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ヘルメスの鳥  作者: アラヤ識
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(6)

錬金術を行うと、その性質上必ず世界を汚す゛汚染現象゛が発生する。そのために錬金術師らは秘匿し隠蔽し口封じする。

その隠匿を評価、監視する機関が錬金術協会。俗に゛シオン会゛と呼ばれる彼らは、秘匿が出来なかった汚染の処理や洗浄、そしてその元凶の゛掃除゛を行う。

今回のようなとてもとても小さな錬金術にですら、確かな汚染現象は発生していたが、無論誰に教えてもらうでもなく錬金を行った少年に、そのような知識があるはずがなかった。

「……確かにこのあたりから反応があるけど……それにしても小さすぎない?葡萄酒作ってももうちょっと大きな反応がでるわよ?」

フードを深く被った人物が通信を取る。左耳にルビーのピアスが怪しく光っていた。

場所はつい二日と半日前、小さな錬金術師が小さな錬金術を成功させた家の前。

「りょうかいりょ~かい。わかったってば!ジョブはこなすわよ。通信アウト~」

煙たがるようにピアスを弾く。それで通信は切れたようだった。

「さて……っと。どこの誰かにゃ~。汚したら綺麗にしなきゃ……ママが怒っちゃうぞ」

口調はあくまで軽い。しかし油断なく脱力した体は、獲物を狩る直前の獅子を思わせた。

「一先ず逃げないように囲って、チョチョイノチョイでどこにいるかも丸わかりっと!」

フードの人物が右手を動かす。不思議な陣を描く指先には、指輪がはめられている。

所有者の呼び掛けに従い、蛇が己の尾を喰らう形の指輪が起動した。

「脳波認証確認。声紋および定型陣判定。限定範囲に置ける空間の位相変化を起動。今より100分間、範囲内の空間をチャンネル6.3に合わせます」

無機質な声と共に出来上がるアチラとこちらの境界線。曰わく結界とは、空間の隔たりのその境界線だと言う。

「スキャニング終了。汚染源は座標324、332、137。対象とラインを繋ぎます」

目標の探索を終えた指輪から、一筋の赤い光が家の一角に向けて繋がれる。

「これが運命の赤い糸よ。待ってなさい!」


その言葉の本当の意味を、口にした本人も気付かなかった。

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