王都出発
こういった話は俺苦手…( ̄ω ̄;) ダメダコリャ
11/25 仮面についての話をチョビッと追加しました。だけど蛇足っぽいかもしれません。
俺は宿に戻るとエルミア達の部屋に向かう。扉の前に立つとコンコンとノックをして返事を待つ。
「…イサミ殿ですかな?開いていますよ。」
中からルドルフさんの声が聞こえたので俺は扉を開いて中に入る。中にはルドルフさん1人だけで、エルミアはいなかった。
「“エルミアは?”」
「お嬢様なら今出かけておりますが、もうすぐ戻られるでしょう。何か御用でしたか?それとその仮面は?」
俺は仮面についてと明日からの旅にマロクを連れて行きたい事をルドルフさんに伝える。仮面の話はともかく急に友人も一緒に連れて行きたいと言われていい顔はしないだろうな。と思っていたが、予想以上に俺の話を聞いたルドルフさんの顔は厳しいものだった。
話し終えるとルドルフさんは暫く目を閉じて何かを考え出す。そして、考え終わったのか静かに目を開けると真剣な目で俺を見ながら話し始めた。
「…いい機会です。あなたにお聞きしたい事があります。」
「……??」
「イサミ殿は今回の、お嬢様の旅についてどう考えておられますか?」
ルドルフさんの質問に一瞬戸惑ってしまう。だがそれも仕方ないだろう。旅について急に聞かれても困ると言うものだ。
暫く考えてもすぐに言葉が出てこなかったのを察してかルドルフさんがもう一度質問してきた。
「イサミ殿、あなたなら恐らくお気づきでしょうが、お嬢様はただのエルフの娘ではありません。」
「……。」
「今から国に戻る際、オークであるあなたを連れて行くことに正直私は反対です。」
ルドルフさんはそこで「ふぅ」と軽く息をついてから俺を見る。…予想はしていたがエルミアはかなりお偉いさんの娘なのだろう。
それならばなぜルドルフさんがいるにしろ、エルフにとって危険な旅をしているのだろうか?探し物があったというのは知っているがそれだけならルドルフさんだけでいいはずだからな。
「“エルミアとルドルフさんはなぜこの旅に出たのですか?”」
「…申し訳ありませんが、それは私が答えて良い事ではありません。ですが、決して興味本位だけでこの大陸に来たわけではありません。」
そこから暫く、俺とルドルフさんの間に沈黙が流れる。恐らく、ルドルフさんは暗に俺からエルミアから離れてくれないかと言っているのだろう。
そりゃそうだ。いくら知性があるとは言え俺はオーク。いつ暴れだすか分かったもんじゃないだろう。実際、洞窟に言ったとき一時的に我を忘れていた事もあったしな。だけど…
「……。」
この世界に来てから初めて会った綺麗な女の子であるエルミア。最初はちょっとドジっ子と言うか、天然が入った子だと思っていたのだが、戦闘時やリルリカちゃんが攫われた時の頼もしさはとても凄く魅力的で、洞窟で助けたときや一つ目ゴブリンと戦闘のあった後の、あの可愛げな姿を俺は既に知ってしまった。
そう、知ってしまったんだ。だから、ここで「そうですね。ではさよなら。」なんて言えないし、言うつもりはない。恐らくと言うか絶対、エルミアやルドルフさんには迷惑をかけるだろうけど、それでも出来る事なら…
「“俺は、エルミアと一緒に居たいです。”」
「………そう……ですか…。」
俺の文字を見た後、長い沈黙の後に小さくルドルフさんは呟いた。だが、なぜだろうか?絶対に反対的な残念そうな顔をすると思っていたのに、ルドルフさんの顔は…どこか安心したかのような顔をしていた…気がする。
「…さぁ、一階に行きましょうか。そろそろ晩御飯の時間ですし。」
ルドルフさんは何時もの雰囲気に戻り、俺も頷いてから部屋を出た。
「マロク君の件は、お嬢様にお聞きしましょう。お嬢様は人間族の事がお好きではありませんが、知り合いならばそこまで嫌な顔はされないと思います。」
「“ありがとうございます。ルドルフさん。”」
「いえいえ。」と答えてくれるルドルフさんに感謝の念を送りつつ、俺達は一階に降りて席に座る。既にご馳走とも言える沢山の料理が所狭しと並べてあった。
「うん?なんだいその仮面?まぁともかく、今日が泊まっていく最後の日なんだろう?…寂しくなるけど、今日はたんと食べていっておくれ!」
「私も料理を作ったんだよ!食べてね!」
仮面をみた2人は最初は?マークを浮かべていたが、すぐにニコッと笑顔を見せてくれたリレーアさんやリルリカちゃんに感謝しつつ、エルミアの到着を待つ。すると、扉が開いた音がしたので俺は入り口を見るとエルミアが立っていた。
「……ただいま。」
「……?」
エルミアの声はどこか元気が無いような声だった。その事にその場にいた全員が首を傾げたが、俺は気のせいだろうと考えてエルミアを席に案内しようとエルミアに近づく。
「“お帰り、エルミア。何処に行っていたの?”」
「…別に、何処でもいいでしょ?」
「…?(どうしたんだろう?)」
機嫌が悪いのかどこかぶっきらぼうな返事を返されてしまった。仮面についての突っ込みもないし…。ともかくリレーアさんの料理を見れば元気になるはずだ。
「“エルミア、今日はリレーアさんが沢山のご馳走を作ってくれたんだ。”」
「ふーん、そう。」
「…。(えっと…)」
俺は慌ててそこから「“それじゃあ、一緒に食べよう!”」と書いている途中で、エルミアが俺に背を向けてリレーアさんの下に向かった。
「リレーアさん、せっかく作ってくれたのに申し訳ないんだけど、今日は気分が優れないからもう寝るわ。」
「そ、そうかい?なら、後で軽く摘める物でも持っていくわね。」
「ありがとう。」と呟くと、そのままエルミアは階段を登っていき、部屋の中に入っていった。残った俺やリレーアさん親子はどこか気まずい雰囲気にたじたじになっている中、ルドルフさんだけはエルミアが入っていった部屋の扉を見つめていた。
「…お嬢様?」
---次の日---
「エルミアちゃん、またいつでも王都に来た時はここによって頂戴ね。あんた達なら大歓迎だから!」
「えぇ、ありがとう。リレーアさん。」
「お世話になりました。お元気で。」
エルミアとルドルフさんがリレーアさんとお別れの挨拶をしている中、俺はリルリカちゃんに抱きつかれていた。
「うぅ…、本当にいっちゃうの?」
つぶらな瞳に小さな雫を作り出すこの破壊力満点の顔に俺は撃沈されそうになりつつも頷いてリルリカちゃんの頭を撫で続ける。あぁ、サラサラな髪やなぁ。ずっと撫でていたい。
「また、帰ってきてよ!絶対だからね!」
てっきりそのまま泣き出すんじゃないかと思ったが、最後はとても良い笑顔で手を振ってリルリカちゃんとリレーアさんは俺達を見送ってくれた。俺達も手を振り返しつつ、その場を後にする。
そのまま王都の門の前広場にたどり着くと、開かれた大きな門の下にマロクが立っていた。
「おっ!きたな!まっとたでぇ!」
「…マロク?何故あなたが?」
「あり?イサミはんから聞いてない?ワイも一緒に連れて行ってくれって頼んでおいたはずなんやけど。」
そうして、2人は俺をみる。マロクは何で伝えてないんや?と言った呆れた目に対して、
「(な、なぜそんな怖い目で俺を見つめるんだ~エルミアちゃ~ん!)」
正にギロッと言った感じに睨まれた。お、おかしいぞ。昨夜から、なにかおかしい。
「申し訳ありません。私がお嬢様にお伝えするのを忘れておりました。」
「……ルドルフが?」
「はい、誠に申し訳ありません。」
ルドルフさんはエルミアに向けて頭を下げる。俺も咄嗟に一緒に頭を下げてエルミアに謝る。なぜエルミアが怒っているのかは不明だが、伝え損なったのは俺のせいだ。なのにルドルフさんが頭を下げてくれている中、俺も頭を下げないわけにはいかない。
「……まぁ、いいわ。それで、ルドルフ。あなたはどう考えているの?」
「問題ないかと思われます。マロク君はこれまでルノリック殿と一緒に旅をしてきたのですから決して足手まといにはならないかと。」
「……そう、ならいいんじゃない?行くわよ。」
エルミアはまるで興味がないようにその場から歩き始める。ルドルフさんも後に続いて行き、俺は少し遅れたところで歩きながらついて行く。
「な、なぁ、どうしたん?エルミアさん、ちょっと怖いで?」
「(そ、そんなの俺が聞きたい…。)」
どこか纏まっていない雰囲気の中、俺達は王都セルジュークを後にした。
OMAKE
---宿---
「ねぇ、お母さん。」
「ん?どうしたの?リルリカ。」
リルリカがリレーアから受け取った食器を綺麗な布で拭きながら小さい声で尋ねた。リレーアは食器を洗いながら瞳をリルリカに向ける。見ればリルリカは少し暗い顔をしている。
「イサミさん達…、行っちゃたね。」
「…あぁ。エルミアちゃん達の国に帰るみたいだね。」
そこで、一旦親子の会話は途切れる。食器を洗う音と片付ける音しか2人の耳には入ってこなかった。今はイサミ達がやって来る前のように、宿は静寂に包まれている。無言の中、食器を洗い終えて最後の皿を棚にしまい終えるとようやくリレーアが声を出した。
「…寂しくなるねぇ。」
「…うん。」
ちょっと前まではこの静寂も普段どおりで2人にとっては慣れたものだった。だが、エルミア達が来てからは毎日が騒がしかった。いや、中には騒がしいですまない事件もあったが、無事解決した今では多少は楽観的に考える事が出来る事件だ。そんな毎日を送ったせいか、また静かな毎日に戻ると思うと大人のリレーアでも寂しいと感じてしまう。まだまだ子供であるリルリカならばその感情はまた大きいだろう。それを察して、リレーアは多少大きな声で娘に話しかける。
「ほら!そんな顔をしない!イサミさん達が帰ってきたら笑顔で出迎えないと宿屋の名折れだよ?」
「う、うん。」
「なにも、もう会えないわけじゃないんだ。ならまた来た時に精一杯もてなしてあげれるようにしておかないとね?」
「うん!なら私、部屋の掃除に行って来る!」
「あぁ、頼んだよ。」
なんとか、笑顔を取り戻したリルリカは元気そうにイサミ達の部屋の掃除に向かう為に掃除道具を用意し始める。
「(はぁ、やれやれ。)さてっと、私も買出しにでも行って来ますかね。…っと!?」
そこで、ガチャリと扉が開いた。先程イサミ達が出て行ったばかりなので、もしかすると忘れ物かな?と思ったが、入ってきたのは見たことのない若い冒険者の格好をした人物だった。
「あの、ここって宿屋ですよね?まだ部屋は空いてますか?他の宿屋が一杯で…。」
最後の言葉は言わないほうがいいだろうと思いながらも若さゆえの過ちだと考えると不思議と可笑しく思えてきた。
「あぁ、空いてるよ。泊まってくかい?」
「本当ですか!?よかった!」
「あ、待っておくれ!お~い、リルリカ!」
「はぁ~い!」
宿の中に入ろうとして止められた事に不思議な顔をしている若い冒険者の前にリレーア親子が並ぶと飛びっきりの笑顔を浮かべて
「「宿屋タカナミへようこそ!!」」




