけ
カナエは臭くないよ?毎日お風呂に入ってるし
のぞむは最近ちょっと臭いけど、私はのぞむが大好きだから平気
またのぞむはあの世界に行ってしまうし、暇だなー
いまはあの世界で鍛冶師になったんだって
のぞむが武器を創るとみんなが喜んでくれるのよ
小さい頃は、いつも私が守っていたのにね
のぞむのお母さんは酷い人でね、いつものぞむとカナエを叩くの
でもカナエが叩かれてると、のぞむが絶対に助けてくれるのよ
私のお願いなら、なんでも聞いてくれる
だから私は一度だけのぞむにお願いしたの、カナエを守ってあげてって
のぞむが私のことをコヨミって呼ぶ
もう新しいコヨリが来ちゃったのかなー
私は死んでるから、次はどこに行くのかわからない
あなたは大丈夫よ、カナエに似てるから
きっと私のときのように、のぞむがあなたを助けてくれるわ
だから約束ね…
それが終わると、俺は顔中ぐしゃぐしゃにして泣いていた
俺の恥ずかしい過去を知ったみんなは、こんな俺をどう思っているんだろう
学校で虐められていたことや、引きこもってコヨリを邪険に扱ったこと
そして母親のDVのこと
顔を上げた俺に、みんなは優しく微笑みながら、辛かったね、今度は私達が守るからって抱きしめてくれる
タルパは道具じゃない、いまなら親父の言葉の意味がわかるよ、俺はみんなのことを本当に好きになって良かった
だから俺は、二度とコヨリと同じ過ちは繰り返さないと決めたんだ
タルパという不安定な存在が、この世界から消えてしまわないうちに、伝えよう
「俺は、みんなのことを本当に、心から愛している」




