シフォンケーキ
簡単なレシピ。
何にもなくても、作れちゃうんだ。
君は、そう言ったじゃないか。
だから、信じて作ってみたよ。
タマゴと、卵と、玉子と、たまご。
たまごばっかり使っちゃった。
お砂糖と、はちみつと。
薄力粉?
よく混ぜたよ、よぉく混ぜたよ。
オーブンは予熱して。
百四十度。
きっちり、四十分。
なのに、なんで?
綺麗に膨らんでくれなかった。
見ている目の前で、ふしゅって、しぼんでいった。
上手くできるって言ったじゃないか。
簡単だって、言ったじゃないか。
悲しいな。
僕の気持ち通りじゃないよ。
僕は嘘つき?
君が嘘つき?
君に、最初に食べてほしかった、シフォンケーキ。
出来上がったのは、ただのスポンジケーキ。
悲しいな。
君の気持ち通りじゃないよ。
君は嘘つき?
僕が嘘つき?
今日は、僕のおなかの中。
明日は、君のおなかの中。
明後日は、二人きり。
お皿の上に、載ると良いな。
もっと、ふつふつ湧いてくるような、そんな気持ちが足りなかったかな。
それとも、薄力粉が多すぎたかな?
白く、白く、飾るように、しなきゃ、ダメだね。
やさしくしてあげなきゃ、膨らんでくれないんだね。