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公爵令嬢行方不明になる  作者: 悠月
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ジークは持てる知識を使って、やりたくないけど・・・と、非人道的な手段を使おうか悩んでいた。俺が手段を選べる程手札があるのだろうか・・・使えるなら使うべきではないのか・・・こんな事で王位を俺が望んでいるのだろうか・・・


「眠れないの?」


ティアナは寝巻きにストールを羽織ってジークの隣に腰掛ける。見られて困るものではない。いつもの植物図鑑だ。

剣になってもいいけど宝冠にはならないか・・・彼女は何を欲しているのか本当に分からない。自分が返せることはなんだろうか。

細い身体で熊も大男も薙ぎ倒す実力、才能がある。殺してないだろうか、その天より与えられた才能を。


「本の虫復活。」


「何それ。」


「ティアナが剣とか好きなのと一緒だよ。本が好き。ユフィには過度なスキンシップするのに、俺にはなしか・・・」


「女の子なら良かったのにねー。」


風邪こじらせるぞ。と、ティアナは毛布で包んでくれる。抱き寄せたりしても怒らないし機嫌がいいと擦り寄ってくれるし。


「はぁ、俺、頑張ってるよなぁ。」


「理性的に?」


「煽ってるのか?」


「キスだけで我慢できるの?」


もうやだ、このお嬢様。家族が怖いというのはある。確かに怖いけど、このまま好意に甘えてしまうのは絶対ダメだ。我慢というか忍耐が辛い。


「してるんだ。ティアナ、俺は妃にしたいと思うし、失敗しても共にいたいと思う。全部拒否するんだろう?」


「そうだねぇ、ジークにとって私はそんなに安い女の子なのかな?」


「はぁ・・・俺には色恋は不要か?」


「王様なるなら、なるまでは不要じゃない?玉座座ってから考えなよ。」


「玉座に座れてないから色恋が大切だと思うぞ?玉座に付けば本命に拒否られてる時点で仕事だし。」


「・・・そぅ。武器としてなら傍にいてもいいよって言ってるんだし。」


ジークはムスッとしてティアナを自分の膝に向かい合うように座らせて抱きしめる。


「何?」


「こうしたいだけだ。」


「そう。腕はいらないの?抱き締め返したり頭を撫でるとかくらいなら出来るよ?」


腕を自由にさせて抱きしめる。離れたくない。手放したくない。温かい・・・吐息が聞こえるし、体温は伝わってくる。こうして腕の中には入ってくれるのに、入ってくれるだけ。


「ティアナ、玉座に座れたら何を求める?拾ってくれた時に謝礼をすると言っただろう?」


「別にいいよ。領地に帰ってのほほんと過ごすし。」


「俺といるのは嫌か?」


「堅苦しいの嫌いなのよ。」


領地でお嬢さましているよりも単騎でフラフラしている方が楽しいのだろう。


「ティアナ、俺だってこういう生活は好きだ・・・2人でふらふらと国を見て回りたい・・・それが出来なくなるのは寂しい。」


だから今を大切にしたい。と、言おうと思ったのに腕の中でスヤスヤと眠っていた。

そういえば王都にいるのにキルシュタイン公爵家に見つかってない訳が無い。でも隠密である護衛の影の気配があるとも言われてない・・・それどころではないのか?







王宮では王が崩御したが故に露骨な権力闘争が起きていた。王位に就くための王の証である指輪が王の手になかったからだ。それ故に王太后が臨時で玉座に就き、王妃と王子相手に権謀術数の椅子取りをしていた。

キルシュタイン公爵家は中立を表に出しながらも裏では王太后を支持しているが、王妃についている人間が所謂名門が多く無駄に矜持や面子格式を慮る人間ばかりであった。


「父上、ティアナ探しません?覆面でもさせて城で殺戮劇繰り広げて離脱くらいあの子なら余裕ですよ?」


「お前もだいぶきてるな。」


監察部にいるリヒトは長官がまだ中立でまともだけど、不正ばかりで処理が追いついてなくて過労で死にそうなのだ。仕事中毒者しかいない。


「バカがそろそろ行動するだろうさ。何をして王妃たちを苦しませて墜すかは見ものだが。」


「ティナ使うなら俺が落としますが。」


「さてさて、あのバカは時間が無いことを気付いているのやら・・・」


煙草を咥えて火をつける。酒も飲めない状況でこれくらいの趣向品しかない。流行りといえば流行りだが、キルシュタイン家では女性方がくさいと一刀両断するので基本吸わせてもらえない。


「父上、王妃調子こいてバカ探してますけど?」


「ティナを出し抜いて見つけれるなら見つければ良い。あの娘が后になるとは思わないがな・・・」


「可憐な泉の妖精さんなんで。」


大体血まみれな妖精さんではあるが。






ジークは王宮での流行りと植物図鑑を睨んで、邪道だけど、自分も邪道で貶められたから邪道でいいのではないか?と、ユフィリアとティアナに相談した。


「良いんじゃない?勝てばいいんだし。」


「・・・物騒なことにしか聞こえないわ・・・」


「まぁ、計画的な物騒なことだし。コレ使おうかなと。」


広げたのはとある植物。大麻。麻なら繊維としてよく栽培されているけど・・・


「こっちの麻は乾燥させて煙草にすると中毒症状を起こす。幻覚とか幻聴とか。医療面では適切に処方したら麻酔として使えるし。それで、コレをユフィリアのコネで王宮に売って欲しい。」


「へ!?」


「最初は毒味とかいるだろうから成分は弱めに。それから王妃一派に卸すものはこっちの身体に宜しくない方を、王妃のお零れに預かろうとする女官たちには無害な方を。官僚でも王妃の派閥でやらかしている方には王妃と同じものを、付き合いで購入するものには無害なものを。」


「ちょ、それって・・・・毒殺じゃない!?」


「いや?冬の終から売り込んで、夏か秋には酷い中毒症状になる。冬に材料が枯渇するから売れませんと言えば勝手に狂って餓死か発狂してくれるだけだ。勝手に死ぬだけだから問題ないよ。なに、王妃に近い人間に神託が聞こえるとか、気分が良くなり身体が引き締まり細くなるとでもいえば勝手に愛用してくれる。ティアナはキルシュタイン公爵家に文を。フィリス子爵家の煙草、安い方を助けたい人間に買うように伝えてくれ。嗜みで煙草が流行ってるならそれを使うに限るさ。」


「いいよー。麻なんて何処でも栽培してるし、これを仕入れたとしても価値はそんなに広まってないか。」


「そういうこと。安上がりだし安全だ。」


「ユフィ、王宮主催の夜会があるだろうから、出て。」


「え、えぇ。いいのかしら・・・」


一応死亡扱いなんだけどなぁ。


「フィリス子爵の隠し子扱いで行けばいいよ。リヒトにこの話を説明したら?赤がよく似合う妖精さんからのお手紙ですって言えばダンスくらいしてくれるからさ。」


「行くわ。本当にリヒト様と踊れるのよね!?」


「うん。約束する。リヒトって倍率高いけど、誰も声かけないし、突撃かまして、妖精さんの事付ですとか言えば断らないさ。」


2人はじゃあ仕事するかー。と、材料の調達と畑仕事するかー。と、凄くイキイキしだした。ユフィリアは取り敢えず両親に1度だけせめてリヒト様と踊りたい!!!と、我が儘を強行した。表舞台に出られない娘を哀れんだ両親が気合を入れるのは仕方ないことだ。


一番近い夜会に合わせてユフィリアはドレスの作成とタバコの箱のデザインに携わる。最初が肝心だ。豪華に見せたら、可愛く、綺麗に見せたら新しいもの好きの貴族には受けが良いだろう。


「あのふたり怖い・・・」


「ユフィリア、あの旅人さんたちは畑仕事でもするのかい?」


「えぇ。私の作品の手伝いで使ってない庭で顔料になる植物の栽培をお願いしてますの。一年と少しは手伝ってもらうつもりで。」


流石にずっと男2人?を囲うのは無理があったか???と、怪訝に思ったのだが、両親は残念だ・・・と、変なため息をついた。


「彼等がメイド以上に仕事が出来て料理も美味しいからいて欲しかったのだが・・・一年か・・・」


「薬草とか凄く効果があったらもうちょっといて欲しかったのに・・・」


「あ、そうですか・・・」


何してるんだろう、あの高貴な身分の御二方は。畑仕事、庭の手入れ、何でも出来る人になってるからなぁ。両親もあの2人の身元を知って取り敢えず土下座することになるだろうなあ。


「多分、出ていけと追い出さない限りそこそこいるつもりですよ。あのふたり・・・」


悪の計画始動しようとしてるのだから。両親が居てもいいと言うのなら多分いる。そしてここが落城の拠点となる。


「良かったぁ。ティーダ君とジーク君見てると創作意欲がフツフツと湧いてくるのよ。」


母譲りだった。文才のある母に見せてもらうと想像通りの物語が描かれており、当人らは勿論趣味が同じでなければ誰にも見せられない本であった。


「お母様、私は逆推しします。」


「悔しければ自分でお書きになりなさい。私はこれで行きます。」


これが後宮で流行るとは思わなかった。ユフィリアは驚いて創作活動をすることになってしまった。後宮へは通って物語を卸すだけなのだけど・・・

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