第9話:最近の悩み
はぁ…最近いじめられてる気がする。
『お兄ちゃーん!一緒にお風呂入ろ!』
『やだ』
『お兄ちゃん、一緒に寝よ!』
『ふぁあ〜、おやすみー』
『業戀、お風呂一緒に入ろーよ』
『懲りないね、痴女』
『一緒に寝て?業戀』
『やだよ?』
ことごとく断られてるんだけど!?
え?業戀に嫌われたの?私嫌われたんだなー、灰になろう
あ、やだ、灰になりたくない。
灰になったら私は業戀に抱っこしてもらえない!
「姫様、溜息多いですね、悩み事ですか?」
悩みの原因の中に一応あなたもいるんだよ、リラ。
リラが四六時中うるさいから、業戀を襲えないんだよ!
「うん、いろいろね。
それより…髪の毛くらい自分でとけるんだけど」
朝からこのざま…。
毎朝毎朝ブラッシングをしたがる。
夜なんて髪を乾かさせて欲しいと、ドライヤーを持って追いかけ回してくる。
呼び方は、場所がどこであっても姫だし…
変な誤解を招くからやめて欲しい。
「そろそろ行くよ、花乃」
業戀は普通に接してくる。
本当に私のこと妹扱いだし…
私が気持ちを制御しなくても、両思いになることは無いだろう。
「うん!じゃあ大人しく留守番してなさい、リラ」
毎朝行く度に命令。
この前、言い忘れた時は学校に押しかけてきたことがあって大変だった。
「はぁい…」
ションボリするなよ、いい大人が。
そもそも懐かれた理由がわからないし…変わり身の凄さにちょっとだけ引いてるよ
「業戀、抱っこ。」
最近羞恥心が薄れているのも悩みのひとつ。
この間は業戀が抱っこしてくれなくて外で駄々こねたくらいだし。
「…赤ん坊なの?侑希にしてもらったら?」
ん?あのクソ野郎にしてもらえと?
嫌なこった。
あんな野郎。
「やだ。業戀が良い。業戀じゃなきゃやだ。」
そしていつもどおり冷めた目でみられて抱っこされる。
業戀は、クーデレだな。
私は知ってるんだよ?業戀が耳赤くしてるのを。
「あーもう、侑希も行くよ。」
そして三人での登校。
学校では、『相澤、赤崎、明日日は生き別れの兄妹』疑惑がたち、
『明日日姫様』というあだ名も広まった。
近所では『仲良し兄妹』『三角関係』『恋人と彼女の兄』なんて噂が立つ。
目立っているのは知ってるが業戀に抱っこされるのが大好きだ。
「それより、花乃ちゃんも変わったねぇ積極的だし。
もう吸うのあんまり抵抗しないよね」
それはもちろん。
業戀の血を吸えるのに抵抗とかしないよ?
恥じらいよりも空腹を優先する。
まぁ、他の人なら抵抗するけどね。
「ホントだよ、もっと恥じらい持って欲しいんだけど」
ため息混じりの声。
恥じらい持ってたら業戀はかまってくれないくせに。
「お兄ちゃんが、一緒にお風呂に入って規制にかかることして一緒に寝てくれたら考えてもいいよ」
なんて恐ろしい子なのっ!
て言われちゃったよ。
昔の漫画からの引用ですか?
{花乃ちゃん、あんまり好き好き言ってると信憑性無くなっちゃうよ?}
〈突然念話してきて何いうかと思えばそんなこと?
別にいいよ。私は本気で誰かを好きになるくらいなら中途半端に誤解されて報われなければいいと思うし
今の距離感がちょうどいい。
傷付くくらいなら傷つかない距離を保つから〉
最近の悩みの一つ。
侑希がよく単体で念話をしてくる。
そして心配してくる。
クソ野郎だなんてよく言ってしまうけど
少しだけ見直してるんだよね。
ただ頻度が頻度なだけにイラッとはする。
「じゃー、あとでね、侑希」
「ばーいばーい」
E組に向かう。
もちろん抱っこされたまま。
「おはよう」
「おはよー、花乃姫」
雪沢さんこと、奈南ちゃんだ。
奈南ちゃんは今や親友。
「おはよ、奈南姫」
そして2人で笑う。
なんて素晴らしい友情なんだろう。
「どっちも姫なんだ」
業戀も笑う。
馬鹿げてるとかあほらしいと思ったんだろうね。
◇業戀視点
最近は、花乃がだいぶ積極的で困ってる。
お風呂とか誘ってきた時は
俺の中で何かがゲシュタルト崩壊を起こしかけた。
俺の中での花乃が壊れていく。
俺の中での花乃ってのは偏見の花乃じゃない。
『ねぇ、大丈夫?』
『あんた何?誰。』
『あぁ、ごめんごめん。私はあすひかの!
明日の日に、花に乃!』
『あっそ…どうしてここにいんの』
『助けに来た!安心していいよ?
私はヒーローだから!』
『あんたばかなの?』
『ヒーローなの!花乃なの!
それより大丈夫なの?あがれる?
無理なら私が背負っていってあげる!』
本気で馬鹿だと思った。
俺が迷って山から転げ落ちたのは中1。
俺のが確実に背は大きい。
彼女の背なんて130くらいなのに160はある俺を背負う?
無理だろって思った。
あの後口論して
肩を貸してくれる事になって、一緒に山を登った。
『ーーーー花乃!』
必死に呼ぶ声に彼女が反応して声の方を見た。
俺も一緒に見た。
走ってきたのは喬也くん。
『喬也、ごめん
私この人助けてくる!』
謎の言葉を彼に返して結局俺を駅まで送ってくれた。
お礼を言おうとして振り向いたら
彼女についてきていた喬也くんと彼女が抱き合っていた。
なんでかショックだった記憶がある。
彼女は覚えてないだろう。
あの時俺は名乗ってないし、顔や背、声も成長して変わった俺に。
喬也君は気づいててずっと俺のことをあの時睨んでたけどね。
睨むくらいならこんなにいい子を振らなきゃいいのに。
あぁ本当最近、花乃のことを多く考えてる気がする。
花乃が壊れて新しい花乃が作られてく。
はぁ…困惑してる俺…超だっせぇ……
◇侑希視点
二人と別れてA組に向かう。
俺は最近二人のせいで哀れみの視線をよく送られる。
完全に三角関係と勘違いされてる。
おかげで可愛い女の子からも哀れまれる日々。
「ねぇ、侑希くん、今日帰り空いてる?」
いつも俺に血をくれてる優しい子。
凛ちゃんだ。
多分この子も『もうやめよ?真剣に狙わなきゃ明日日姫様の心掴めないよ?』なんて言うんだろうな。
最近はそれで十件以上振られてる。
俺は花乃ちゃんを狙ってるわけじゃないのに…
俺は普通の女の子にしか興味無いし、カレンに幸せになって欲しい。
けど俺への勘違いが止まらない。
血をくれてた子も彼女になってくれてた子も
みんな離れてく。
「もう終わりにしようってこと?」
廊下のど真ん中だけど、もーこの際どうだっていいさ。
「え?!違うよ!とにかく今日帰り、待っててよ!」
えー…どっか行っちゃったし。俺に拒否権なしなわけだ。
はぁあ…俺への誤解がさっさと解けてくれるとありがたいんだけど。
「はぁ…憂鬱だ」
◇リラ視点
最近皆さんがため息ばっかりついてる。
男のクソ野郎二人はいいとして姫様がお疲れ。
…姫様は業戀さんが好き。
業戀さんも脈アリだ。
私の能力、心を見透かし人の過去を見ることができる。
それを知らないみなさんは普通に話しかけてくる。
皆さんそれぞれかかえてる。
悩んでることも本当は大体わかってるんですがね…。
こんな能力、嫌がられるでしょうし言いませんが
好きで見てる訳じゃなく、目を合わせたら勝手に
見えちゃうんですから…不可抗力です。
「にしても、なんでふたりは花乃姫様に言わないんでしょうか
花乃姫様の正体について…」
言ってしまった方が姫様の身のためだし
安全だと思う。
姫様は無防備だし、業戀さんのことになると
特に危機感がない。
「はぁ…悩みは誰しも尽きませんね。」




