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ヘルメスの鳥  作者: アラヤ識
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(1)

「――以上を持って、私は神を否定する。だが間違えないでほしい。否定するということはその存在を肯定することであると」


――――ワラキア皇国大学ヴラド教授講演『永遠の生は無と同義』の一部より。



「また失敗か……」

さほど広くもない研究室の一角に、重々しい溜め息がまた一つ積まれた。

ここは゛その世界゛の住人には有名な、ワラキア皇国大学の数ある研究室の一室である。

かつて世界で初めて『石でパンを、水でぶどう酒を錬成する』ことで世界を変えた人物が創った錬金術師協会本部兼大学。

その教授であるヴラドは、類い希なる才能と努力で25という若さにもかかわらず教授を勤めていた。

誰からも敬われ、畏れられていた彼だが、彼には他人に言えぬ秘密があった。

「どうして僕にはパンが錬成できないんだ!」

ついには苛立ちを隠さず机を叩く。衝撃でフラスコが机から落ちて砕けても、一切気にかけずに彼は嘆いた。


パンの錬成、それは錬金術を習得する時もっとも最初に覚える術式だ。


少しでも才能のあるものなら、物心ついた時には手に取った数個の石を一口サイズのパンにできる程度の錬金。

その基本の中の基本ともなる錬金術を、しかし彼はこの25年間一度も錬成に成功していなかった。

「素材は石と空気!錬成補助のマジックアイテムすら必要とされず、一小節どころか単語一つの詠唱で終了だろ!?なんでできないんだ!」

再び机をどんと叩く。防火防水対爆発対腐食対衝撃の特殊コーティングが施されている机は軋む事もなく、現所有者の暴力をそのまま所有者に返していた。

叩くほどに自分の手が痛いだけとわかったヴラドはまた一つ溜め息を吐くと、常に開かれっぱなしの゛レシピ゛を眺めた。


この世で初めて錬金術を行った゛彼゛はまさしく天才で、今も尚信仰の対象として裏表関係なく世界中の人を虜にしている。

「――私が殺し、私が生かそう。私がつけた傷は私が癒やす。この手を逃れうるのもはいない」

かの人物が謳ったとされる一説。それを呟く。

つまるところ、究極の世界掌握。


ヴラドの錬金術への道の始まりは小さな事件だった。

初めましてアラヤ識と申します。

のんびりと書いておりますので、なかなか更新しないかもしれないですが、今回のヘルメスは書き終わってますので一気に載せます。

ご感想いただければうれしいです。


基本mixiで掲載してたので、興味の沸いた方はそちらで検索していただくといろいろ見れるかもしれません。

名前は同じアラヤ識です。

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