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旅支度をして部屋も3人一部屋。ユフィリアはソファで、ジークとティアナはベッドで二人で入る。部屋は値段と安全性を考慮して。一応夜風凌げるから2人は床でも平気で譲ろうとしたが、ベッドを譲られてしまった。
「いいのいいの!!作業してる時ソファーで爆睡してるんだから!!」
なんだろう、困らないから良いけれど。
「北にいくとやっぱし寒いな・・・」
「寒いの慣れてないからキツイ。ジーク・・・」
「毛布、取るなよ。」
モソモソと一緒に寝る。普通になってきたが、ジークは心の余裕が出来たから眠れない夜が続いた。
「でも、これ非戦闘員が2人かぁ。」
「いや、俺は一応出来る・・・」
「申し訳程度に。」
役立たずということでいいかな。ティアナは仕方ないか。と、武具を充実させておく。ユフィリアは馬にも乗れないようなのでジークと相乗りをさせる。
ティアナが自由に動けるのは大きい。
「ティーダ様と相乗りが良かった・・・」
「ティーダの後ろは辞めとけって。気絶して吐く。」
リヒト様似のティーダの後ろが良かったと呟いているが無視した。本当に吐くから。
二三日野宿をしてから旧ヴェルディ男爵領へと入るが戦の爪痕、戦禍は残っていた。
「顔をしかめるなよ、ユフィリア。現実だ。」
ジークとティアナは馬から降りて村へ入るがやせ細った女性や子供が多い。ティーダは身形を汚めな感じにしておいて良かったと思いながら馬を撫でる。確かに野犬というより狼との共生と言えるほどに狼が多い。
「お役人様か?」
「いや、旅のものだ。魔女や魔法使いがいると噂で聞いたので確かめに。宿はあるか?」
「宿はあるけど、やってるかどうかは分からないね・・・」
取り敢えず教えてもらった建物に向かうとベッドと毛布しかなく、食事などはないということだった。
「お食事は大丈夫だと思いますわ、こちらの方々自給自足は出来るので。巨大な熊とか猪とか現れてませんか?」
ユフィリアが唯一女の子の見た目をしているため、話しかけてもあまり警戒されない。熊とか猪は害獣だし化け物並の大きさになると怪物以外のなにものでもない。
冬が近いので熊、猪には困っているらしい。しかも巨大だから困っていると。
「じゃあ一狩り行ってくる。」
ティアナはお風呂の支度だけ御願い。と言って徒歩で山に入っていった。勿論住民の人は止めた。
「兄ちゃん、アンタみたいな死にたがりはいらないんだ!!」
「いやいや、皆さん顔色悪いんで熊とか猪で鍋しましょ。ジーク、食べれそうなの集めといてー。」
「熊運べるのか?」
「狼煙でも上げるし、ここには狼も多いから血の匂いで分かるんじゃない。」
ティアナは熊か猪狩るぞー。と、向かってしまった。ここは街というより村に近い。荒廃して復興できてないのがあるかもしれないけれど、賑やかさとか華やかさがない。
「皆さん栄養が取れてないみたいなので、この当たりで食べれる雑草を探しましょう!タダです!!食べれて栄養満点なので興味ある方一緒にこの辺り散策しませんか?」
鍋の具材を探さないと。ジークは一応薬師なんで、と、自己紹介を済ませる。
探すのが薬草や身体に良い野草たち。野菜が良いけど取れないなら増やしやすい薬草などを探すしかない。それと保存食の作り方。
ティアナは狼煙を上げてジークを呼ぶのだが、ジークは多分一人じゃ厳しいからと何人か人と荷車を使い、彼女の私物を使って狼に案内てもらう。
「さっすが、ジーク。」
「まぁ、予想はしてたけど、大漁だね。」
恐らく人々が恐れていた熊と猪を狩って川に放り投げて血抜きをしていた。けろっとナイフの手入れをしていた。彼女にしたらこの程度の事なのだ。分かって入るが、知らない人たちには脅威でしかない。まぁ、普通こんな巨大熊と猪を同時に仕留める人はなかなかいない。
「怪我はない?」
「ないよ。」
身体についているのは獣の血だとは思ったけれど、面白いくらいに無傷だった。
「もしかして粗方解体してる?」
「血抜きとモツ抜いたくらい。熊、猪でもモツ食べるのは危ない。」
旅人によって恐れられていた獣が肉塊となっている。それだけが事実。騎士団がどれだけ彼女を騎士団に入れたかったか・・・剣を習ってから分かるようになった。
ジークは聞いたことがあった。「騎士に、武官に志願しなかったのか」彼女がどう思ってるか全く読めなかったから気になった。彼女の言葉で聞かないと決めたくらいだ。
「興味無いよ、護ってくれて当然と思ってる人間の護衛だなんて。」
肉の手土産であっさりと打ち解けることが出来た。正しいかどうかは別問題だけど、話を聞くにはやはり謝礼は必要だ。
「この辺りは領主がいないのか。」
「一応王様だけどねー。税も取られない見捨てられた土地さ。まぁ、取るものもないけどね。」
未開となったのか。税がないのが救いだけど・・・
「魔女狩りというのはあったのか?」
「魔女というか、占い師狩りだね。見目麗しい娘や子供ばかりさ。」
確かにここの人は肌が白くて道中の村や街に比べたら見目が整っている。何をしていたかなんて分かりきっている。妾にしたり娼館に売ったり・・・そんなの人々には分かっているだろうし。
ティアナは話を聞きながらも同情とかそういう感じではなかった。元から表情は読みにくかったけれど、読めない。何でもなかったら喜怒哀楽くらい分かるのだけど。
王宮への不満赫子盛り沢山な対応かと思えばそうではなかった。無い訳では無いが、それよりも今の話で何を懐疑的に思ったのかが気になった。
「ティーダ、何か違和感でもあった?」
宿に戻ってから尋ねるとティアナはんー。と、首を傾げる。確信ではないけど気になる程度だろうか。
「ここの人たちの身体的特徴がアシュロット妃様に似てるとかくらいしかないわよ?あの方北側の方だったかしら。」
ティアナとジークはユフィリアを見た。何を言ったのだろう、この人は。
「ティーダ強いから騎士団でアシュロット様の側近狙ってるとか!?声が掛かってるけどジークを優先して逃避行とか!?」
彼女の妄想が遠くて近い。性別バレてないはずなのにどうしてそういう思考回路になるんだろ。
「あーまぁ、当たらずも遠からず?ティーダは強いし。というか、ここの人ってお妃様に似てるの?」
「あの方と事はよく分からないのよねー。コータス侯爵家の養女くらいしか。宝石を売りに行った時にお会いしたくらいだけど、ある意味印象的だったから。コータス侯爵家って武芸で功績を立てた家で後宮とか全く興味無いと思ってたのよ。って、庶民派旅人の二人には無縁だし分からないわよねー。」
ティアナは第2王子しかちゃんと見たことないし、ジークも異母兄弟とは関与してなかった。ぼんやりとした記憶でしかなかった。
「ユフィリア、君って不思議な子って言われない?」
「芸術家なんてそんなもんよ。私からしたらふたりが仲良くしてくれたらそれでいいわ。」
訳が分からない。ティアナはユフィリアの隣に座りじっと見つめる。
「ちなみに、ユフィリアの言う仲良くってどういうことかな?」
ぼんっと真っ赤になって返答に困っていた。ティアナは薄々勘づいていたが、聞かないようにしてきた。だけど、確信に変わった。
「ティーダ?」
「あ、いや、うん。ユフィリアの部屋は凄いことになっていそうだ・・・」
「絶対に無理!!!邸にあげないから!!」
「まぁ、興味無いけど。」
「その会話で俺が興味持った。」
「ジーク、知らなくていい。」
王子様が彼女の部屋や思考回路を知ってはダメだ。あとで王子様に変な知識植え付けたとかで彼女の家の人が気に病むに決まってる。
「ユフィリアが王宮に明るいのは意外だった。」
「そう?一応礼儀作法見習いで放り込まれたのよ。合わなくて二三年で出たけど。」
「第二王子様付き?ってやつ?それとも後宮のお妃様?」
「第一王子様付きの女官よ。」
目の前に本人いるのに気付いてないぞ。いや、王子様が髪切って薄汚い旅人の服装して同じ位薄汚い旅人と馬に乗ってほいほいと何処かにフラフラしてるとは誰も思わないか。行方不明は隠しているだろうし・・・
「ないわー。」
「そ、その時は猫被ってたのよ!!疲れたから辞めたの!!第一王子様の顔は寝顔しか見たことないくらい書庫と温室にこもりっきりだったんだから。食事運んでも生返事しかしないし、本の虫だったし。」
「へぇ・・・」
「流罪で幽閉でしょ?そりゃなるわって思ったもの。周りがコソコソと冤罪の外堀埋めてるのに本の虫だもの。やりたい放題よね。ティーダってやっぱし興味あるの?」
「お妃様云々もだけど、あまり知らない世界だから興味はあるかな。騎士団とか堅苦しそうだし。」
ユフィリアの事は意外だった。ジークを見ると顔を逸らして目を合わせようとしなかった。
何もしていなかったなど仕えていた人間にボロクソ言われて少しは反省しろ。ティアナはユフィリアから話を色々聞き出して間接的にジークで遊んでいた。
「ボロクソに言うけど、第二王子か第一王子、仕えるならって今もっかい聞かれても第一王子よ?」
「ボロクソに貶してるのに?」
「本の虫の主人だったけど、たまに顔を上げると私達にありがとう。と、下の人間の顔を見て言える人なんだから悪い人じゃないもの。ま、本の虫で王様なられたら確実に傾くけど。第二王子様って成金ボンボンって感じで鴨りやすいのよねぇ。というか鴨だし。」
「鴨なんだ。第二王子様。」
「そりゃね。耳障りのいい言葉を並べて太鼓持ちしてヨイショだけで金貨が降ってくるんだし。」




