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ヘルメスの鳥  作者: アラヤ識
4/10

(4)

次第にクリアになっていく音声。完了の言葉と共にページは終わり、再び本が閉じられる。

時間にしてモノの数秒。

目の前で起きた奇跡のような出来事をヴラドはただただ呆然と眺めていた。

しかし、その顔には驚きよりも興奮の色が強かった。

「……すげぇ……すげぇすげぇすげぇすげぇ!!」

胸の奥から沸き起こる、衝撃にも似た興奮。

逸る気持ちを抑え、慎重に本の表紙に手をかける。

(開け……!)

祈るヴラドの願いははたして、抵抗なく開いた本が応えた。

そこには……難しくて読めないが確かに゛何か゛が記されていた。

次々ページをめくっていく。奇妙な図や文字、記号が所狭しと書かれていて、まるで何かの゛レシピ゛のようだった。


少年は瞬く間にこの本の虜となった……。


一体何が書かれているのか。一体何ができるのだろうか。

゛この本を読みたい゛という幼い少年の強い願いは、とても大切な宝物のように……あるいは呪いのように、いつまでも胸に刻まれ続けた。



年を重ねる度に、外国語や古の言語を覚える度に一つ、また一つと読めるページは増えていった。

初めて錬金に成功したのは本を拾って5年後の事。゛たった゛5年間の独学で彼は、錬金術を成功させたのだった。

これは生まれたての赤ん坊が料理を行うようなものだと、彼は後に知ることになる。

「太陽の種に惹かれた月の蝶、偽りの水でその乾いた喉を潤せ。祖は素より礎となりて、血は致より智を与えん……」

言い終えると同時に右手の親指の皮を少し噛み切ると、残る左手に持つ゛本゛にその指を押し付けた。

一小節からなる言霊。そして全ての起点となる血を与えられた本は、それに答えるかのように妖しく光り、展開した。

「音声詠唱承認。血液判定。管理者による第3章を起動。第二元素を処女の血から水銀に変更。素材の出力低下により錬成密度10%で錬成を開始」

床に置かれた様々な素材……本物とは程遠い、この5年間でなんとか集めた、日常には少し珍しい物達が、壁に吸い込まれるように集まり、分解され、混ざっていく。


一際強く本が光る。あまりの眩しさにヴラドは顔を背けた。


「……ジル・ド・レェの書庫第三章、すなわちホムンクルスの錬成に成功」

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