第一幕 デュオローグ(1)
【デュオローグ】
登場人物二人の間で交わされるダイアローグ。
旅芸人の一座が、すっかり街に馴染んだころ、季節は秋から冬へと移り、子どもたちは雪が降るのを心待ちにしていた。ロッテもその一人で、ことさら寒い日の朝は、空を見上げるのが日課になっていた。
日課といえば、舞台稽古の合間に、あの黒猫に会いに行くのも習慣の一つになっていた。
ヴァーリアのほうから会いに来ることもあり、その様子がまるで自分を心配してくれているようなので、ロッテはますますヴァーリアを溺愛するようになった。
マリオネットはサーカスじゃないから、動物は連れて行けない。
この街に来たころの、あの燃えるような冒険熱はすっかり身をひそめて、いまはどうしたらヴァーリアを連れて行けるかということで、ロッテは頭がいっぱいだった。
「ねえ、まだ寝てるの? 早く起きてよ!」
ドアの外から、エヴァの声が聞こえてきた。
ロッテはようやく目を覚まし、慌ててベッドから飛び出した。冬の朝は、どうしてもいつもより朝寝坊になってしまう。
「ずっとここにいたいな」
ロッテが手早く着替えをすませて、部屋を出ると、エヴァが壁にもたれたままぽつりとつぶやいた。
「野宿はもうごめんだわ」
「そうね。せめて、冬のあいだだけでもいられたらいいんだけど・・・・・・」