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翌朝・・・違和感しかなかった。ユフィリアが目を覚ますと動けない。逞しい腕が拘束してる。自分の寝相はいい方のはず・・・振り返るところか、目の前にあるのは胸板・・・酒は飲んでないし、夢見心地で寝たはず。
「・・・はよ。」
「おはようございます・・・」
「二度寝させて・・・やっとの休みだから・・・帰りたかったら人にいえば送るし・・・」
帰っていいと言ってる割に抱き寄せる力が強いのですが!?ユフィリアはこの矛盾のベッタベタな朝はティアナの寝起きの悪さで実体験済だった。本当に何もする気なくてくっつきたいだけなのだろう。
「えと、私に出来ることありますか?」
「このまま起きるまで・・・」
スヤァ。この甘え方は血筋なのだろうか。自分は目を覚ましているし・・・と、上着だけを肩にかけて身体を起こす。膝を貸すくらいで許されるなら・・・と、身体の位置をいい感じにして隈がうっすらと見える貴公子の寝顔を堪能することにした。
昼近くまでリヒトはぐうすかと眠り、ユフィリアはどうしたものかなぁ。と、リヒトの髪をなでていつ帰るか考えていた。
ティアナ様が帰ってこれるなら帰ってきたらいいよーと、意味深なことを言っていたけど、こういうことを見越してたってこと!?怖い、怖すぎる。
「寝たら良かったのに、惰眠を貪るって大切だぞ。惰眠貪る窓際になりてぇ。」
「ぇ、えとリヒト様?」
欠伸をしながらユフィリアの髪を整えたりする。イヤイヤとかではなく慣れすぎていて怖い。
「リヒト様、わ、私帰ります。恋人との逢瀬とか・・・」
「へ?俺に恋人?そんな噂あんの?男色なら聞いたことあるけど。」
女性に無関心すぎて男色の噂はかなりある。浮ついた噂が全くないからだ。本人もそれで女性が近寄らないならいいや。と、適当に放置していたらしい。
「違うのですか?」
「俺の好みって人とズレてるし。ティナにも言ってないしなぁ。ティナの差金かと思ったけど、違うっぽいし、どうせティナが先につまみ食いしてるんだろうけど。」
「!!!!リヒト様の好みですか?」
「そりゃ、男だから好みくらいあるし。ティナの差金なら怖いなぁ、あの娘。何か俺の事で言われてる?」
「帰ってこれるなら帰ってきてー。と、帰ってこれないこと前提でした。」
リヒトはアイツに好みバレてたか。と、煙草を咥えて火を付けるのだが、窓を開けた。
「煙草嗜まれるのですね。」
「最近バカ2号のせいでストレスヤバイから。寝れないし、酒飲めないし、飯まずいし、仕事減らないし。えと、俺の好みだっけ、絶対怒るから言わねー。ティナに聞け。」
「怒りません。それに人の好みなんて人それぞれですし・・・」
「・・・ふぅん。まぁ、今日は夕食くらい食って帰れ。ティナに聞いてからにしてくれ。アイツに動きにくいフリフリレースふんだんに使った純白ドレスで城へ討ち入りさせてやる。」
何に怒ってるのか分からないが、リヒトはこれが良いかなぁ。と、煙草咥えたまま帰りのドレスと靴を用意した。高そう。というか、絶対に高い!!!
お茶やご飯をご馳走になって館に送って貰った。本当に何事も無かった。
「あら、ユフィリア、早かったのね。リヒトなら返さずに休みの間べったりしてそうだったのに。好み変わったのかしら。」
「いや、えと、リヒト様からティアナ様から自分の好み聞いてこいって言われて、自分からは言うと怒るからって・・・」
「まぁ、殿方から言われたら普通怒るわ。聞きたい?リヒト大分気に入ったのねー。」
全く繋がらない。ユフィリアはそんな様子は無かったのになぁ。と、思っていた。
「そりゃ、我が家は女性に対しては蝶よ花よと、大切にしなさいが家訓だから。無理矢理とか不快にさせないわよー。リヒトが同衾ねぇ。リヒトの好み知りたい?リヒトの館にいたい?」
「仕事受けてますからそんな他の方の館なんて・・・リヒト様の好みは気になりますけど・・・」
ティアナは耳打ちで好みを伝えると真っ赤になり、ティアナに抱き着いて顔を埋める。嬉しいがちょっと悲しい。
「だから、あいつ言いたくないんだよ。まぁ、邸に行って仕事でアトリエ貸してくださいとかで居座ったら?リヒトが私以外をベッドで同衾なんて叔母様なら喜んでいそいそと準備するわ。それともそんな好みのリヒトが嫌いになったのなら近寄らなければいいわー。」
「いや、嫌いになるどころか好感度上がりっぱなしで私、どうしたら・・・だって下っ端の子爵の家ですよ!?」
「叔母は伯爵家だけど?しかも末っ子。ユフィ一応死んだ扱いだし、いいじゃない。後ろ盾のない烙印のお嬢さまを引き取る公爵家って。婚約破棄も霞むし。」
ティアナはまぁ、ウチでゆっくりと甘やかされてリヒトを甘やかして来なさいな。こっちはまだ時間がかかるし、悪巧みには巻き込むのはこれで終わりにするからさー。と、あっさりしていた。ユフィリアはこれが人生最大の好機と、思って手紙でパトロンになって欲しい的なことを書いた。
その日のうちに公爵家の迎えが来たことに家の人間が驚いた。
「リヒト様!?」
「何?ウチ模様替えしようとしてたし、良いよ。お嬢さまをお借りします。火急であればスグにお返し致しますので。」
「えと、リヒト様、何時頃まででしょうか?」
「本人が嫌気さすまで?特に決めてません。」
両親は勿論娘に帰ってこなくていいから!!!と、喜んで差し出した。嫁に行くとは思えないが画家として雇用されるのでも構わなかったからだ。寧ろ自分の娘が公爵家へ嫁ぐと言った考えには及ばなかった。
リヒトは使用人の中に見知った顔があり、目を合わせるとニヨニヨと嫌な笑顔を向けていた。
馬車を走らせると隣にリヒトは座り直しユフィリアを見る。
「あの娘に聞いてのこと?それともお使い?」
「悪巧みにはこれ以上関わらせないようにするからって・・・えと、好みの話は伺いまして・・・リヒト様にお任せ致しますので、よろしくお願い致します!!」
真っ赤になりながらの告白。リヒトは少し考えて、頬を少し赤く染めて考える素振りを見せる。ダメか・・・
「君、大胆だなぁ。嬉しいけど、俺今忙しいから帰ってこないよ?」
「はい!!」
「帰っても寝てるだけだし。多分期待するだけ無駄だし・・・」
「リヒト様の枕でも全く問題ありません!!」
「帰りたかったら帰っていいから。本当に、今余裕ないから・・・」
さてさて、自分たちが追い出されないのは下っ端の仕事を喜んでするのと、奥様が自分たちを勝手に素材にして創作活動をして、それが後宮で大好評だからであった。不貞行為もまったくなく、害虫駆除やらなんやらしながら煙草が出来た。
旦那様が喫煙者だからと無害な方と有害な方でも本当に少しだけのを渡した。
「あぁ、葉が違うのか・・・どちらも美味しいね。」
「是非王宮に卸していただきたいです。ユフィリア嬢が公爵家に向かわれてるのでユフィリア嬢にお願いか・・・」
「あぁ、ウチが卸すよ。ウチの畑で作ってるし。最近流行ってるからねぇ、私はたまに、嗜む程度だけど、王妃とか上の人は頻度高いみたいだけどね、こっちの方が美味しいし。」
と、売れると思うよー。と、気楽に請け負ってくれた。旅人の資金源にするのだろうなぁ。くらいな感じであり、フィリス子爵家に取り分の殆どが入るなら悪くなかった。
2年あれば中毒症状を起こすには十分な時間でもあった。今からが戦だ。




