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転生ライフ!オークライフ!?  作者: エケイ
第四章 : 王都 クエスト
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一時の別れ


「あぁ!?アヤカ様が!」

「何だアイツ!アヤカ様をどこに連れて行くつもりだ!」


 急な展開に一瞬、ポカーンと呆気にとられた顔をしていた市民達がハッと気付くと一斉に俺と彩華を追って走り始めた。


 追ってくる市民達の視線には俺を射殺さんほどの気迫があり、普通ならば泣き出すのではないかと心配する子供達も声を上げて俺達を追いかけて来ているほどだ。


「あ、あの!何処に行くんですか!?」


 未だ何が起こっているのか理解できていない口調で俺に聞いてくる彩華の質問は無視するとして、今はどうやって切り抜けようか俺は考えていた。


「(夢幻を使うか?いや、人が多すぎるな。)」


 夢幻を使ってあらぬ方向に意識を向けた後に逃げようかとも思ったが、俺のすぐ傍には彩華がいるしこんな晴天の中で霧が発生するのはあまりに不自然だ。ここは近くの木々にでも隠れてやり過ごすのが良いかもしれない。


 幸い、俺と彩華の走る速度が速い為か市民達との距離は離れてきている。俺達は公園の中に立っていた建物に近づくと、市民達から姿が見えない位置に移動してそのまま近くの茂みに隠れる。


 隠れてから暫くすると大勢の市民達が走ってやってきた。突然消えたかのように俺達を見失った市民達は一度歩みを止めて辺りを探し始める。


「はぁ、はぁ!ど、どこにいったの!?」

「わ、わからないけど、きっと近くにいるはずだ!」

「私達のアヤカ様をお助けしないと!行くぞ!」


 市民達はそのまま元々俺達が進んでいた方向に向かって走り去っていった。









 暫くの間、俺は茂みの中で静かに先程まで市民達がいた場所を見ていたが、誰もいなくなった事を確認すると軽く息をついて止めていた呼吸を再開する。


「(どうやらうまく誤魔化せたようだ。案外、この手は上手くいくものなんだな。)」

「あの…」

「(ん?)」

「そろそろ…その…離してくれると…嬉しいんですが。」


 彩華の言葉で俺は今の状況を理解する。俺はどうやら無意識に彩華を自分のほうに寄せていたようだったが、人間だった頃と比べて体がかなり大きくなったせいだろうか?


 右手は彩華の頭を俺の胸に軽く押さえつけ、そして右腕全体で彩華の背中を押して俺に寄せている感じに抱きしめている形になっていた。


「ッ!?“すまない。”」

「あ、いえ…気にしないでください。」


 俺はすぐに開放させると、ゆっくりと体を離してからまるで見られるのが恥ずかしいかのようにローブを深く被り直す仕草をとる。そんな不自然な仕草に俺は何をしてるんだ?と思ったがすぐにハッと気付いた。


「(ふ、ふふふ、そうか。ハッハッハ!残念だろう!実に残念だったろう!楽しんでいたところを邪魔されて悔しかろう!!俺を差し置いて勇者生活を送るなどは百年早い…)」

「すみません、ありがとうございました。」

「(…………へ?)」


 彩華の幸せ時間?を壊せてやった俺が1人満足していると急に感謝を述べてきやがった。咄嗟の事で、つい声が出そうになったが何とか我慢する。し、しかし、なんでコイツは俺に感謝を言うんだ?憎まれる事こそあれ、感謝される覚えは…


「私、何時もあのような人達から逃げ出せなくて…。だからそれを見かねて助けて下さったんでしょう?ありがとうございます。」


 彩華は俺にペコリと姿勢を正してから頭を下げた。お、おかしいぞ?なんでこういう事になってるんだ?


「私ったら何時も抜け出せなくて、それで遅れちゃって皆に迷惑かけてるんです。」

「“何時も?”」

「はい。だから今回は私だと分からないようにローブを着てきたんですけど、結局バレてしまいました。」


 彩華はずっと軽く笑いながら話している。恐らく自身の恥ずかしい事を話している為であろうが、俺としてはその笑いが気に入らなかった。…コイツはこっちでも変わらないな。本当に…。


「“なぜ、迷惑だと言わない?”」

「え?い、言いませんよ、そんな事!だって皆さんは私のことを応援してくれて…」

「“嫌ならば嫌だと言え。”」

「ッ!?」


 俺が書いた文字に彩華は瞳を大きく見開いて驚いたかのように息を呑む。だが俺はそんな彩華など気にせずにひたすら文字を書き続ける。


「“人は万能じゃない。嫌だと伝えないと相手は気付かない時だってあるんだ。”」

「で、でも…」

「“お前の意見を聞かずに勝手に自分の意思だけを言ってくる人間の言葉などお前の言う「応援」なんかじゃない。それは「命令」と同じだ。”」

「そ、それは…。」


 そこで、俺は文字を書くのを止める。そして、ジッと彩華を見つめる。


 俺の言葉にショックを受けているのか、彩華は落ち着かなように辺りをきょろきょろしている。その姿は、皆が期待しているような勇者の姿ではなく、ただの悩みの多い年頃の少女にしか見えない。

 

 俺はそんな彩華の姿をみると少しだけ笑みが浮かんでくる。その笑みは先程までの嫉妬からの笑みではなく、懐かしい幼馴染の姿を見た為の安堵に似た喜びによるものだった。


「“お前が我慢している事は良く知っている。”」

「え?」

「“だからこそ、時にはお前自身の意見を伝える事も大事だぞ。”」

「あの、あなたは一体…」


 その時、背後の公園のほうから「アヤカ~~!」と幼い少年のような声が聞こえた。俺はその声がした方向をみると視線の先にはまるで御伽噺にでも出てきそうな金髪の美少年と後ろに複数の人間がいた。

 

 おそらくあの子が彩華が探していたルイスと言う少年だろう。現に、ルイスと思われる少年を彩華が見つけると「あっ!ルイス君!」と言っている。


 俺は少年が自分に気付く前に彩華の後ろに回ってから背中を手で押してやり、そのまま夢幻の準備を開始する。


 背中を押された彩華は茂みから姿を現す形になり、結果として少年が彩華に気付いたようだ。始め、彩華はルイスに向かって手を振っていたが、すぐに後ろに振り返って俺を見ると


「あの!またお会いする事は出来ますか?」

「……。」


 俺は夢幻の霧を辺りに発生させながら彩華の反対側を向いて歩きはじめる。その事に驚いた彩華は咄嗟に手を伸ばした。


「あっ!?ま、待ってください!!……え?」


 彩華には自身の手が勇の背中に届いたと思ったのだが、なぜか何にも触れることなく宙を横切る。そして気付いたときには、その場には彩華1人しかいなかった。


「き、消えた?」


 彩華は必死に辺りを見回すが、誰もいない。すぐさま追うために茂みに入ろうとしたとき、ルイスに声をかけられた。


「アヤカ!探したぞ!今までどこにいたのだ?」

「あっ!ルイス君!今、ここに大きな男の人がいたんだけど見なかった!?」

「む?いや、見ていないが?そんな事より、早く噂の料理店に行こう!」


 ルイスは彩華の手を掴むと早く行こうと引っ張りながら歩き出す。引っ張られるように歩きはじめた彩華はもう一度後ろを振り返る。


 そこには誰もいない筈なのになぜか目が離せなかった。まるで、大切な何かをこのまま手放してしまうかのような…そんな気持ちになった。


この後の話は蛇足っぽいので、後書きに書きました。本文とはあまり関係ないので飛ばして下さっても大丈夫です。 (o>ロ<)oゴメンネーー!!


「まったく、どこにいたのだ?まぁ良い。それよりこれから向かう料理店のことだが――」

「あっ!?いた!!アヤカ様よ!アヤカ様~!!」


 ルイスの言葉を遮るかのように甲高い声をあげながら沢山の人たちが彩華の周りを囲みだす。


「アヤカ様!お怪我はありませんか?」

「あのあの!ここに名前を書いてくれませんか?」

「おい!貴様ら私達の邪魔を――」

「「「キャーキャー!」」」


 ルイスの声は数多くの声にかき消されてしまう。その事にイラついたのか、ルイスは近くにいる護衛たちを呼ぶ為に片手を上げようとしたとき、その手を彩華が止めた。 


「ん?アヤカ?」

「大丈夫。…皆さん、やめて下さい!」


 彩華の放った少し大きめな声はその場の人たちをピタリと止めた。普段と違う拒絶の感情を含んだその声に市民達だけでなく、近くにいたルイスも驚いた顔をしている。


「皆さん、お願いですからやめて下さい。お気持ちは嬉しいですが、これ以上は迷惑です。」

「そ、そんな…私達はアヤカ様を応援したいだけで…」


 彩華の言葉にショックを受けたのか、市民達は一斉に動揺し始める。


「皆さん、落ち着いて下さい。私も皆さんのお気持ちは素直に嬉しいです。何時も私なんかを応援してくれてありがとうございます。」


 「ですが…」と呟いた後、ペコリと頭を下げる。先程とは違った意味で再び同様の声が発し始める。だが、気にせず彩華は続ける。


「我侭かもしれませんが、私も私の都合があるんです。だから私の邪魔をしないでください。お願いします!」

「「「……。」」」

  

 一斉に、その場が静かになった。だが、すぐに声が発せられ始める。


「…アヤカ様。頭を上げてください。此方こそすいませんでした。」

「えぇ…。アヤカ様の予定を考えずに足止めしてしまって、ごめんなさい。」

「ごめんなちゃい…。」


 その場にいた全員が彩華に向かって頭を下げた。小さい子供も半分訳が分からないといった感じだが、親に習って頭を下げている。お互いが頭を下げている光景をルイスは不思議そうに見ていた。


「ありがとうございます。皆さん。」

「いいえ、良いんです。」

「そうですよ。それよりもアヤカ様、ご予定は大丈夫ですか?」

「あっ!そうだった!行こう、ルイス君!」

「あ、あぁ。」


 ルイスの手を掴んだ彩華は早歩きで進みだす。今度は誰も邪魔することなく歩き続けている。だが、人だかりを抜けたときに彩華は市民達のほうを向くと、右手の人差し指を口の前に立てて右目を瞑ってから笑顔で話す。


「あっ!今日の事は秘密でお願いしますね!」

「「「は、はい!!」」」


 その後、今度こそ彩華とルイスは目的の場所に向かって歩き始めた。その時、ルイスはつい先程の彩華の笑顔を思い出すと自然と顔が熱くなってくるのを感じた。

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