1話:貴方を…。
私は貴方が好きだった。
好きが故、求めるが故、私は人外になった。
でも私はその後すぐに気付く。
貴方への想いは恋じゃない。
愛ではない、憎しみだ。
憎しみと愛は勘違いしやすい。
どちらも似ているのだ。
相手を思えば思うほどに強くなり思うほどに人を占領する。
「花乃、一緒に帰ろ!」
…いつも元気な彼女。
貴方とも、もうすぐお別れ…。
「うん、じゃあいつもの橋の所で待ってるね」
いつもの待ち合わせ場所。
みんなで帰るときの場所。
イツメンと呼ばれる関係のみんなと。
それももうすぐ終わる。
先生にはちゃんと言ってあるけれど、誰にも言っていない。
その理由がよくある小説やなんかみたいに
悲しいとか別れたくないって理由じゃない。
むしろ離れられることが嬉しくて仕方ない。
「喬也も今日は一緒に帰るってさ!」
ニヒヒと笑うカノジョ。
貴方はその言葉がどれだけ今の私に残酷なのかわかってるの?
いいえ、わかってないでしょうね。
だってあなたは優しい。
優しさゆえにそう言ってるんだから。
「うん、そっか、じゃあ部活頑張ってね恭子」
でも今の私には関係のない話。
私はもう喬也のこと諦めついてる。
今は殺したい程に憎い対象なんだから。
私の貴重な一年を返して欲しいわ…。
私の体についても、責任を取らせてやりたい。
いつだって渇いた喉。
私の体に突然変異をもたらした。
はぁ…おかげで私は引きこもってた時から嫌いだった
日光に対してさらに抵抗を覚えてる。
あぁあ、なんで私がこんな目に遭うの…なんて…
「クスッ…」
一人で歩きながら笑ってる。
かなり不気味な光景かなと思いつつ笑いは止まらない。
逆に感謝したい。
空腹時に人さえいれば腹を満たせる。
力は皆の倍ほどになった。
肌は前以上に白くなってしまった。
目の色が少し赤みがかってきた。
髪の色は色素が薄くなってミルクティーのような色になった。
変化は大きくあった。
全てがいいことかと言えばそういうわけではないが
私はおかげで…うるさい奴らに恐怖を与え
自由を手に入れた。
隠す事は多い、けど親からの威圧はなくなった。
来週からは、一人暮らし。
転校手続きはほとんど済んでいる。
中学生なのに、一人暮らし出来るなんて
夢にも思ってなかったのに…
なんて幸せなんだろう…。
何て素敵で醜い能力なんだろう
でもその前に…彼の血を…極限まで抜き取ってやりたい…
その野望を確実に叶えてやる。
絶対に、絶対に。
私の中学校の制服は、未だにセーラー服で田舎らしい感じ。
転校先では、ひとり目立つことになるんだろう。
向こうはブレザーだっけなー…。
それが届くのは向こうに行ってから一週間後位の予定。
転校生の気分を人生初味わう。
誰も私を知らない場所。
この髪の毛だって生まれつき色素の薄い人間と言えば通じる。
差別を受けるかな?
それはそれでいい、仕方のないことだ。
だって私は異端だから
「にしても、トマトジュースを応用することも出来るし
生肉でもどうにかなるなんて…本当面白い体…。」
未だに人の血は吸ってない。
吸おうと思ったことは何度かあったけれど
結局脅しで牙を見せたくらいで吸ってない。
自分の血を吸ったことはあるけど…
私は人じゃないでしょ…?
さっきからこればっか繰り返してる。
その理由はわかってる。
人でない事が嬉しくて仕方が無い。
特別を感じさせる今の私の存在が。
「お待たせ!!」
いつの間にか恭子と、真波がいる。
後は…梨瑠と綾斗と…喬也ね。
スクールバッグをかけ直して立ち上がる。
「うん、てかもう終わってたんだね
ボーッとしてたからすごい早く時間経った気がする」
笑いながら言うと恭子は「いつも通りボーッとしてんね」と笑った。
ボーッとしてるのは、大抵考え事をしてるから。
「そろそろ、みんな来ると思うよ。」
橋の向こうを見つめる。
確かに数人の団体が歩いているから多分あれだ。
「あぁ、本当だね。」
「にしても、本当花乃って髪染めたり危ない子だわ〜」
え、突然どうした恭子。
危ない子ってひどすぎるよ?!
「染めてません〜いうなら脱色のが近いです〜」
まぁそれでも十分どうかとは思うけどね…。
どちらにせよ、髪の色が違ったってどうも思わない。
勝手に色が抜け落ちたのだから。
「ごめん!遅れた、行こ!」
梨瑠…うるさい…。
少し日に当たりすぎたかな、私。
頭がんがんする…五月の今、少しずつ暑くなり始めて
水分を取らなければ倒れそうな程だ。
「ん、行こ」
…私を気にせず恭子と笑う喬也。
何それ、やっぱり気に食わない。
ふふ…ふふふ…まぁいいわ
私がその顔を絶望に歪め私しか考えられないようにするんだから。
待っていてね、時はすぐ来る。
初めて吸うの人間は貴方って決めてるんだよ?
世界で一番愛おしくて憎い喬也って、ね。
「ねぇ、どうしたの?花乃ちゃん、嬉しそう」
梨瑠…。
最後まで「ちゃん」付けだったな…まぁいいか。
「え?いやぁ…ただ…ね」
クスッと笑うとか…私謎なことしか言ってないかな。
まぁ言える筈ないよね、私吸血鬼だよ。なんて。
目の前で見せなきゃ信じないよ、誰も。
「なにそれ」
まぁいずれわかるよってことでね。
それまでは、秘密。
あと、一週間。
日は過ぎるのが早い。
既にもう3日後に迫っている。
いざこうなると、さみしいと感じる、多少はね。
でもまさか、こんなふうにチャンスが訪れるとは、ね。
体育館、部活終わりの待ち伏せがここまで上手くいくとはね…。
勿論今は朝。
授業に急がないといけないのは、分かってるけど
これ以上チャンスはないよね?
と言っても今日は、約束を取り付けるだけ
無理矢理にでも。
「喬也。」
呼び止めたら彼は止まってくれるかな。
急いでいる時にもかかわらず…止まる?いいやそれはない。
「何。」
いや、止まってくれたみたいだ。
急ぎたさそうだし、さっさと済ますか。
「3日後の帰り前に体育館倉庫。」
それだけ言い残して私は走る。
多分首をかしげてるんだろうな、今頃。
でも
伝わってるはずだ、はっきりと言ったんだから。
最後のお別れであなたを殺す…。
私の中で確実に。
3日後。
朝から、少し気分が良い。
高めのテンションは初めて人間の血を吸える喜びからだ。
「今日は、朝会があるので皆さんシューズを持って廊下に整列」
衣替えの季節だからその事だろう
学年朝会は、これが最後。
あぁ、なんだろ、泣きそう。
ここで色々お世話になったなーって突然こみ上げてくる。
三年間ここにいる事もできる。
でもそれを私は望まない。
お世話になったとは思うけど…いたいとはおもわない。
『皆さん、集まりましたね。
じゃあ、挨拶から。』
「おはようございます」なんてみんなで揃って挨拶。
今日起こることは全て最後のこと。
少し力が入るのは不思議じゃないよね。
『実は、今日みんなを集めたのは1人
この学校から去る事を知らせる為です。』
…え?聞いてないよ?
私何も聞いてないのに…まぁいいけどさ。
ざわつく周り。
別にそう大したことじゃないでしょうに。
『前に出てきてください、明日日 花乃さん。』
はぁ…前に出てくるとか。
何だそりゃ。
「はい。」
すっと立ち上がる。
まぁみんな一度は見たことがあるんだろう。
マスク、ミルクティー色の長髪、赤身を帯びた眼、
何より、喬也という暴れん坊の元彼女。
不登校の私が有名じゃないわけが無い。
私の名前くらいなら誰でも知ってるらしい。
あぁ、前からだと良く見える
驚き泣きそうな顔をする奴が…。
『彼女は、東京都の薄明光学園に行くそうです。
今日が彼女にとって最後の生活です。最高の一日にしてあげましょう。
何か一言。』
え?マイク渡されてもっ!?
いやまぁ…適当にね。
『えぇっと…まぁ、今まですごい楽しかった、ありがとう』
一言だし。
この程度でいいかな。
笑顔でこんなこと言ってるのは残酷なのかもしれない
ずっと黙ってた彼女達には。
『じゃあ、朝会を終わります。』
まさかまさか、こんなことしてもらえるとは。
私が最高の一日にするには彼の血を吸えたらいいと思う。
それだけで、満足できる気がするし。
て、わぁ…予想はしてたけど群がってきた…。
まぁ、これから、修学旅行ってとこだったしね
少しは絡みある人いるし…
どうしよう、嬉しい。
何も無いから、これを。
とか言って
シャーペンだとか白い紙にメッセージを書いてくれたりだとか
絵を描いてくれたりした。
なんだか、転入生よりもいい扱いされてる…。
「ありがとう」
この言葉を今日何回言ったんだろう。
あったかいなぁって思う。
一応、家の事情って理由にしてあるから、
少し悲しそうにしてるけど…
それでもやっぱり、今日の帰りの事しか頭にない。
先生の行為のおかげで来る確率が高まった。
そこは感謝するよ。
「ね、今日は少し先に帰ってて 」
そう告げて私は最後だからと言う理由で一応部活に出る。
あぁ、楽しみで牙が伸びやすい…。
まぁ簡単に言うと普段は八重歯みたいな感じなんだけど
吸うときだけこー、尖る的な。
うん、そう考えてるよ、私は。
部活が終わり、体育館倉庫へ向かう。
倉庫は、体育館の外にあって鍵はかけられていない。
あぁ、来るかな…。
間違えて器具倉庫とか言ってないよね?
いや、ちゃんと言ったし大丈夫か。
あぁ、やばい…疼く疼く…。
早く飲ませて?人の血を。
にしても少し遅い…スマホの画面が表示するのは、そろそろ部活の終わる時間なのだけど…?
まぁいいか、ここは、一般の人も使える体育館だし…。
ガガガッ…
思い扉の音がする
やっと来た
閉めないのはおそらく警戒してるからだろう。
だけど…無駄さ。
トンッ スーッ ガタンッ
彼を中へ押し倒し、扉を閉める。
鍵は閉めることも出来るがそこまでしなくても…多分いい。
「用件は何だよ」
立ち上がって強気に言ってるけど脅えているのは声音でわかる。
何故がそれがそそる。
「私は、貴方に復讐しに来ました。貴方を殺しに」
その怯えた表情…凄くいいよ
その顔が見たかったのかも。
「は?!っ痛!?…っ… 」
何が起きたかわかってないんだろうね。
痛いと思うけどまさか思わなかったでしょ?
首筋に牙が刺さってるなんて。
「っ…ん…」
あぁやばい興奮する。変な声出る。
この血が人の血。
美味しいなんて思う私が怖い…病みつきになりそう。
この吸った瞬間に覚える快感がたまらない…。
「っ…は…おま…ぇ…」
「はっ…花乃ですけど?」
わざと、牙を押し当てながら喋ってやったが、かなり痛いのだろう。
いたがる顔も見てみたいな。
血が吹きでる場所にキスをすると傷はふっと塞がり、赤い痕のようになっていた。
次は…指かな
「っ…か…の…吸血…鬼…?っ…」
うわっ…すっごい顔…
あぁ、もう大分血がないんだろうなぁ…
顔色がよくない…
「ふふっ…そうよ、貴方の所為でね…ん…は…」
クチュッと血の音。
やばい楽しい…これで彼は死んだ。
私のことを考えてくれない彼は、完璧に。
「花乃…っ…」
あぁ、意識飛んじゃったのか
まぁ吸いすぎたしね。
このまま放置でいいか…多分、誰かが見つけるさ…
扉を半開きにしておけば、ね。
しかし、このまま出るとまずい。
血のついた白襟を鞄にしまう。
「さて、帰ろ」
これでこの学校ともさようなら
あなたとも、さようなら。
さぁ、家に帰ろう。
て、え?
鏡…お?え?
嘘でしょ…眼と髪の色が!
え、これ私だよね?
全く変わってる…。
淡い白色の髪に深紅の眼だとっ!?
淡い白色ってなんだ…。
ア●雪のエ●サ的な色っていうか、なんていうか…
そして、眼は、どちらかというと黒みがかっている赤って感じだ。
なんで?覚醒した的な?
あ、人の血吸っちゃダメだった感じ?
え?フラグだったの?
ま、まぁいいわ…
目的は達成したしこれからは適当に生きていくつもりだから…ね。
あ、そういえば、ひとつだけ初めてのことあったな
人の血を吸ったこと。
ふふ…




