港街ニューポートタウンに到着!
王都を出立してから4日経ち朝日が眩しいと感じる時間帯で、ようやく目的地である港町ニューポートタウンが見えてきた。大きな港町で、まず目に入るのは海上に並び浮かぶ巨大なマストが備え持った船…帆船だっけ?後は海の方向に向かって扇状に広がっている白い町並みや倉庫と思われる建物が見える。
「皆さん、着きましたよ。また機会があればお会いしましょう。」
馬車の御者さんに挨拶をした後、俺達は港町に入っていく。王都ほどじゃないけどこの街も多くの人たちで賑わっていて街の入り口であるここまで声が聞こえてくる。
「それではまずは宿を確保しましょう。」
ルドルフさんが先頭に俺達は歩き始める。さすがと言うべきかルドルフさんは慣れた感じで宿屋が密集している場所へと行くと丁度2人部屋二つが空いているという宿屋を見つけた。窓からは港が見えてそれなりに良い所だった。
荷物を置いて鍵を預けた後、宿屋の前に集まる。時間としては昼時になる頃だ。
「皆様、この後はどうされますか?私は港の組合に向かおうと考えていますが…。」
「あっ、ならワイも行くわ。この街の商人ギルドに挨拶に行きたいし。」
「私は冒険者ギルドに向かうわ。何かいいクエストがあるかもしれないし。」
「“俺も冒険者ギルドに行こうかと思います。”」
「ならばここで二手に別れましょう。夕方頃にここで合流で問題ないですか?」
俺達は頷いてから別れる。エルミアは此方からは背中しか見えないが王城から出た時からは少しはマシになってきている。現に…
「ほら…行くわよ、イサミ。」
まだ口調はすこし厳しいが、無視はしなくなってくれた。結局、原因は聞けずじまいだったけど、聞かないでよかったのかもしれない。俺は先に歩き始めているエルミアに追いつくために急いで追い始めた。
---冒険者ギルド(ニューポートタウン)---
王都に比べると小さい冒険者ギルドだったがそれだけに人が沢山いるように感じられる。酒場のマスターから水滴のついた酒ジョッキを受け取り、元気な声を出しながら飲んでいる者ばかりだ。
「クエスト達成を祝って乾杯!」
「「「乾杯!」」
「おいおいマジかよ?」
「本当だって!街の近くの墓地でボーンフィッシュの群れがいたんだってよ!」
「ちくしょう!あの顔文字やろう!!俺達四天…をなんだと思って!」
「「まぁまぁ。」」
成功を祝っている者達や最新の情報を共有しあっている者達、中には愚痴をこぼして自棄になって飲んでいる者達もいる。変わったものなんかは「俺に勝てるものはおるかぁ!」と上半身裸のむっきむき男に向かって「ここにいるぞ!(≧∇≦)ノ」と叫んでいる者もいた。…可能ならあの台詞は俺が言いたかった。
酒臭い冒険者達の間を抜けてクエストが張ってある掲示板の元に向かう。途中、ジロリと何人かに品定めするかのように睨まれたが気にするだけ無駄だろう。
「(結構、たくさんあるな。さて、アイアンは…)」
掲示板の前に着くとランクごとに色分けされた受付紙が所狭しと張ってある。とりあえず、俺は自分のランクであるアイアンのクエストを確認する事にした。
クエストランク:アイアン
クエスト内容:浜辺の清掃
浜辺に流れ着いているゴミを掃除してくれ。流れ着いたもので珍しいものがあっても自由にしてくれても構わない。
クエスト報酬:銅貨小10枚
清掃クエストが再び現れた。まぁアイアンといったらボランティアのレベルの仕事になるんだろうなぁ。流れ着いた珍しいものは自由にしても良いと書いてあるけど、そんな珍しいものなんてそうそう落ちてる筈も無いだろうな。えっと、次は…
クエストランク:アイアン
クエスト内容:迷子犬の捜索
私のアルルがいなくなったの!お願い探して下さい!!
クエスト報酬:銅貨小3枚
報酬少なっ!?詳細に書かれている内容からして、子供が依頼したものなのだろう。それならば報酬も少ないのも頷ける。親も多分これぐらいの事で依頼することは無いと思ったのだろうが子供自身が報酬を出すといわれて渋々了承した…って所か?
普通ならこんなクエストを受ける冒険者はいない。ただでさえアイアンの報酬は報酬の少ないのに、さらに少ない報酬でこの港町を探し回るのは割に合わないだろう。それも迷子犬一匹を大きな街の中で見つけるのは至難だろう。
「(だけどまぁ、俺は受けるんですけどね!)」
子供(女の子)が困っている所に俺はいる!ってな!あっ、おまわりさんを呼ばないで!
とりあえず俺はそのアイアンの受付紙を掲示板から剥ぎ取ってからエルミアのほうを見るとエルミアも一つの受付紙を持っていた。受付紙の色からしてシルバーランクのクエストだろう。
「決まった?それじゃ、受付のほうに――」
「あーー!!お前は!!」
エルミアの声を遮るかのような大声が聞こえた。見れば声を発したであろう男は綺麗な女性の腰に手を回しながら空いた手で俺を指差していた。あれ?このイケメン何処かで見たことがあるな。
「お前!この街に来ていたのか!あの時はよくも!」
男は女性から手を離すと、ズカズカと俺の元にやって来てから俺の胸倉を掴んできた。あっ、この感じ。もしかしなくても、王都であったイケメン冒険者じゃん。この人あの後、この街に来てたんだな。…非常にどうでもいいけど。名前?そんなもん忘れた。
「お前のせいで俺は王都に居られなくなったんだよ!どうしてくれんだ!あぁ!?」
「何とか言えや!」と言うがしゃべれない俺にはどうしようもない。どうするかなと考えていると
「あなた、私の奴隷に何してるの?」
エルミアが横から呆れたような声で男に向かって尋ねる。男は一瞬キョトンとした顔をした後、小さく笑い出した。
「クックック…。奴隷?お前、奴隷だったのか?しかも、こんな子供の?」
男は俺から手を離すと今度はエルミアに向かって怒声を発し始めた。
「…ガキが!お前んとこの奴隷が俺に迷惑かけたんだよ!どうしてくれんだ!?それに子供がこんな所に来てんじゃねぇよ!」
言う否や、男は腕を振り上げたので、俺は咄嗟に男の腕を掴んだ。
「離せ!テメェら2人とも俺が教育してやる――」
「誰が子供ですって?」
エルミアはローブを脱いで顔を見せると、この騒ぎを遠巻きに見ていた野次馬達から「おぉっ!」と声が上がった。
「エルフだ。」
「本当だ、しかもめっちゃ美形じゃねぇか!」
「ろ、ロリっ子エルフ…!!」
「うわぁ、あの子可愛い…。」
所々からエルミアに賞賛の声が上がる中、男は「なっ、なっ…。」と口をパクパクさせながらエルミアを見ていた。腕の力も抜けたようなので俺は手を離す。
「それで…誰が子供ですって?」
「い、いや、すまなかった。エルフのお嬢さんだとは知らなかったんだ。」
「あっそ、それじゃ私達の邪魔をしないでくれると助かるんだけど?」
「ま、待ってください!エルフのお嬢さん!」
男は既に俺の事など眼中に無いかのように、先程とは違い、優しそうな雰囲気を出しながらエルミアに近づいていった。エルミアは男の事を煩わしそうな顔で見つめる。
「何?」
「先程は知らぬとは言え失礼しました。私はフィーロと言います。出来る事なら、迷惑料としてこれから食事に行きませんか?」
おーい、さっきまで一緒に歩いていた女の人はどうした。あっ、怒った顔をして出て行った。あ~あ、知~らねっと。そんな事など知らないかのように男はビックリするぐらい良い笑顔で話しかけ続けている。
「どうでしょうか?お勧めのお店があるのですが?」
「お断りよ。」
正に取り付く島も無いと言った感じに一刀両断されたフィーロの口元はヒクッと動いている。っぷ、面白い顔だ。普通ならばここで引き下がるものだろうが、そんな事で諦められないのかフィーロは咄嗟にエルミアが持っていた受付紙をみる。
「それは…、シルバークエストの受付紙ですか?」
「…そうだけど、それが何?」
「良ければお手伝いさせてくれませんか?私はこう見えてシルバークエストの冒険者なので!」
本当にお前みたいのがシルバーだなんて意外だよ!と言いたいが、我慢我慢。
「必要ないわ。」
「…もしかしてそこの駄目冒険者と一緒に受けようとしてます?残念ですが、そいつはアイアンなのでシルバーランクのクエストは受ける事が出来ませんよ!」
「…だから?」
「貴女も冒険者なら知っているでしょう?困ったときはお互いを助け合うのが冒険者なのだと!私は貴女を助けたいのです!どうか一緒に連れて行ってください!」
ここまで来ると大したものだと思ってしまう。だが、悲しいかな。エルミアの顔を見ればさらに機嫌が悪くなっているのはこの男以外全員感じている。俺も当然、断わるだろうと確信めいたモノがあったので、今一度自分の受付紙をみる。
ふむふむ、依頼した日は昨日か。一日でも愛犬がいないのは辛いだろう。俺が助けてこの子に笑顔を取り戻して見せるぜ!
「…イサミはどう思うの?」
思わず顔がにやけていたところにエルミアが尋ねてきた。フィーロはキッと俺を睨むが正直全然怖くない。俺は気にせずエルミアに近づいて受付紙を見させてもらう。
クエストランク:シルバー
クエスト内容:大量発生した魔物の討伐《緊急クエスト》
街の近くにある墓地にて魔物が大量に発生した!討伐対象はボーンフィッシュやグールとなる!腕に自慢がある冒険者のみ来られたし!
クエスト報酬:銀貨大3枚
「(うわぁ、報酬すげぇ。)」
銀貨大一枚が大体一万アルムと考えれば計3万アルムって事になる。すげー、これ一回受けるだけでアイアンの何回分になるんだろう?しかし、その分危険度も増しているのは違いない。
「“ルドルフさんと一緒に受けるんでしょ?”」
「まぁね。討伐日としては明日。船も直ぐには出ないでないでしょうし、問題ないわ。」
俺はもう一度、フィーロを見る。正直頼りないが、一応シルバーランクなのだから最低限の力は持っているのだろう。受付紙を見る限り他にも冒険者は受けるみたいだし、なによりルドルフさんも居るのだから問題が起きる事はないだろう。なら、無理に突っ放すよりも連れて行った方が面倒な事にならなくて良いんじゃないか?
「“まぁいいんじゃない?”」
「…そ。分かった。」
なぜか残念そうな声でエルミアは頷くと男のほうに振り向いた。
「いいわ。連れて行ってあげる。足を引っ張るようなら置いていくからね。」
「おぉ!ありがとう!絶対に貴女の力になって見せますよ!」
そうして、俺はアイアンのクエストを、エルミアとフィーロはシルバークエストを受ける事となった。
「わっはっは!この程度でワシに勝てると思うてかぁ!」
(TwT。)ック!マケタ!




