(7)
「・・・・・・で、ナニコレ?学生の研修テストのテスト?冗談なら全然面白くなかったんだけど?」
インカムに発せられる声には苛立ちの色が隠されることなく含まれていた。
頭に描いたプランは、窓を蹴破り、目標を捉えると同時に炎を錬成、相手に反撃の間もなく消滅!という教材のような強襲。
それでも狩人の中では完璧な作戦に意気揚々と窓を蹴破ると、目標に繋いでいたラインが切れ、指輪が抑揚なく終戦を告げた。
「状況Aクリア。汚染源の消滅を確認。感染拡大・・・・・・なし」
「・・・・・・ん?」
呆気にとられる管理者を余所におき、指輪は現状報告する。
「状況をBに移行。錬成者を至近距離に確認。警告」
あまりの呆気なさに時間が止まりそうになったが、任務の途中に気を抜くことは即、死につながる。
警告を聞くが速いか、ガタンと音のした背後へ一切の予備動作なく体を反転させると同時に、腰に挿したナイフを抜き放つ。
一応は寸止め脅し。本気の殺意を持ったハッタリで相手の様子をみるつもりだったが、またしても狩人は呆気に取られることになる。
・・・・・・振り向いたナイフの先に見たもの。それは、まだ世界の理不尽をなにも知らないような、現状を何も理解できていない顔の子供だった。
今度こそ本当に時間が止まる。
狩人は二つの意味で己の目が信じられないでいた。
一つは想像を遥かに超える未成年の錬金術師。見たところでは10を過ぎるかどうかも怪しい。
もう一つは、その少年の手にある書物。いや、書物の様に見える端末。
───それは、失われたはずの”絶対権限”。
想像すらしなかったモノとの出会いに言葉を失っていると、
「・・・・・・あっ・・・・・・うっ・・・・・・うあ”ぁああぁぁ~~~!!!」
ようやく驚くことのできた少年が大音量で泣き始めたのだった。